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2021-05-21

【ボクシング】ウェルター級王者決戦。豊嶋亮太が別府優樹をKO。OPBFに続きWBO・AP王座奪取

強烈な右アッパー。ホルヘ・リナレス仕込みのこのパンチで、豊嶋は最初のダウンを奪った

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 ウェルター級の東洋太平洋チャンピオンとWBOアジアパシフィック・チャンピオンが劇筒する王座統一戦12回戦は20日、東京・後楽園ホールで行われ、東洋太平洋タイトルを持つ豊嶋亮太(帝拳)が、WBOアジアパシフィック王者の別府優樹(久留米櫛間&別府優樹)を10回2分59秒KOで破り、ふたつのタイトルを手に入れた。

 実力上位のライバル戦は、まったく異なるふたつの答えを提供する。対戦相手の戦力を切り崩そうとする両雄の積極性がガチでぶつかり合い、白熱の打撃戦となる場合。そして、もうひとつ。向かい合う敵の戦力を慮るあまり、慎重な展開に終始する。今回の戦いは、残念ながら後者のケースに当てはまる。

 ただし、この統一戦が、勝者にとっては危なげなくクリアできたことで、次なる一歩に雄弁さを加え、敗者は自分が置かれた立場でいったん立ち止まり、今後のことを考えなくてはならない。豊嶋が別府を打ち破る工程、そして結末は、まさしくそういったものだ。

 かつて14連続KOを記録したこともある別府のパンチに、破壊力があるのはわかっていた。だから、「どんなラインでくるのか、読んでいました」。豊嶋の言葉のとおり、序盤からジャブ、ストレートの強い単打で難を避けながらペースメイクしていった。

 1年半ぶりの実戦となる別府はブランクの間、「さまざま、自分の戦い方を考え続けていた」という。新技をいくつも用意していたことだろう。ただ、それを試す機会はなかった。「普段の半分。マスボクシング的なものを含めて50ラウンドくらい」。サイドにステップして、大胆なパンチで斬りこもうとしたが、豊嶋が築く距離の壁に阻まれて、クリーヒットはほぼ皆無に等しかった。その上、豊嶋が機を見て打ち込むボディブローが効果的で、4ラウンドあたりから動きははっきりと鈍っていった。
10ラウンド、2度目のダウンで別府はカウントアウト、王座は統一された
10ラウンド、2度目のダウンで別府はカウントアウト、王座は統一された

 丹念に自分の距離、ペースを手繰る豊嶋に、打ち込む手立てが見つからない別府。5ラウンドから、火花なきワンサイドゲームがひたすら続くことになる。7回には強烈な右アッパーカットでダウンを奪うが、豊嶋はその攻撃をまだトップギアに入れなかった。

 迎えた10回、ダメージを蓄積させた別府はいよいよ動きを失っていく。ニュートラルコーナー近く、豊嶋の打ち下ろしの右を浴び、足元から力が失われる。赤コーナー近くまで逃げ込んだところで今度も右ストレート。別府はさらに半周して青コーナー近く、ここでも右、さらに左フックをもらう。力尽きたように倒れ込んだ別府は立ち上がったが、戦意はおぼつかなく、福地勇治レフェリーはそのままカウントアウトした。

「序盤はどこか緊張していました。流れをつかんでからは、自分のペースで戦えましたが」この日は放映する日本テレビ系の『ダイナミックグローブ』の600回目の区切り。「それも、緊張に少しは加わっていたのかもしれません」。WBO12位の別府に勝ったことで、世界ランク入りも期待されるが。「ウェルター級はメジャーリーグみたいなもの。自分の実力では、まだまだ通用するとは思えません。これから研鑽していきたいです」。まずはこの日、ほとんど見せることにのなかったふたつ、三つとパンチをつなぐコンビネーションブローを次回は見せてほしいもの。17戦14勝(9KO)2敗1分。

 別府は24戦21勝(20KO)2敗1分。新技ではじけ切るには、準備不足だったのかもしれない。今後を考えるのなら、大胆な発想で環境を整備する必要がある。
期待の新鋭、嶋田淳也(左)は同じくアマ出身の神足茂利を破り、初陣を飾る
期待の新鋭、嶋田淳也(左)は同じくアマ出身の神足茂利を破り、初陣を飾る

 この日のカーテンレザー(第1試合)、フェザー級6回戦では、アマチュア実績を持つふたりが対決。デビュー戦の嶋田淳也(帝拳)が2戦2勝の神足茂利(M.T)に判定勝ちを収めてている。

 ジャブでロングレンジを守ろうとする神足を、嶋田はボディへのハードショットで崩していく。2ラウンド以降は、左フックを顔面、ボディにきれいにヒットしていき、順当にポイントを積み上げていった。

 前評判の高かった嶋田だが、ときに不用意なパンチを浴びるシーンもあり、まずはキャリア作りが先決だろう。

文◎宮崎正博 写真◎菊田義久

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