遠藤(突き落とし)貴景勝13日目は幕下以下各段の優勝が決まる日で、序二段では千鵬(宮城野)、幕下では阿炎が優勝。序ノ口と三段目は千秋楽の優勝決定戦で決まる。阿炎は復帰した先場所から連続幕下優勝で来場所は十両復帰となる。謹慎中も腐らず稽古していたことで、2場所での関取返り咲きとなった。
十両の優勝争いは2敗の千代ノ皇と3敗の宇良がともに勝って変わらず。14日目に宇良が敗れ、千代ノ皇が勝つと優勝が決まる。幕内は1敗で単独トップの照ノ富士は危なげなく勝ったが、ただ1人2敗で追う貴景勝が敗れる波乱。残り2日でその差は2つとなった。
貴景勝は結びで3敗の遠藤と対戦。立ち合いは両者頭からガツンと当たり突き合うも、貴景勝の馬力が勝り、遠藤はすぐに土俵際へ追い込まれた。最後のひと押しと貴景勝が頭を下げて突っ込むと、遠藤はひらりと身をかわす。貴景勝は「しまった」という表情のまま土俵下へ飛んでいった。痛恨の3敗目を喫し、照ノ富士との差は2に広がり、照ノ富士の優勝マジックは1となった。
NHK中継で殊勲インタビューに呼ばれた遠藤。立ち合いの当たりについて聞かれると、「あんなもんだと思います」と押し込まれただけに苦笑い。笑顔を見せるなんて相当機嫌がいい。「とっさに体が反応してくれたのでよかったです」と振り返った。優勝争いに残ったことについては、「あまりピンとこない」。
「今日は相手が大関とかじゃなく、どうしても勝ちたかったのでよかったです」と切り出し、理由を聞かれると「わかる人にはわかると思うので」と口を濁した。この日は、長く付け人を務めてくれた兄弟子の大翔龍の最後の土俵だったので、どうしても勝ちたかったのだ。以前、安美錦が付け人の引退の日に勝てず、支度部屋で涙を流して悔しがっていた。それほど付け人との結びつきは強いのだ。
残り2番について遠藤は、「一日一番、集中してやるだけです」と気合を入れていた。14日目、遠藤は照ノ富士と対戦。遠藤が勝てば、優勝の行方は千秋楽まで持ち越しとなる。相撲ファンとしては千秋楽まで伸びてほしいが、「期待に応えられるように頑張ります」と遠藤。うまく横から攻めることができれば勝機はあるだろう。明日の対戦が楽しみだ。
文=山口亜土