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2021-05-19

【ボクシング】竹迫司登、166秒KO勝ち。亡き父に捧ぐ日本ミドル級王座V4

持ち前の強烈な拳で、打ち合いに出た国本(左)を一気に切り崩した竹迫

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日本ミドル級タイトルマッチ、チャンピオンの竹迫司登(ワールドスポーツ)対1位の挑戦者、国本陸(六島)の10回戦は19日、東京・後楽園ホールで行われ、初回から竹迫の強打が炸裂し、このラウンド2分46秒でKO勝ち。同タイトル4度目の防衛に成功した。

 プロ4戦目の西田凌佑が元世界チャンピオンの比嘉大吾(Ambition)を破るなど、このところ、勢いに乗る六島ジム期待の国本が、わずか5戦目(4戦全勝2KO)で挑んだ日本一の座。だが、ハードヒッター、竹迫の壁はあまりに高かった。試合前の宣言どおり、国本は打ち合いに打って出る。これをパワフルなジャブで弾いていたチャンピオンが打ち込んだ左フックの一発で、国本の体はキャンバスに転がった。

 挑戦者も気持ちが萎えたわけではない。竹迫の追撃を固いブロッキングで防ぎながら、一瞬のスキを見つけては右ストレートをボディや顔面へと切り返す。新しい展開の窓口がどこかで開く可能性を秘めた打ち合いが、2分ほど続いたあとだった。またしても、竹迫の強打が火を噴き、勝負は一瞬にして終わる。

 決め手になったのは竹迫の左ジャブに見えた。このパンチで体の芯を揺らした対戦者が後退したところに、フォローのパンチは3発。国本はぐずぐずと崩れるように倒れ込む。なんとか立ち上がった国本だが、ダメージを見てとったレフェリーの染谷路朗はそのままカウントアウトした。
フィニッシュシーン。ジャブでダメージを与えた後の連打だった
フィニッシュシーン。ジャブでダメージを与えた後の連打だった

 会心のKO、あるいはTKO勝利となると3年ぶりとなる竹迫は「1年4ヵ月ぶりの試合なので、自分としても楽しみにしながら臨んだ試合でした」と語ったあと、父・一好氏が5月8日に死去したと報告した。

 一好氏は1月に新型コロナウイルスに罹患して入院。そのまま重症化してエクモにもつながれた。2度までエクモから離脱したものの力尽きた。「そんな父の頑張りが、勇気を与えてくれました」

 竹迫がボクシングを始めたのは5歳のとき。かつてボクサーを志したこともあるという一好氏が両ヒザをついて構えるミットにパンチを投げ込んだのが始まりだった。そして、息子へ呼びかけ続けたたのは「決して後悔しない人生を送りなさい」。だから。悪魔のウイルスと戦う父に一度も会いに行かなかった。自分が勝ち、さらなる領域にと向かうことこそ、父の思いに寄り添うことと信じた。

 そして勝利した竹迫は、もうひとつの報告を口にした。妻・麻裕さんとの間に9月、新しい命を授かるという。その妻が、夫の勝利に涙ぐんでいたと知らされると、「そうでしたか」と静かな笑顔でひと呼吸置き、こう言葉をつないだ。「父のこと、自分のこと、その両方で一番に苦労していたのは彼女ですから」

 14戦13勝12KO1引き分け。29歳の力持ちは、パパとなって次の戦いを迎える。もうひとつ保持する東洋太平洋タイトルの指名防衛戦は、10月か11月になるという。

文◎宮崎正博 写真◎馬場高志

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