2日、東京・後楽園ホールで行われた日本スーパーバンタム級タイトルマッチ10回戦は、チャンピオン古橋岳也(33歳=川崎新田)が、初回からダウンを奪って6位・花森成吾(23歳=JB SPORTS)に3回1分12秒TKO勝ち。初防衛に成功した。
文_本間 暁 写真_菊田義久
「圧勝するってずっと言い続けてきましたが、正直、ものすごいプレッシャーがありました」。これまでの試合とは打って変わって、傷のほとんどない顔をほころばせながら、古橋は語った。自身はまもなく40戦に到達しようかというところ、チャレンジャーはわずか10戦を経ての挑戦。ボクシングキャリアだけでなく、年齢も10も若い。これまで積み上げてきたものの重みを考えれば、「王者の絶対的有利」の予想が立てられるカード。なにより、「あっさり退けなければならない」という自負からの命題も芽生えていただろう。だが、「勝って当然」という組み合わせほどやりづらいものはない。そんな重圧をはねのけるようなスタートダッシュだった。
古橋の攻撃は、立ち上がりから自信に満ちていた 身長で6cm上回る花森は、長いストレート系ブローが持ち味。その花森の得意とする距離からさらに遠い場所で動いた古橋は、スッと近づくと左に右をクロス。これでヒザを揺らした挑戦者が右を出すところへ、合わせて右。「笠さん(康次郎トレーナー)とずっと練習してきたパンチ」で、花森から早々にダウンを奪った。
ここで一気に試合を決めにかかった古橋だが、花森も意地を見せて、詰め切れず。
古橋のインファイトを想定していただろう花森も、ショートコンビを見せたが… しかし完全に主導権を握った古橋は、中間距離では左右をスイング。距離を縮めては左ボディブロー。この日のために用意したのだろう。花森も左右アッパー、左ボディブローといずれもショートでコンパクトに放っていくが、いかんせん威力が段違いだった。古橋も被弾が多かったが、それ以上のインパクトを与える。挑戦者は時折サウスポーにスイッチするかたちも見せたが、打撃戦に強い古橋に飲み込まれてしまった。
3回、古橋は右でふたたび花森をグラつかせると、左ボディブロー。これがさらにはっきりとダメージを与えた。上も下も効いてしまった花森はズルズルと後退。ロープを背負ったところで王者が連打。立ったまま失神したような状態の花森を救おうと、山田武士トレーナーがリングの外側をロープ伝いに駆けるのと同時に、レフェリーが止めた。
ダメージ濃厚も、2度目のダウンを拒否し続けた花森をレフェリーが救った 花森の距離を潰し接近戦。挑戦者側もそれを想定してのショートコンビネーション。しかし、そこでも古橋の地力が勝る。終わってみれば、すべての面で王者が上回った、そういう試合だった。
ホッとした表情を浮かべるのも一瞬、本人、笠・新トレーナーは、「まだまだ課題がたくさん」と神妙な顔つきに戻る。ブロッキングの時間が長い点、もっとボディワークで外すという、防御面を挙げた。
「矢吹さんも言っていたように、日本タイトルは、世界の次に価値があると僕も思う」。来月、世界初挑戦するのを機に日本ライトフライ級王座を返上した矢吹正道(緑)の発言に同調し、「この価値をもっと上げるのがいまの目標」と言う。そのためには「国内の強い選手をみんなやっつけて、国内無敵と思われる存在になりたい」
前王者・久我勇作(ワタナベ)、田村亮一(JB SPORTS)。接戦を演じた“ライバルたち”がふたたびを狙っている。大阪には辰吉寿以輝(大阪帝拳)、下町俊貴(グリーンツダ)というホープもいる。そして、11月にWBOアジアパシフィック王座決定戦に臨む井上拓真(大橋)と和氣慎吾(FLARE山上)、東洋太平洋王者・勅使河原弘晶(三迫)も……。
国内スーパーバンタム級の争いも熾烈を極める。
古橋の戦績は37戦28勝(16KO)8敗1分。花森の戦績は11戦7勝(5KO)4敗。
<セミファイナル=日本ユース・ミニマム級王座決定戦8回戦>○伊佐春輔(川崎新田)判定2-1(77対75、77対75、75対77)
●高田勇仁(ライオンズ)