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2021-07-25

【Tokyo2020 ボクシング】展望:男子ライト級 パウンドフォーパウンドのトップでも『絶対』と言い切れない層の厚さ

そのボクシングは精緻のきわみ。アンディ・クルス(右)は全階級とおしてもトップクラスの実力者

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 アマチュアで最強を目指すならこんなボクシングをすべきだ。そう言いきっていいほど、アンディ・クルス(キューバ)は理想像に近い。ただし、そんなクルスだって、間違いなくゴールドメダリストになるとは言い切れない。それほど、ライト級のトップ集団はハイレベルである。この五輪を集大成にと誓う成松大介(自衛隊)は、とんでもなく高い境地にフリークライミングしようとしている。

男子ライト級(63キロ級)

シード選手
1 ソフィアヌ・ウミア(フランス)
2 ジョナス・ジョナス(ナミビア)
3 アンディ・クルス(キューバ)
4 エルヌル・アブドゥライモフ(ウズベキスタン)

日本代表
成松大介(自衛隊)

 自分の攻防技術がフル稼働する距離とポジションを管理できること。これが、強いボクサーの最大にして無二の条件である。クルスはまさしく、その術すべてを知り尽くす。常に遠からず、近からずに立っていて、どこまでも正確なショットを間断なく打ち続ける。少しでも都合が悪いとみたとしても、大きく動いて一から組み立て直すようなことなどしない。必要最小限に立ち位置を移し、予備運動なしにベストチョイスの攻防を即座に起動してしまう。

 それほどにコンプリートに近いファイティングマシーンであったとしても、そのクルスの金メダルが安泰と言い切れないのだから、トーナメントを見届ける観戦者は楽しくてしょうがない。クルスを追う軍団は、いずれもハイパーな存在であり、また個性派ばかりなのだ。
アメリカのホープ、デービスはすでにプロでも3勝している
アメリカのホープ、デービスはすでにプロでも3勝している

 まず、クルス打倒の一番手候補はキーショーン・デービス(アメリカ)だ。クルスと匹敵する『ジャッジメント・オブ・ディスタンス』の達人でもある。スピード、カウンターの切れ味も抜群。ただ、今回の五輪出場までにはいささかの紆余曲折があった。今年の初め、コーチ陣とのコミュニケーション不足から亀裂が生じ、チームUSAを離れてプロに転向してしまった。その後、アメリカ大陸予選中止によって2019年までのランキング上位が代表に選ばれることになり、チームと和解したいきさつがある。その能力の高さもむろんながら、オリンピックスタイル・ボクシングに帰ってくるからには相当な覚悟もあるものとみている。

 続いて2017年世界選手権チャンピオンのソフィアヌ・ウミア。本来、カウンターパンチャーで、さまざまな手立てで対戦者を誘い込むと毒針のような一撃を刺む。ウェルター級の優勝候補パット・マコーマック(イギリス)とは双子の兄弟であるルークの歯切れのいい攻撃も捨てがたい。ヨーロッパ予選準決勝でのウミアとの戦いは、まさしく秘技とまっすぐな技巧のぶつかり合い。ウミアの勝ちとなったが、どちらの手が挙がってもおかしくないほどの熱闘だった。粘り強くアプローチし続けるサウスポーのファイター、アブドゥライモフはこれに続く存在か。
成松(右)はリオ五輪で2回戦敗退。東京で集大成を見せると誓う
成松(右)はリオ五輪で2回戦敗退。東京で集大成を見せると誓う

 成松は第2シードのジョナス・ジョナスを頂点とするブロックにエントリーされた。このジョナスは上記の一群とはまた違った意味で、とんでもないボクサーだ。180㎝の長身でサウスポー、オーソドックスとスタイルはどちらも自在にこなす。スピードもパワーもさほどでもないが、柔軟な体をしならせてよどみなくパンチを発射し続ける。それも、奇妙な角度、軌道を描きながらである。リオ五輪に続いて、成松が目指す頂点への道。その道中、ゴロゴロの岩だらけのようだ。

文◎宮崎正博 写真◎ゲッティ イメージズ Photos by Getty Images
ジョナス・ジョナスは縦横無尽の連打王。不思議なほどに強い
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