アメリカンフットボールのXリーグは、11月21日、「X1エリア」最終節の3試合が、東西の2会場で開催された。福岡市・博多の森陸上競技場のイコールワン福岡SUNS対電通キャタピラーズの1戦は、福岡SUNSが大量55得点で電通を撃破した。この結果、福岡SUNSは5勝1敗・勝ち点15となり、トップリーグの「X1 スーパー」昇格を決めた。九州のチームが最上位カテゴリーに昇格するのは、日本の社会人アメフト史上初の快挙。(写真はすべて撮影:佐藤誠)
電通は3勝3敗・勝ち点9でシーズンを終えた。富士通スタジアム川崎であった、ディアーズフットボールクラブと富士フイルムミネルヴァAFCの一戦は、ディアーズが快勝し、勝ち点12。残り1枠となったX1スーパー昇格は、ディアーズと警視庁イーグルスの2チームが争う。11月23日の警視庁‐名古屋サイクロンズで、警視庁が勝つか引き分けで警視庁が、敗れた場合はディアーズが、X1スーパーに昇格する。
X1スーパーは、現状の8チームが、来季から12チームに拡大するため、今季のみ特例でX1エリアの上位4チームが自動昇格する。アサヒビールシルバースターと、アサヒ飲料チャレンジャーズがすでに昇格を決めている。
イコールワン福岡SUNS○55-7●電通キャタピラーズ
(2021年11月21日、博多の森陸上競技場)
【得点経過】
福岡SUNS 第2Q 0:08 QB西山雄斗 TDパス→ WRドニー・キング(K吉野至キック成功)
[7-0]
福岡SUNS 第2Q 3:44 QB西山 TDパス → WR伊藤嵩人(K吉野キック成功)
[14-0]
福岡SUNS 第2Q 5:50 DB篠崎蓮 パントブロックリターンTD(K吉野キック成功)
[21-0]
福岡SUNS 第2Q10:22 QB西山 TDパス → WR伊藤(K吉野キック成功)
[28-0]
福岡SUNS 第2Q11:11 QB西山 TDパス→ WRキング(K吉野キック成功)
[35-0]
福岡SUNS 第3Q1:57 QB西山 → WR菱岡直貴(K吉野キック成功)
[42-0]
福岡SUNS 第3Q11:20 RB田中耕生(K吉野キック成功)
[49-0]、
電通 第4Q7:54 QB坂梨陽木 パスTD→ TE深澤隆一郎(K廣田祐キック成功)
[49-7]
福岡SUNS 第4Q9:21QB古角知也 → WR菱岡(キック失敗、ホルダーのファンブル)
[55-7]
ディフェンスが奮起、WR伊藤ら九州の大学出身者も活躍
福岡SUNSが快勝した。第2QにエースQB西山からWRキングにTDパスが通って先制、次のドライブでも西山からWR伊藤にTDパスが決まった。さらに、電通のパントをブロックしてリターンTD。一気に流れを引き寄せた。福岡SUNSは、今季5試合中4試合で二桁失点だったが、この試合はディフェンスが奮起、電通オフェンス今季最少の7失点に抑えた。
福岡SUNSは、立命館大で甲子園ボウルを制した長身パサーのQB西山がパスで5TDと大活躍。西南学院大OBのWR伊藤、久留米大OBのWR菱岡が2TDずつを捕球。さらにパントブロックでも、西南学院大OBのDB篠崎がリターンTDを決めるなど、九州の大学出身選手が活躍を見せた。
QB西山は試合後のサイドラインで、チームメートが見守る中、公開のプロポーズ。承諾されて2重の喜びとなる一幕もあった。
電通は、自慢のハイスコアオフェンスがほぼ機能せず。ただ、試合開始直後に、川崎でディアーズが富士フイルムに勝利したために、X1 スーパー昇格の可能性が消滅していた。モチベーションがない中で戦うフットボールの難しさを感じさせる結果となった。
この試合の入場者数は3262人だった。
地方からトップリーグ、成功させ日本のアメフト界を変える…吉野代表
試合後、福岡SUNSは、吉野至・チーム代表兼ヘッドコーチ兼主将と、WR伊藤嵩人、DEのコージ・トクダの3人が記者会見に登場し、喜びを語った。
――昇格おめでとうございます。
吉野:ありがとうございます。
――いま率直にどんな気持ちでしょうか
吉野:最高の環境で、最高の結果を残して嬉しいです。
――今日の試合を振り返っていかがでしょうか。
吉野:本当にディフェンスオフェンス、選手たちが最高のプレーをはじめから続けてくれたので、安心してできた試合でした。最高です。
――創部5年目でX1スーパーまでたどり着きました。改めてチームの強さはどんなところにあるのですか。
選手たちが真剣にアメリカンフットボールに取り組んでくれているということ。アメリカンフットボールが好きだということ。チームを愛してくれているということが、今日みたいなチーム一丸となった試合ができた理由かなと思います。
