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2021-05-14

【プロレス】コロナ時代に武藤敬司のプロレスが輝く理由

試合序盤、グラウンドで相手の腕を固める武藤。こういった展開から武藤は試合のペースを作っていく

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NOAHのGHCヘビー級王者として58歳、キャリア36年にしてプロレス人生何度目かの全盛期をむかえている武藤敬司。現在は6・6さいたまスーパーアリーナでおこなわれる「サイバーファイトフェスティバル」における丸藤正道とのV3戦へ向けて調整している最中。さいたま大会はサイバーファイトグループが集結する一大イベントではあるが、トレーニングが日常生活に組み込まれている武藤にすれば、いつも通りやるべきことをやって当日を待つのみ。

 最近の武藤のタイトルマッチの特徴としては、序盤のじっくりとしたグラウンドレスリングがあげられる。プロレスの試合、しかも重厚なタイトルマッチとなれば本来は特筆すべきことでもないかもしれない。だが現在のマット界の主流からすると、武藤の“むかしながら”のスタイルは異彩を放つし、むしろ新鮮さすら感じられる。

「俺たちが若手のころはリングに上がったら、まず暗黙のルールか知らないけど派手な技はできなかった。ロープに飛んだりもできなかった。音楽(入場テーマ)も流れないところから入場して、ゴングが鳴って闘うだけ。制限があるなかでプロレスというものをやらされてたよ。そっちの方が絶対レスラーとしての器量は上がる。いまはセコンドが入ってきたり、いろいろ使えるものがたくさん増えてるけど、俺たちは『これだけで試合しろ』って時代だった。そういう環境で俺たちは育てられたから」

 むかしの“当たり前”が現代では“貴重”になっているのはプロレス界に限った話ではない。しかし肉体を酷使するプロレスの世界で、かつての“当たり前”をいまなおリングで続ける武藤は、プロレスの素晴らしさを体現できる貴重なレジェンド。

「あれもこれも使えるって、そっちの方がラクに決まってる。ただ、現代っ子のタイトルマッチはああいうの(グラウンドレスリング)をしないことが多いなら、それを俺は売りにできる。結局試合にも起承転結があって。まずはお客を集中させないと。最初から声援がないとか、客が見てないんじゃないかとか、ビクつかないでじっくりやればいい。お客をシーンとさせても見せられるプロレスを」

 現在のプロレス会場ではコロナ規制により歓声は禁止されているが、武藤はそうなるずっと以前から、まずは観客を静かにさせるプロレスを続けてきた。だからこそいまコロナ時代のプロレスにおいて、武藤敬司の本領が発揮されるのだろう。歓声に左右されない武藤プロレスには時代を超越する価値がある。
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