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2021-05-23

【ボクシング】ジョシュ・テイラーがすべての世界王座を統一。ラミレスを2度倒して判定勝ち

6ラウンド、テイラーが鮮やかな左カウンターで倒し、ペースを引き寄せた(Photo:Getty Images)

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 WBA、WBC、IBF、WBOのメジャー4団体すべてのタイトルがかかった世界スーパーライト級王座統一戦12回戦は22日(日本時間23日)、アメリカ・ネバダ州ラスベガスで行われ、WBAスーパー・IBFチャンピオンのジョシュ・テイラー(イギリス)が、WBC・WBOのホセ・カルロス・ラミレス(アメリカ)から2度にわたって痛烈なダウンを奪い、僅差ながらも3-0の判定勝ちで世界統一を果たした。

ダウンが決めた試合の流れ

 6ラウンド開始早々、テイラーが奪ったダウンですべては決まった。勝負はむろん、展開もだった。右ストレートを打ちながら体を寄せてきたラミレスのあごを貫いた左ストレートだ。つんのめるようにキャンバスに落下したメキシコ系アメリカ人はすぐに立ち上がったが、はた目からもダメージは甚大に見えた。ラミレスの動きには明らかに切れがなくなった。同じラウンド、勇敢にも右ストレートで反撃を試みるも力感はない。そして、その後、ラミレスは完全に立ち直ることはなかった。7ラウンド、クリンチからの離れ際に打ち込まれた左アッパーカットで、決定的なダウンを奪われ、いよいよ精彩を打失っていく。
 テイラーも無理をせず、カウンター狙いに徹していく。打ち終わりを狙ってくるラミレスの右ストレート、左フックを警戒し、ポイントのリードを確信しての戦法でもあった。2度のダウンがなかったら、もっと違う戦い方を採ったに違いない。

スピードで勝るテイラーが、タイムリーなショットでポイントを重ねていった(Photo:Getty Images)
スピードで勝るテイラーが、タイムリーなショットでポイントを重ねていった(Photo:Getty Images)

「KOで勝負を決める」と意気込んでいたテイラー

 試合前から、もちろん両陣営は血気盛んである。30歳のテイラーがサウスポー、28歳のラミレスはオーソドックスと決定的な違いはあっても、共通点も多い。ともに15歳でボクシングを始め、2012年のロンドン五輪60㎏級(ライト級)代表である。さらに戦い方も、自らチャンスを作り出す積極型だ。戦前の予想はおおよそ2-1でテイラーと出ていたが、戦力はほぼ同等とみられていた。
 より意気込んでいたのは、テイラーのほうだったかもしれない。選ばれたジャッジが、微妙な判定をラミレスの勝ちにしたその前戦(ビクトル・ポストル戦)とまったく同じ顔ぶれだったことに不満を述べたのち、「でも、私がノックアウトで勝つんだから関係ないけどね」と闘志をむき出しにする。ラミレスも「(テイラーが)これまで戦った相手とは違う。ゴングが鳴れば、口で戦うわけではない。勝負を決めるのは拳だからね」と静かな闘志を胸に応戦していた。
序盤戦は勇敢なアタックを繰り返すラミレスが流れをつかんだかに見えた(Photo:Getty Images)
序盤戦は勇敢なアタックを繰り返すラミレスが流れをつかんだかに見えた(Photo:Getty Images)

ダウンの分だけ、テイラーが上回る

 旧ハードロックホテルを改修して開業したバージンホテルでは初めてのプロボクシング・イベントとなる4団体王座世界王座統一戦は、そうしてゴングが鳴る。立ち上がりはスピードで上回るテイラーが左ストレートを軸にコントロールしにかかる。だが、ラミレスの右ストレート、左フックはきわめて重い。3ラウンド以降はボディブローで崩してから、スコットランド人をロープに押し込めるなど、ラミレスがペースを握りかけたかに見えていた。
 そして6ラウンドと7ラウンドのダウン。とりわけ、7ラウンドのそれは、立ち上がったラミレスの足もとが定まらず、レフェリーのケニー・ベイルスが2度まで、「前に歩きなさい」と歩様を確かめた上での続行だった。
 テイラーは決して無理をしなかったが、8ラウンド、10ラウンドにはタイムリーなショットでラミレスを追い詰めて確実にポイントを押さえる。そして、ラストの2ラウンドは安全圏で戦って、4つのベルトを手に入れた。
 採点は3ジャッジとも114対112でテイラー。つまり、両者ともに6ラウンドずつ支配して、ダウンのプラスポイントの分で、勝敗が決したことになる。
 テイラーは「採点はもう少し開いていると思った」と言いながらも、喜びを爆発させた。「幸せだ。人生の最大の目標を手にできたんだ。すべてのトレーニングをこの瞬間のために費やしてきた」。ジャッジのスコアが示すとおり、慎重なカウンター狙いが消極性に見られたとも言える。試合作りの発想に、まだまだ改善の余地がある。ラミレスとの再戦があってもおもしろい。
 テイラーは18戦18勝(13KO)。ラミレスは27戦目の初黒星(26勝17KO)となった。
 なお、この試合を主催したトップランク・プロモーションは、バージンホテルでシリーズを計画しており、6月12日にはスーパーフェザー級のスーパースター候補シャクール・スティーブンソン(アメリカ)、19日に井上尚弥(大橋)対マイケル・ダスマリナス(フィリピン)、26日には中谷正義(帝拳)対ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)と注目カードが用意されている。(日付はいずれも現地時間)
4つのベルトとともにチームの面々と喜ぶテイラー(Photo:Getty Images)
4つのベルトとともにチームの面々と喜ぶテイラー(Photo:Getty Images)

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