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2021-10-18

【アメフト】ディフェンスが“猛攻撃” オービックがQBエバンスを封じ込んで東京ガスに完勝

【オービック vs 東京ガス】第2Q、東京ガスQBエバンスにプレッシャーをかけるオービックLB成瀬とDL板敷=撮影:小座野容斉

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アメリカンフットボール・Xリーグの最上位「X1スーパー」は10月17日、東西で第4節の2試合が行われた。富士通スタジアム川崎の、オービックシーガルズ対東京ガスクリエイターズの一戦は、オービックが東京ガスに完封勝ちした。オービックは4戦全勝で勝ち点12、東京ガスは1勝3敗で勝ち点3のままとなった。

オービックシーガルズ○23-0●東京ガスクリエイターズ
(2021年10月17日、富士通スタジアム川崎)

【得点経過】

オービック 第2Q 10:46 QBジミー・ロックレイ→WR西村有斗, 14ヤードTDパス (K星野貴俊キック成功)
 4回 37y, 1:40 [7-0]

オービック 第2Q 11:51 RB望月麻樹, 1ヤードTDラン(K星野キック成功)
 5回 41y, 0:36 [14-0]

オービック 第4Q 0:32 QBロックレイ, 14ヤードTDラン(K星野キック成功)
 7回 68y, 3:11 [21-0]

オービック 第4Q 8:22 LB繁治亮依,DL樋口尚行<Safety>QBジェロッド・エバンス
[23-0]
【オービック vs 東京ガス】第4Q、東京ガスQBエバンスをセーフティーに仕留めるオービックLB繁治とDL樋口=撮影:小座野容斉

 東京ガスのQBジェロッド・エバンスは、今季の新米国人の中では、ネームバリュー・実力ともにトップと言って間違いない。第2節ではパス227ヤード2TD、ラン67ヤード1TDで富士通をあと一歩のところまで追い詰め、第3節のエレコム神戸ファイニーズ戦ではパス265ヤード1TD、ラン38ヤード2TDで勝利の立役者となった。

 強肩・クイックリリースに加え、巨体ながら走力がある。米カレッジの強豪バージニア工科大でエースとして活躍、NFLのスターQBと互角に戦った実績もある。

 王者オービックのディフェンスが、超新星エバンスと、どう渡り合うのか。第4節、最大の注目カードは、結論から言えば、オービックの完勝だった。ディフェンスとオフェンスの両方からその勝利を振り返る。

若手台頭、常にフレッシュな状態でプレッシャー・・・ディフェンス

 オービックディフェンスにとっては会心の勝利だった。まず、エバンスのキープだけでなくRBも含めた東京ガスのインサイドのランをほぼ完全に止めた。エバンスの外のランもコンテインして走路を潰した。パスに対しては、アウトサイドのスクリーンパスには、DBの速い上がりで対応した。

 そして、自慢のDL陣が徹底して常に圧力をかけ続けた。

 今のオービックDL陣は若く体力のある選手がどんどん増えている。

 DEではベテランのバイロン・ビーティ―Jrや平澤徹、26歳の副将・佐藤将貴に、2年目の板敷勁至が加わってきた。インサイドDLでは清家拓也、仲里広章に加え、ルーキーの小山健太、富士通から移籍の山崎奨悟が台頭してきた。
【オービック vs 東京ガス】第4Q、東京ガスQBエバンスを、オービックDL山﨑、板敷がサック。板敷はガッツポーズ=撮影:小座野容斉

 彼らがローテーションするために、常に元気なDLがQBに襲い掛かった。さらに、この日はオービックのランが好調だった。オフェンスがしっかりとボールコントロールし、3&アウトは一度もなかった。ディフェンスにはサイドラインで、リフレッシュする時間も与えられた。

 オービックはDLだけでなく、インサイドからLB岩本卓也、成瀬圭汰ら100キロ近いLBもパスラッシュに加わった。エバンスは右にロールしてラッシュをかわしながらときおりパスを通すのがやっとだった。

