コロナ禍が続き、海外選手を招聘するのが難しい状況の中、国内選手同士のサバイバル戦が続々と行われている。7月21日(水)、東京・後楽園ホールで日本フライ級タイトルマッチ10回戦、王者ユーリ阿久井政悟(25歳=倉敷守安)対同級6位・桑原拓(26歳=大橋)が決定。17日に発表された。 さる4月にスーパーフライ級ノンタイトル戦を地元・岡山で行う予定だった阿久井だが、相手の体調不良によりキャンセル。昨年10月以来となる2度目の防衛戦は、2017年8月以来5度目の後楽園登場だ。挑戦者は、これがタイトル初挑戦の桑原。興國高、東京農業大と名門で鍛えた元高校王者は、デビュー以来無敗(8勝4KO)。これまでプロで得た肩書きはないが、すでに“次期世界王者候補”に数え上げられる選手だ。
王者・阿久井の進境も著しい。2015年度全日本ライトフライ級新人王は、ミサイルを思わせる右ストレートを主武器に、2014年ライトフライ級新人王の大野兼資(帝拳)、2013年フライ級新人王・大保龍斗(横浜さくら)、現・日本ライトフライ級王者・矢吹正道(緑)、2018年フライ級新人王・湊義生(JM加古川)らを筆頭に、これまでの10KO中、実に9度も初回KO勝利を挙げている“ワンラウンド・フィニッシャー”なのだ(15勝2敗1分)。しかし、昨年10月の初防衛戦では、粘り強い藤北誠也(三迫)を、左リードブローを主体にした丁寧なボクシングで大差判定に退け、ボクシングの幅の広さをも見せつけている。
ともに、しっかりとしたストレート系ブローベースのボクシングが良い。阿久井は決して力任せのパンチャーではなく、ジャブで距離を測ってからの大砲。桑原は、国内屈指のスピーディーなフットワーク、ハンドスピードの持ち主で、目にも止まらぬコンビネーションを打ち、すかさず死角に回り込むボディバランスに“華”がある。
阿久井の高性能ミサイルがいつ発射されるのか、桑原が速さで凌駕してしまうのか。日本タイトルマッチにふさわしい、国内最高峰を争う戦いになること必至だ。
セミファイナルでは、井上尚弥のスパーリングパートナーとしても名を上げた日本ユース・バンタム級王者・石井渡士也(20歳=REBOOT.IBA)が、サウスポーのパンチャー、日本9位の南出仁(26歳=セレス)と8回戦。2014年全日本スーパーフライ級新人王で無敗(17勝10KO2分)のサウスポー橋詰将義(角海老宝石)が、移籍初戦で前出の湊と53kg契約8回戦を行う。
中垣(右)と花田。ふたりとも、単身で鍛えぬいた心の強さがある 写真_BBM さらに、これに先駆けた同月8日(木)には、同じく後楽園ホールで若き俊英同士の激突も決まっている。日章学園高時代に8冠を遂げ、デビュー2戦(2KO)も鮮やかな攻防を見せた中垣龍汰朗(21歳=大橋)と、メキシコで4戦し、昨年12月に“国内デビュー”を飾った花田歩夢(19歳=神拳阪神)の一戦、日本ユース・スーパーフライ級王座決定戦8回戦だ。
幼少からフルコンタクト空手に取り組み、格闘センスを養った中垣は、中学から親元を離れて日章学園に入学。柔和な顔からは想像のつかない芯の強さもある。
一方、15歳でメキシコに向かい、16歳でプロデビューした花田のタフさは、言葉に表さずとも容易に思い描けるだろう。4月の前戦では、6勝6KO(3敗1分)のガッツあふれるサウスポー、マンモス和則(22歳=中日)の粘りに手を焼いたものの、只者ではない心の強さをも示した。
昨年8月にプロデビューした中垣を、大橋秀行会長は「2年以内に世界王者に」と豪語した。常に冷静に相手を見据え、空いた瞬間を逃さないスキルは、決してそれが大言壮語ではなく感じさせる。だが、2歳若い花田の引き出しも侮れない。本場で磨いたバランスの良いボクシングは、典型的なメキシカンのボクサースタイル。そこに、熱いラテン・ファイターの血も加味されており、無敗の戦績(6勝4KO)に現われている。
23日に行われる予定が、残念ながら延期となった佐々木尽(八王子中屋)対湯場海樹(ワタナベ)戦(スーパーライト級)といい、「へたな日本タイトルマッチよりおもしろい!」と注目度の高いユース戦が続く。
この日は3月に安達陸虎(大橋)をワンパンチKOに仕留めて日本ユース・ウェルター級王座を獲得した小畑武尊(22歳=ダッシュ東保)のノンタイトル8回戦、森且貴(21歳=大橋)対小島蓮(19歳=江見)という、“全日本ミニマム級新人王”同士(森=2019年、小島=昨年)の対戦(48kg契約6回戦)も。
7月も、期待と興奮の高まるカードが目白押しだ。