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2021-07-26

【Tokyo2020 ボクシング】展望:男子フライ級 難敵が立ちはだかる頂点を目指す前に、田中亮明は初戦が大勝負

高速で打ちまくる連打で五輪連覇を狙うゾイロフ(右)(写真はリオ五輪決勝)

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 フライ級は戦国時代の様相である。シード選手にとどまらず、なお多くの有力選手が存在する。だれがてっぺんを獲ってもおかしくない。初戦から難敵とぶつかる田中亮明(岐阜・中京学院大中京高教)には、厳しい挑戦が待ち受ける。

男子フライ級(52キロ級)

シード選手
1 アミット(インド)
2 ビジャル・ベナマ(フランス)
3 ヨスバニー・ベイティア(キューバ)
4 モハメド・フリッシ(アルジェリア)

日本代表
田中亮明(岐阜・中京学院大中京高教)

 ま日本代表のサウスポー、田中亮明はとまりがよく、攻防ともどもに安定感がある。だが、自分から戦局を切り開く展開を作らないと、この階級で勝ちあがていくのはかなりむつかしい。飛び抜けた存在はいないにしても曲者ぞろいで、しかもハイレベルで複数が拮抗している。独特のテンポを持っている選手もいれば、コンビネーションの雨嵐を得意にしたり、それとも相手のスキを作り出しておいて、一瞬のうちに突き抜ける。そんな多士済々のラインナップなのだ。田中が待って応戦する形で戦ってしまったら、彼らのリズムに蹂躙され、持ち味を発揮できないままで終わってしまうことだってある。
田中亮明(左)は積極的に戦局を切り開きに行きたい
田中亮明(左)は積極的に戦局を切り開きに行きたい

 田中には初戦から大きな関門が待っている。相手は前大会、銀メダルのサウスポー、ヨエル・フィノル(ベネズエラ)。柔軟性に富み、きれいな軌道を描く左ストレートに、シャープな右フックが怖い。ここを切り抜けたとしても、さまざまな“形”で迫ってくる手ごわい奴らが次々に襲いかかってくるのだ。

 優勝候補と言うなら、、リオ五輪金メダルのシャホビディン・ゾイロフ(ウズベキスタン)が名前を上げる最初になるのだろう。アジア予選では準決勝で、当時19歳だったシティサン・パンミット(タイ=今大会は不出場)の水際立ったインファイトに空回りして敗れてしまったが、その後は無難な戦いを見せている。大柄のサウスポースタイルからノンストップで連打している。そんな迫力はしばらくご無沙汰でも、やはりこの男を軸に置いて、トーナメントを俯瞰するのが賢明な手段なのだろう。
技巧派サウスポー、ベイティア(右)も有力な優勝候補
技巧派サウスポー、ベイティア(右)も有力な優勝候補
ベナマ(右)は長身と長いリーチで対戦者を悩ませる
ベナマ(右)は長身と長いリーチで対戦者を悩ませる

 シード選手はそれぞれに特色がある。速さや強さ、さらに際立つ技巧はないが、うまく対戦者をスローペースで囲い込むアミット。長身からの打ち下ろすパンチが厄介なビジャル・ベナマ。線の細さはあっても、シャープな技巧が輝くヨスバニー・ベイティア、長くトップ戦線にいるモハメド・フリッシは大柄なパワーパンチャーだ。この4人以外にもまだいる。リオ五輪ライトフライ級銀のユベルヘン・マルティネス(コロンビア)は辛抱強くアタックをかけてくる。断続的な速攻に持ち味を持つ、同じくリオ五輪のフライ級銅メダリスト、胡建関(中国=フー・シャングァン)。

 名前を連ねたら、きりがないほど難敵が居並ぶ。さて、田中がその領域で本領を試せるかどうかは、初戦の出来にすべてがかかっている。

文◎宮崎正博 写真◎ゲッティ イメージズ、善理俊哉 Getty Images, Shunya Seri

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