 第1Qに、エバンスにロングパスを決められ、この試合で唯一のレッドゾーン侵入を許したときには、東京ガスK朴容俊の34ヤードフィールドゴール(FG)トライを見事にブロックした。

 第2Qには、エバンスのキープによる4thダウンギャンブルを止めた。
【オービック vs 東京ガス】第2Q最終盤、東京ガスの4thダウンギャンブルを止めて、ボールを掲げるオービックDL清家=撮影:小座野容斉
 第3Qには、ラッシュを少し緩め、DBの久保颯がパスを読んで、インターセプトした。

 第4Q、自軍のQBロックレイがインターセプトを喫した時は、エバンスをQBサック、さらにOL陣のフォルススタートを誘発させ、東京ガスオフェンスを追い払った。

 試合最終盤、東京ガスが自陣ゴールライン手前から必死の抵抗を試みるが、DL樋口尚行、LB繁治亮依という2人のルーキーがQBエバンスを捕まえてエンドゾーン内で倒し、セーフティー。最後の最後まで、オービックディフェンスは“猛攻撃"の手を緩めなかった。

庄島出場でOL活性化、コンスタントなラン・・・オフェンス

 オフェンスは、序盤は苦労した。大きな勝負では気負いがちになるQBロックレイのパスがなかなか決まらなかった。しかし、主将の地村知樹と、新人の荒竹悠大のランプレーが、コンスタントに出た。2ndダウン、3rdダウンで短い距離しか残らなかったため、プレーの幅も広がり、パスの精度が徐々に上がった。
【オービック vs 東京ガス】チームトップのラン62ヤードを記録したオービックRB地村=撮影:小座野容斉

 スコアの仕方もオービックらしかった。前半残り1分14秒で、この試合最初のタッチダウン(TD)をロックレイのパスで決めた。

 次の東京ガスのオフェンスで4thダウンギャンブルを止めて、好フィールドポジションを得た。残り時間は45秒。オービックはロックレイのパスでゴール前へ。そして「結局、一番良いところで活躍する男」と大橋誠HCが評する望月麻樹がTDを奪った。

 ゲームクロック上、1分5秒で、2TDを奪ったオービック。勝負所で一気呵成に畳みかける「らしさ」が出た場面だった。

 第4Qには、ロックレイがスクランブルからTDラン。パスコースに出たレシーバーがカバーされていると見るや、即座にランに切り替えた。

 直前のプレーは、ゴール前4ヤードの3rdダウンでパス失敗。そこからホールディングのペナルティで罰退し、14ヤードとなった場面だった。東京ガスは4thダウン4ヤードとしてもよかったが、ペナルティをディクラインしなかった。

 14点が17点になるのも嫌だという、東京ガスディフェンスの心を見透かした、絶妙のスクランブルだった。
【オービック vs 東京ガス】第4Q、オービックQBロックレイがスクランブルから14ヤードを走りTD=撮影:小座野容斉

 オフェンスで、見落とすことができないのは、OLの要、C庄島辰尭の復帰だ。ここまで2試合プレーをしていなかった庄島の出場が、OLのブロックに活力を与えた。ラン182ヤードについて、大橋HCは「庄島の力によるものだったかは、フィルムをリビューしてみないと何とも言えない。ただ、彼の存在がOL全体のコミュニケーションに非常にプラスになったのは間違いない」と評価する。

【オービック vs 東京ガス】今季、初出場のオービックOL庄島は力強いブロックを連発、オフェンスをけん引した=撮影:小座野容斉
   ◇

 2試合連続のシャットアウト勝利のオービックは。2週間後、アウェーの大阪ヨドコウスタジアムで、パナソニックインパルスと対戦する。昨年、劇的な幕切れとなった両者の対戦。楽しみでならない。

【小座野容斉】

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