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2021-08-01

【アメフト】米カレッジで激震 名門テキサス大とオクラホマ大が「最強」SECに移籍 スーパーカンファレンス化進む

SECへ移籍する、オクラホマ大学とテキサス大学。両校の対戦で活躍するQBマレイ(#1)=photo by Getty Images

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米国のカレッジフットボールで、激震が起きている。名門中の名門であり、ライバル校同士でもあるテキサス大学とオクラホマ大学が、2校揃って所属していたBig12カンファレンスを離脱して、サウスイースタンカンファレンス(SEC)へ移籍することが決定したのだ。移籍は契約上は2025年となるが、違約金を払えば来季からも可能という。

 SECは現在のカレッジフットボールでは実力的に最強のカンファレンスと考えられており、この移籍によって「スーパーカンファレンス化」が一層進むことになる。

「カレッジスポーツ史上、最大の移籍劇」

 日本のファンには比較的なじみの薄いカレッジフットボールだが、米国ではNo.1スポーツのNFLと甲乙つけがたい人気と注目度を誇る。今回の移籍は、あえて例えるなら、プロ野球の巨人と阪神が、セントラルリーグを脱退してパシフィックリーグに加盟することにした、くらいの衝撃がある。米のメディアも「カレッジスポーツ史上、最大の移籍劇」と伝えている。


 今回の移籍が騒がれ始めたのは7月23日、東京五輪開会式の日だった。米のメディアは、このニュースをリアルタイムで伝えるために、タイムラインを作成し、次々にニュースを報じた。

 そこで明らかになったのは、テキサス、オクラホマの両校がBig12カンファレンスが分配するテレビ放映料などの分配金を、もう受け取らない意思を明らかにしたことだった。

 カレッジのフットボール、バスケットボールが稼ぐテレビ放映料は莫大だ。それを不要というのは、カンファレンス脱退の意思を明確にしたということだ。

 テキサス大、オクラホマ大は共に19世紀の創部で120年を超える歴史を持つ。全米で6校しかない、通算900勝以上で勝率7割以上の名門チームだ。

 これだけの名門チームを受け入れる力があるのは、SECしかなかった。21世紀の20シーズン中、全米優勝校を出したのが12回。NFLドラフトでも、1巡指名のほぼ半数をSEC加盟校の選手が占める年もある実力NO.1のカンファレンスだ。アラバマ大学を筆頭に、ルイジアナ州立大学、フロリダ大学、オーバーン大学などの強豪校がひしめいている。

 7月26日、両校は2025年6月30日までの放映権契約を延長しないと、Big12の加盟他校に通知した。27日には、2025年7月1日から「加盟できるよう勧誘すること」をSECに求めた。

 そして、29日、SECは14校がそろって理事会を開き、両校の招聘を全会一致で決定した。テキサス大とマーケットが重なるテキサスA&M大学が反対する可能性があるとみられていたが、同大も衆寡敵せず、賛成に回った。翌、7月30日に両校が理事会を開いて招聘を受諾した。これによって、SEC加盟が正式に決定した。

 テキサス大学は1893年創部で通算923勝、全米王座は学校公認4回、非公認5回。ボウルゲームの戦績は31勝24敗。本拠地のダレルKロイヤル-テキサスメモリアルスタジアムは約95000人収容。愛称はロングホーンズで、全米屈指のフットボールステート・テキサスで、NFLのダラス・カウボーイズに勝るとも劣らない人気と注目度を誇る。2006年1月のローズボウルで、QBビンス・ヤングを擁して、当時カレッジ最強と言われたUSCを撃破した1戦は、21世紀最高の名勝負と評価された。主なOBにはRBアール・キャンベル(元オイラーズ)、DTスティーブ・マクマイケル(元ベアーズ)、FSアール・トーマス(元シーホークス)などがいる。

 オクラホマ大学は1895年創部で愛称はスーナーズ。通算909勝、ボウルゲーム戦績は29勝23敗だが、全米王者となった回数は学校公認7回、非公認11回とテキサス大を上回る。本拠地・オクラホマメモリアルスタジアムの収容人数は約86000人。全米最優秀選手のハイズマントロフィー受賞選手を7人も輩出。近年はスプレッドオフェンスの源流校としても名高い。主なOBにはDEリー・ロイ・セルモン(元バッカニアーズ)、QBトロイ・エイクマン(元カウボーイズ)、RBエイドリアン・ピーターソン(バイキングスなど)がいる。過去15年で、サム・ブラッドフォード(元ラムズ)、ベイカー・メイフィールド(ブラウンズ)、カイラー・マレイ(カージナルス)と、3人のドラフト全体1位指名QBも輩出した。

