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2021-07-25

【Tokyo2020 ボクシング】日本勢が4連勝、並木月海、成松大介も1回戦突破

天を行くような並木(右)ステップでの大回転。ナンジリはパンチを出すことさえ稀だった

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 東京五輪のボクシング競技は25日、東京・両国国技館で第2日が行われた。夕方のセッションに登場した女子フライ級の並木月海(自衛隊)はキャセリン・ナンジリ(ウガンダ)に、男子ライト級の成松大介(自衛隊)もフィストン・ムバヤ・ムルンバ(コンゴ)を、それぞれ5-0の判定に破り、2回戦に駒を進めている。

並木の旋回戦術に対戦者は何もできず

 すべては並木の思い描いたとおりの戦いだったのだろう。実のところ、こんな選手は、今どき珍しい。世界中、プロ・アマ、男女すべてを見わたしてみてもだ。速いフットワークはあくまで攻撃、それに付随する防御に全集中するために使われる。並木がポン、ポンと小さく前後に跳ねるのはフェイントの思惑もあるのかもしれないが、戦術に組み込んだものとして、リングを勢いよく旋回するフットワークの使い手など、久しく見た記憶がない。その上、並木の場合はその動きの中、どのタイミングで飛び込んでいくのか、相手はきわわて読みにくい。

 ナンジリは最初から最後まで面食らったままだった。とにかく手が出ない。手を出したくても、ターゲットを追いかけられないのだから、何もやりようがない。結局、この21歳のボクサーはどこが強くて、どんな特色を持っているのかもわからないままリングを降りることになる。そこまで追い詰められた並木のボクシングを、ここは高く評価すべきなのだろう。

 初回のワンツーに始まり、打ち下ろしの左クロス2発からの右フック。フックというよりスイングの軌道に近い左。はたまた右ジャブ。遠くから飛来して、いきなり打ち込まれるそんなパンチに、ナンジリは何も対処できないまま。反撃の手段さえ作れなかった。

 2ラウンドはやや攻め数が減った並木だが、3ラウンドには断続的ながらもパンチを出し続け、一方的な展開は波風のないままにひたすら続くことになる。

 スコアは当然のように30対27が4人と30対26の大差がついた5-0だった。
順当に勝ち上がった並木は有力なメダル候補である
順当に勝ち上がった並木は有力なメダル候補である
成松は(左)は巧みな試合運びでムバヤに何もさせなった
成松は(左)は巧みな試合運びでムバヤに何もさせなった

成松の練り上げた戦術が強打の空転を誘い出す

 並木の後にリングに上った成松も、ムバヤを鮮やかに空転させてみせた。31歳のベテランサウスポーが、リオ五輪続いて、スポーツの最高舞台にいることができるのは、よく練り上げた戦術を盛り込んだ試合運びのうまさ、そして我慢強いペースメイクがあればこそ。今回もその持ち味を存分に発揮した。

 いきなり左ストレートで攻め込んだ成松は、その後は丹念に、この夜のメニューのト書きを書き始める。下がって、相手を呼び込み、少し前に出るふりをして、また誘う。そして、下がって、下がって。だんだんと慌て始めたムバヤは、強引なワンパンチを狙っていくだけで攻撃の組み立てはできない。

 まんまとムバヤに術をかけた成松は、いよいよいきり立つところに左カウンターを押し込んで、着実にポイントを奪っていった。

 各ラウンドの採点公開で全ジャッジがフルマークの勝ちとつけているのを知った成松は、最終ラウンド、ときおり左パンチをのぞかせながらも、常に安全地点を確保して、そのまま判定決着にたどり着いた。

 スコアは30対27が3人に29対28が2人で、すべて成松の勝ちとしていた。24日の入江聖奈(日体大=女子フェザー級)、岡澤セオン(INSPA=男子ウェルター級)に続き、並木、成松が勝ったことで、日本チームは4連勝と絶好のスタートを切ったことになる。

 並木は29日、グラジエレ・ソウザ(ブラジル)と2回戦を戦う。成松は31日に34歳のベテラン好戦派ザキル・サフィウリン(カザフスタン)と顔を合わせことになった。

写真◎ゲッティ イメージズ Photos by Getty Images

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