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2021-07-24

【陸上】「スポーツ選手に戻るのは嫌」と涙を流した寺田明日香がアスリートに戻るまで【連載#10】

東京五輪女子100mH代表の寺田明日香(ジャパンクリエイト)



母や裏方としての役割が考え方を変えてくれた

 それから月日が経ち、再びラグビー転向へのお話をいただき、結局2016年9月頃に7人制ラグビーを始めるわけです。時間が解決するとはまさにこのことで、裏方サイドでスポーツに関わったり、現役で競技をしている友人たちを見たりしていると、「いいなぁ」と思えるようになっていたのです。

 また、娘が生まれ、母親になっていたというのも大きな要因でした。物の考え方や見え方が、独身だった頃よりも大幅に変化し、それまでは何でも完璧にこなせなければ意味がないと思っていたのに、「やらずに後悔するくらいなら、失敗してもやればいいじゃん」と、陸上選手をしていたときには持てなかった考えも持つようになっていました。

 自分自身がさまざまな役割を持ったことで、「人からどう見られようと自分は自分」と考えられるようにもなって、ラグビー転向への後押しとなりました。

 新しいことを始めたりやめたり、自分の状況を変化させるということは、勇気が必要です。しかし、「どうにか今の自分を変えたい!」と思うときは、だいたい一歩踏み出さなければいけない局面です。

 チャレンジすることを恐れず、守りに入らず、一歩一歩進んでいきたいと思う今日この頃です。

文◎寺田明日香 写真◎BBM

Profile
てらだ・あすか
1990年1月14日、北海道生まれ。柏丘中→恵庭北高→北海道ハイテクAC(以上、北海道)→パソナグループ→ジャパンクリエイト。小学生時代に全国で活躍し、中学では伸び悩むも、高校では100mHでインターハイ3連覇、3年時は100m・4×100mRとの三冠。2008年の日本選手権では100mHで史上最年少優勝を飾り、10年まで3連覇。09年のベルリン世界選手権に出場。13年に引退し、大学進学・結婚・出産を経て、16年8月に7人制ラグビー転向。18年12月、陸上競技に復帰し、19年9月に12秒97(+1.2)を出し、19年ぶりに日本記録を更新。ドーハ世界選手権に出場。東京五輪イヤーの今季、4月に12秒96(+1.6)、6月に12秒87(+0.6)と立て続けに日本記録を更新。11年ぶりに日本選手権優勝。東京オリンピックでは決勝進出を目指す。

文◎寺田明日香 写真◎BBM

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