――この先、X1スーパーという舞台が待っていますが、どんなことを目標にしていきますか。
カテゴリーが変わって対戦相手が変わるのですけど、あまり気負わずに、今まで自分たちが大切にしてきたことを、継続して大切にしながら、さらにやっていきたいと思います。
――福岡という地からX1スーパーへの挑戦、そのあたりをどうお考えですか。
フットボール自体が関東・関西に集中しているスポーツなのですが、こうやって地方からトップリーグに上がって、成功させていくことが、これからの日本のアメリカンフットボール界を変えていくと思っています。他のチームの選手たちの勇気、学生たちの夢につながるような、最高のチームを作っていきたいと思っています。
初戦の敗戦「最後までモチベーションに」…WR伊藤
――続いてWR伊藤選手に伺いがいます。改めて率直にいかがでしょうか。
伊藤:前の試合(富士フイルム戦)は自分のキャッチミスで足を引っ張ってしまったので、今日は取り返す気持ちで第1クォーターからやっていたので、そういった意味で2つTDを取れてチームの勝利に貢献できて、本当に嬉しく思っています。
――TD2つ、見事なパスが決まりましたが、そのあたりいかがでしたか。
伊藤:自分でポジションについた時に、これは自分に飛んでくるなと思ったので、絶対に捕るという気持ちでプレーに臨めたのです。
――改めて今日の試合の勝因はどんなところにあると思いますか。
伊藤:今シーズンが始まって、初戦で(アサヒ)飲料戦に負けてから、そこから逆にその負けがずっと、僕たちの最終戦に向けた気持ちというか、モチベーションを高く保てたところだったと思うので、初戦は負けてしまったのですが、そこはチームにとって重要だったのかなと思います。
――福岡の大学出身で、福岡のチームでX1スーパーに昇格していきますけど、そのあたりはいかがでしょうか。
伊藤:やっぱり、学生時代からずっとお世話になっている(西南学院大監督でもある)吉野さん、(大学の先輩WR)岩永(悠暉)さんとか、たくさんの方と、社会人になってからも、日本一を目指せる環境でアメリカンフットボールができるというのは、すごく幸せなことだなと感じています。
――最後に、次の目標は?
伊藤:本当に日本一になりたいと思っているので、来年は厳しい戦いになると思うのですけど、一戦一戦戦って、日本一を達成したいと思います。
「やっぱり、楽しいすね、フットボール」…コージ・トクダ
――ありがとうございます。最後にコージ・トクダ選手に伺います。率直にどんなお気持ちでしょうか。
トクダ:そうですね、試合もオフェンスもディフェンスも、しっかりいい、自分達のやることをやったので、特に、ディフェンスは、シーズンなかなか課題だったのですが、この試合は活躍するべく人がしっかり結果を出してくれたので、次につながる試合だったなと思います。
――今日はディフェンス陣も踏ん張って、TD1つに抑えこみました。その辺りはいかがですか。
トクダ:そうですね、シーズン、何本か(TDを)取られることがあったのですが、ディフェンスとしてかなり悩んでいた部分があって、そういう意味で言うと今日は、今までの修正点を出せたプレーができたのではないかなと思っています。
――コージ選手自身はどうですか。
トクダ:自分も出し切りましたし、形としてはQBサックとかは取れなかったのですが、ディフェンス全体の、個人的にはいい潤滑油になったのではないかなと思っております。
――試合が終わってから来シーズンはと言うような話もありましたけれど、そのあたりはいかがでしょうか。
トクダ:そうですね、やっぱり、楽しいすね、フットボール。だからなかなか、やめさせてくれないですね(笑)。より、来シーズン、もっと厳しい戦いになると思うので、ちょっとでも、貢献できるように頑張りたいなと言う思いです。
――X1スーパー昇格が1つの目標ということを試合前に話されていましたが、そのあたり、達成された今、改めていかがでしょうか。
トクダ:やったという気持ちもあるのですが、次を見据えるとあまり時間もなくて、より、強い相手になるので、どういうふうにしようかなと今、考えているところです。
――福岡SUNSで、次、どんな目標を描いていますか。
トクダ:もう、どれだけ自分がこのチームに貢献できるかというのと、それ以上に、フットボールを楽しむ、このチームだと、まだまだ、楽しめそうです。
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