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2021-06-26

【ボクシング】中谷正義、ロマチェンコとも計量パス。明日、注目の決戦へ

いざ決戦。計量パスの中谷正義は、現代のレジェンドを打ち破れるか

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 26日(日本時間27日)、アメリカ・ネバダ州ラスベガスで行われるライト級12回戦。世界3階級制覇者ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)とWBO世界ライト級5位の中谷正義(帝拳)の前日計量が25日に行なわれ、ロマチェンコは134.6ポンド(=61.0キロ)、中谷は134.4ポンド(=60.9キロ)で両者ともリミット(135ポンド)アンダーでクリアした。

 戦いへの準備は完了。 長いフェイスオフの間、“精密機械”と謳われるウクライナ人を見つめて、「どのへん殴ろうかな…と。リアルに、想像と現実をあたまの中で調整していました」という中谷は、たかぶらず、最後は自ら握手を求めて別れた。

「やはり、お互い人生のためにこうやってボクシングの試合をしているわけで。べつに憎しみあっているわけじゃないので、明日の試合、お互いにベストコンディションで戦えたらな、っていう気持ちです」

 日本人があのレジェンドと戦う。しかも、“危険な刺客”として、そこにいる。

 ロマチェンコは超絶技巧の使い手だ。五輪2大会連続金メダル、プロでは2戦目からすべて世界戦。燦然と輝くレジュメを持ち、何人もの対戦者を絶望させてきた。そんな絶対王者が、自身3階級目となるライト級で体格の壁とも戦いながら世界4団体王座統一を目指し、最後のミッションに破れた。昨年10月、IBF王座を持つテオフィモ・ロペス(アメリカ)への判定負け。その後すぐに手術、加療に入ることになる右肩の故障のせいもあったのだろう。前半はとくに明らかに精彩を欠き、中盤からの巻き返しも届かなかった。「負けたとは思わない」と心を曲げない誇り高きキングは、ライト級での再起を決意し、再起戦の相手に中谷を選んだ。

 ロマチェンコのアメリカン・ドリームを支えてきたプロモーター、トップランク社ボブ・アラムが言う。

「ロマは自身のレガシーを真剣に捉えている。彼は常に最も難しい相手を望むんだ。素晴らしい試合になるだろう。中谷は過去2戦で、しっかり力量を示している。身長でのアドバンテージもある。映像や写真を見て選んだわけではなく、直近のトップ選手との2試合で実際に力を証明してきた選手だ。中谷が勝ったとしても大きな驚きはない」。

 中谷は、このチャンスをたしかに自らの拳でつかんだのだ。

「驚きですね。一度はボクシングをやめて、そこからこんなすごい急展開で、人生が大きく変わったので。人生何があるかわからんなって感じです」。

勝てば、一気に世界のスターダムに

 東洋太平洋ライト級王座を11度も防衛しながら待ち続けた男は、2019年7月、アメリカ・メリーランド州に赴き、IBF次期挑戦権を賭けた12回戦に臨んだ。眼窩骨折を負いながらフルラウンド。今をときめくテオフィモ・ロペスを“もっとも苦しめた男”として、その名は記憶に刻まれる。一度は引退を宣言したが、移籍、再起。1年5ヵ月のブランクを越えて、昨年末、アメリカ・ラスベガスのリングに立った。再浮上中だった俊才フェリックス・ベルデホ(プエルトリコ)との10回戦で、9回TKO勝ち。2度のダウンを奪われる崖っぷちからの大逆転劇で、強烈な印象を残した。

 帝拳ジムの本田明彦会長によれば、ロマチェンコ再起戦の対戦者としてオファーが最初に届いたのは、その劇的勝利から2ヵ月ほどたったころだという。「こちらは大喜びです。マッチメイク的にみれば、ロマチェンコが再起戦の相手に、サイズがあって、やりにくい中谷を選ぶのは得策ではないと思いました。勝って当たり前、とみられもするわけで。ロマチェンコはとにかくロペスと再戦をしたい。ロペスを苦しめた中谷に、ロペスよりいい勝ち方をすれば、評価される。だから選んだのでしょう。中谷はベルデホにも勝って、トップランクがOKして、(放送する)ESPNもOKした。いい試合になるのは当然。なにしろ、いい試合をしてほしいと思っています」

 ロペスを筆頭にライト級はアメリカの若き才能が集う充実の階級だ。この舞台の先にはたくさんのチャンスが期待できる。現に、先ごろWBC王者デビン・ヘイニー(アメリカ)に挑戦し、終盤大いに盛り上げた世界3階級制覇者ホルヘ・リナレス(帝拳)にはその後も魅力的な誘いがあるという。「金額でも今まで以上のオファーですよ。ライト級という階級の価値を感じます。今回、中谷が勝てば、そういう夢が広がります」。

静かな微笑みになお湧き上がる期待感

 このファイトウィーク、無敵と呼ばれた男と向き合い、静かに微笑む中谷を見て、期待を抱かずにいられない。

「(相手の)オーラはもともと感じないんです。誰を見ても。(ロマチェンコは)けっこう自然体な感じで。でも、もうちょっと気負っててくれた方がよかったかな、というふうには思いましたけれど。(ロマチェンコは)すごい選手はすごい選手ですよね。でも、まあ、僕は長身っていう、ほかの人とはぜんぜん違うところがあるので。ほかの相手とやるときのように、ロマチェンコもきっと戦えないと思う。結果を出している選手ですけど、自分のときにも同じように戦えるかどうかは別なので、そんなに脅威には感じてないですね」

 もちろん、ロマチェンコ有利に予想は傾く戦いだ。ロマチェンコ-1000、中谷+625(中谷の勝利に賭ければ7.25倍の戻り)というMGMのスポーツブックが示す数字のとおり。このウクライナ人はいかなる作戦にも戦法にも対応してきたボクシングマスターだ。ただし、ロマチェンコの“超人”ぶりにかげりが出ていることは間違いない。右肩の回復具合はどうなのか。体格の差は、やはりカギになるのではないか。ロマチェンコの縦横無尽の高速ステップがリズムに乗らないように中谷が圧力をかけ、右の強打につなげることができたら、試合は俄然、おもしろくなる。もしも不利な状況が続いたとしても、中谷にはどつき合える“度胸”がある。それは何にも代えがたい武器だ。

 相手がレジェンドであろうと、アメリカ、ラスベガスのメインであろうと。彼の頭の中で、勝利のイマジネーションが広がっているはずだ。
「ぜったいに勝ちます。応援、お願いします」

 なお。前座のスーパーバンタム級4回戦でプロデ
ビューする村田昴(帝拳)も55.1キロで計量をパス。54.3キロで秤を降りたキービン・モンロイ(アメリカ)と対戦する。
プロデビュー戦を迎える村田(左)も一発で計量をパスした
プロデビュー戦を迎える村田(左)も一発で計量をパスした

※WOWOWでは27日午前11時よりWOWOWプライオムでこの試合を生中継する。WOWOWオンデマンドでも同時配信される。

 WOWOWオンデマンドでは27日、午前10時より、WBAのスーパーフェザー、ライト級のチャンピオン、ジャーボンテ・デービス(アメリカ)が、WBAのスーパーライト級王者マリオ・バリオス(アメリカ)に同時3階級制覇をかけて戦うタイトルマッチ12回戦(ジョージア州アトランタ)も午前10時ごろからライブ配信することになっている。

文◎宮田有理子 Photos:Mikey Williams/Top Rank via Getty Images

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