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2021-07-18

【陸上】頼ることが苦手だった寺田明日香が人に頼ることで見えた新しい世界【連載#3】

東京五輪女子100mH代表の寺田明日香(ジャパンクリエイト)

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みんなでつくり上げる「チームあすか」の存在

   第一次陸上競技選手引退後の約3年半と約2年のラグビー選手生活を経て、5年半ぶりに陸上競技選手として再スタートするにあたり、全く新しい陸上競技選手としての“寺田明日香”をつくっていく必要がありました。

 その作業を自分ひとりでやるのはあまり効率的ではないため、私の思いに賛同してくれた人たちに頼って、みんなで楽しみながらやる方がいいのではないかと考えました。

 そうやってつくり出した結果が、今の「チームあすか」というスタイルです。

 現在、「チームあすか」には、高野大樹コーチをはじめ、トレーナー、栄養士、鍼灸師、メンタルトレーナー、マネージャー(夫)など、多くの方々に関わってもらっています。

 コーチと選手の知識だけでは補えない部分を、他のスタッフと共有して、みんなで意見を出し合いながらトレーニングを進めていく。そうすることで、さまざまな視点からアプローチできるようになりました。

 また、スタッフそれぞれに役割を持ってもらうことで、一人ひとりの負担を減らすことができますし、かつその人が得意とする領域の専門的な意見をもらうことができて、お互いにやりがいを感じやすくなると思っています。

 個人競技では何人ものスタッフについてもらっている選手はまだ少ないですが、こういった「チーム」で動くスタイルが増えつつあるのも事実です。

 学生の立場だと、「自分のチーム」をつくるのは難しいかもしれませんが、関わってくれている方々の意見を自分で取りまとめることはできると思います。そもそも困ったときに手を差し伸べてくれる人は、近くに絶対にいるはずです。

 ただ、ひとつ勘違いしてほしくないのは、「答えや助けを、最初から他人に求めることだけは絶対にやめた方がいい」ということです。

 自分で答えを探し、自分の意見を持った上で、他の人からもらうアドバイスや意見にこそ、大きな意味が出てくるのだと思います。

 選手であれば特に、自分の悩みや弱みを見せたくないと思ってしまいがちですが、勇気を出して誰かに話してみると、新しい世界が開けるかもしれませんよ。


Profile
てらだ・あすか
1990年1月14日、北海道生まれ。柏丘中→恵庭北高→北海道ハイテクAC(以上、北海道)→パソナグループ→ジャパンクリエイト。小学生時代に全国で活躍し、中学では伸び悩むも、高校では100mHでインターハイ3連覇、3年時は100m・4×100mRとの三冠。2008年の日本選手権では100mHで史上最年少優勝を飾り、10年まで3連覇。09年のベルリン世界選手権に出場。13年に引退し、大学進学・結婚・出産を経て、16年8月に7人制ラグビー転向。18年12月、陸上競技に復帰し、19年9月に12秒97(+1.2)を出し、19年ぶりに日本記録を更新。ドーハ世界選手権に出場。東京五輪イヤーの今季、4月に12秒96(+1.6)、6月に12秒87(+0.6)と立て続けに日本記録を更新。11年ぶりに日本選手権優勝。東京オリンピックでは決勝進出を目指す。

文◎寺田明日香 写真◎BBM

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