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2021-06-16

【紫雷イオの逸女でしょ!再録】プロレス界初?“セット”について語る【週刊プロレス】

イオのムーンサルト・プレス

現在、WWEで活躍する紫雷イオが週刊プロレス誌上で連載していた『紫雷イオの逸女でしょ!』(2015年3月~2018年6月)。希代の女子プロレスラーが日本トップ時代に残した好評コラムを不定期に再録していくコーナーの第2回をお届け。

 プレス系の飛び技を使う選手にとって、必要不可欠な動作がある。準備段階としてベストポジションに相手をもってくる、通称・セットと呼ばれる動きだ。

 一口にセットと言っても、やり方はさまざま。ボディースラムでコーナーやロープ付近に置くときもあれば、ジャーマン・スープレックスやパイルドライバーを使うときもあれば、単に倒れている相手を引きずってセットすることもある。

 一見、選手が何気なくやっているように感じられるが、イオいわく、セットはかなり重要なのだという。

「タッグマッチではパートナーにセットを頼むときもあるんですけど、遠くに置かれちゃって焦るときもあります。これ、どうしようって(苦笑)。セットし直してもらうときもありますけど、意を決して飛ぶときもあります(笑)。セットがうまい人とヘタな人がいますね。この人には任せられないなっていうときは、自分でセットします。飛んだはいいけど、当たらなかったらカッコ悪いし」

 うまい人とヘタな人がいる。この言葉からもわかるように、決して簡単ではないのだ。プロレスラーになって8年が経ち、毎試合相手をセットしているイオでも、たまにしくじるときがある。

「セットはコーナーに上った後のことを想像しつつやるわけなんですけど、実際にコーナーに上ったら思ったより近すぎたりもするんですよ(苦笑)。試合の終盤だとダメージがあったりするから、私に限らずレスラーは目測を見誤ることが結構あるんですよね。セットが原因でわりと盛大に外してる選手も見ますし。コーナーから技を決めること以上に、セットは大事な部分なのかなと思います」

 2015年のプロレス大賞女子プロレス大賞受賞者であり、ワールド・オブ・スターダム王座の最長防衛記録も保持するイオ。この百戦錬磨の“逸女”も、実は試合中に一つの迷いを抱えている。

 そう、フィニッシュのムーンサルト・プレスを決める際に必要な、このセットに関してだ。

「もし相手がダメージを負って倒れていたら、そのまま引っ張ってセットした方がいいのか、一度起こしてセットし直して技にいく方がいいのか。そして、微妙な位置に相手が倒れているときにどちらを選択するのか? 私はいまだに迷いつつやってます(苦笑)。

 相手を引っ張ってセットするのはスマートに見えない部分もあるでしょう。私が昔習ったのは、プレス系の技をするときは相手を寝かせるのも技の一つだから、ボディースラムでダメージを負わせてからいくのが正しいと教えてもらったことがあるんですけど…どう考えてもダウンしていて立ち上がれない相手をわざわざ起こすのは、すごい力が必要なわけですよ。確かにボディースラムで投げてからの方がダメージも与えられるし、理にはかなってる。ただ、それに必要な5秒や10秒がもったいないんじゃないかとも思うんです。

 微妙な状況のとき、私は相手を引っ張ってセットすることが多いです(笑)。ただ、引っ張るのも相手が重かったり、コスチュームの種類とか汗のかき具合とかリングマットの素材によって、相手が動かないときもあるんですよね(苦笑)。それで時にはお客さんに見苦しいところを見せてしまったり、反撃を許してしまったりもするんですけど」

 いまのところイオは「正解のない問題のような気はしている」という。しかし、何かいいアイデアがあるような気もしている。「この連載を読んでいる選手の方々にアンケートを取りたいぐらいです」と苦笑いするイオだった。(連載第47回より)

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