 両校の対戦は、1900年に始まり、昨年まで116回。有名な西部劇になぞらえ「レッドリバーシュートアウト(紅い河の決闘)」と呼ばれる、ミシガン大学とオハイオ州立大学の対戦と並ぶ、米国スポーツ界を代表するライバル対決となっている。

SECへ移籍する、オクラホマ大学とテキサス大学。両校の対戦で活躍するテキサス大QBアーリンガー(#11)=photo by Getty Images
SECへ移籍する、オクラホマ大学とテキサス大学。両校の対戦で活躍するテキサス大QBアーリンガー(#11)=photo by Getty Images


「ジリ貧」Big12から、巨額放映料求め名門離脱

カレッジフットボールは、巨大なビジネスだ。ホームでの観客動員数の減少、有力高校生勧誘の困難さ、優秀なコーチの確保、選手が肖像権を商業的に使うことを認める最近の連邦裁判所の判決、そして巨額の放映契約の更新・・・。名門ゆえの悩みを抱えていた両校にとって、解決策は少しでも大きな金額を得る方法を確立することだった。

 米スポーツ専門局ESPNによると、移籍劇の発端は今年5月だったという。Big12がテレビ局(ESPN、FOX)と結んでいる今の契約が切れた場合、今までと同じ金額が得られる保証はないとテレビ局側から伝えられたことだったそうだ。

  Big12カンファレンスは、もともと、1990年代にBig8とサウスウェストカンファレンスが合併してできあがったカンファレンスで「パワー5」の中では歴史は浅かった。今世紀に入ってネブラスカ大学、テキサスA&M大学、ミズーリ大学など離脱チームが続出した。ウェストバージニア大学、テキサスクリスチャン大学などを加盟させてつくろったが、12という名前なのに、10校しか所属していなかった。

 全米王者を決めるカレッジフットボールプレーオフ(CFP、全米4強のトーナメント)は現行制度が2014年から始まったが、Big12からはオクラホマ大しか進んだことが無い。

 カレッジの5大カンファレンス、「パワー5」の中では、マーケット的にもSECと重なり、ジリ貧感は否めなかった。

 SECにとっても、この加盟は大きい。今まではテキサス・オクラホマ2つの州で、テキサスA&M大しか加盟大学が無かった。今回の2校加盟により、米国人口のほぼ10%、3300万人が居住する「フットボールステート」のトップチームを2つも手に入れたことになる。実力だけでなく、人気や注目度でも他を圧する、「スーパーカンファレンス」的な存在となるだろう。

 SECはフットボールとバスケットボールに関して、昨年12月にESPNと独占放送契約を結んだ。この放送契約は、米紙ニューヨークタイムズによると、10年30億ドル(3300億円)で、1年あたり330億円。それまでCBSと結んでいた契約の5倍以上だという。今回、両校の加盟によって、放映料はさらに増額される可能性もあるという。

 ESPNによれば、両校の移籍は2025年7月以降となるが、現実には1校8000万ドル(約87億7000万円)の違約金を支払えば、来季、2022年から移籍が可能となるという。さらに、目玉である両校が移籍した場合、Big12がカンファレンスとして存続が難しくなることが十分に考えられる。仮にカンファレンスが消滅した場合、両校の違約金支払いの義務も軽くなるという。

 Big12に残された中で注目されるのは、カンザス大学の行方だ。同校はフットボールは低迷しているが、バスケットボールでは全米レベルの強豪校として知られている。フットボールだけでなくバスケットボールの強豪校がそろうアトランティックコーストカンファレンス(ACC)への移籍が早くも噂されている。また、州内に大きな都市が無く、マーケットとしての魅力がないとされるウェストバージニア大も、地域の重なるACCへの移籍が有力視されている。

 アイオワ州立大はBig10カンファレンスへの移籍が取りざたされる。準メジャー校というべきオクラホマ州立大やテキサス工科大も、カンファレンス移籍の声はかかりそうだ。

現在、カレッジ最強と目されるSECのスーパーカンファレンス化はどこまで進むのか=photo by Getty Images現在、カレッジ最強と目されるSECのスーパーカンファレンス化はどこまで進むのか=photo by Getty Images

【小座野容斉】

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