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2021-07-25

元ソフト日本代表・山根佐由里が見た東京五輪カナダ戦「ここというところで決めてくれるのが山田選手」

7月21日(水)から27日(火)まで、福島・あづま球場、神奈川・横浜スタジアムで開催される『2020東京オリンピック』。ソフトボール・マガジンWEBでは、元日本代表の山根佐由里さんに、各試合を振り返っていただく。本日は、25日(日)に行われた第4戦のカナダ戦の振り返りと、26日(月)10時から行われる第5戦のアメリカ戦の見どころをお伝えする。

上野-後藤の完封リレー
主将・山田の一打で決着

 勝てば銀メダル以上が確定する大事な一戦。2勝1敗でこの試合に臨んだカナダも、負ければ金メダルの可能性はなくなってしまうので、目の色を変えてやってきましたね。先発の上野由岐子投手は途中で降板となりましたが、6回を4安打無失点と内容は良かったと思います。


▲2日間の休養を取りカナダ戦に挑んだ上野由岐子(©WBSC)

 カナダ打線は一発が怖い。他の試合では結構インコースのボールを打っていたからか、この試合ではアウトコースを中心にボールを出し入れしていたようです。カナダは左バッターが多かったので、外に逃げていくシュートを有効に使い、うまく交わしながら投げていましたね。

 しかし、宇津木麗華ヘッドコーチ(以下HC)は、2本のヒットが出ていたジェニファー・ソーリング選手の3打席目が回ってくるタイミングで、迷わず後藤希友投手を投入しました。その後に打線がつながり得点したのですが、宇津木HCの采配と後藤投手の流れを引き寄せるピッチングは素晴らしかったですね。

 左投手で、下系の速球派である後藤投手は今までにないタイプのピッチャーですし、データも少ないでしょうから他国のバッターも苦戦しているのかもしれません。同じサウスポーでも、アメリカのモニカ・アボット投手はライズ系ですし、キャット・オスターマン投手とも違う。さらにはメキシコのダニエル・オトゥール投手ともタイプが違います。ストレートが動くので、バッターも予測がつかないんだと思います。

 後藤投手は、オリンピックという大きな舞台を全身で楽しみ、相手を自分のペースに引き込んで投げることができている。トヨタ自動車のチームではアボット投手、日本代表では上野投手の背中を追い掛け成長している最中ですが、偉大な二人の投手の良さを学びながら、しっかりと自分のピッチングを築き上げていってほしいですね。


▲大舞台で臆することなく、堂々とした投球を見せている後藤希友(写真/Getty Images)


 打線はなかなか得点を挙げられずにいましたが、カナダのケイリー・ラフター捕手は以前、日本リーグのHondaでプレーしていた選手。日本のソフトボールを熟知しているので、簡単には打たせてくれませんでしたね。

 そんな中で、8回裏に山田恵里選手がサヨナラ打を放ちました。これまで安打は出ていたものの悔しい思いもされていたはず。でも、ここぞの場面で決めてくれるのが山田選手です。また、ここまで日替わりでヒロインが出ているのも素晴らしいと思います。決勝に向けて、仕上がってきているのを感じます。


▲サヨナラ打を放った主将の山田恵里に駆け寄る日本代表(Getty Images)

全勝同士で対決!
アメリカ戦の見どころ

 4勝同士、すでに決勝進出が決まっているので、27日の決戦を見据えて、手の内を隠しながらの戦いになると思います。バッテリーにとっては、いつもはしないような配球を試せたり、情報収集をする場になるかもしれません。でも、決勝に向けて調子を上げていく必要のあるバッター陣は打席でしっかりと振っていく必要がある。

 アメリカは、ここまでオスターマン投手、アボット投手が軸となって投げてきましたが、日本戦はアリー・カーダ投手やレイチェル・ガルシア投手も含めて細かい継投で来ることが予想されます。その投手陣を日本打線がどのように攻略するかがカギとなるでしょうし、アメリカの強力打線を日本の投手陣がどのようにして抑え込むかに注目したいと思います。

【PROFILE】
やまね・さゆり/1990年1月24日、三重県生まれ。右投右打。投手。宇治山田商業高-レオパレス21(2008年~09年)-トヨタ自動車(10年~17年)。トヨタ自動車では12年から16年までの5年間でリーグ記録の42連勝を打ち立て、14年には最優秀投手賞を受賞。日本代表では10年、14年、16年と世界選手権出場。17年限りで現役を引退し、現在はトヨタに勤務しながらソフトボール普及のためメディア等で活躍中。

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