米プロフットボール・NFLで、今シーズンのスーパーボウル(第56回、2022年2月13日)が開催されるのはカリフォルニア州ロサンゼルス郡のSoFi(ソーファイ)スタジアムだ。2020年9月オープンの最新鋭スタジアムを本拠地とするのはNFCのラムズと、AFCのチャージャーズ。特にラムズが、今季のスーパーボウル優勝を狙っている。
11月に入ってから、ブロンコスからOLBボン・ミラーをトレードで獲得。ブラウンズをFAになったWRオデル・ベッカム・ジュニアを入団させた。しかし、飽くことないスーパースターの補強とは裏腹に、チームはここへ来て連敗となった。ラムズに何が起きているのか。地区内ライバルの49ERSと対戦した現地11月15日(日本時間16日)の第10週マンデーナイトゲームを振り返った。
サンフランシスコ49ERS○31-10●ロサンゼルス・ラムズ
(2021年11月15日、リーバイススタジアム)
【得点経過】
49ERS 第1Q 残り1:54 TEジョージ・キトル 8ヤードTDパス←QBジミー・ガロポロ (キック成功)
18プレー93ヤード11:03 [0-7]
49ERS 第1Q 残り0:49 FSジミー・ウォード 27ヤードインターセプトリターンTD (キック成功)
[0-14]
ラムズ 第2Q 残り13:16 TEタイラー・ヒグビー 10ヤードTDパス←QBマシュー・スタフォード (キック成功)
7プレー75ヤード2:33 [7-14]
49ERS 第2Q 残り5:24 WRディーボ・サミュエル 8ヤードTDラン(キック成功)
11プレー91ヤード7:52 [7-21]
49ERS 第3Q 残り4:38 Kロビー・グールド 50 ヤードFG
10プレー31ヤード6:14 [7-24]
49ERS 第4Q 残り11:07 WRサミュエル40ヤードTDパス←QBガロポロ (キック成功)
6プレー56ヤード3:53 [7-31]
ラムズ 第4Q 残り3:48 Kマット・ゲイ 37 ヤードFG
7プレー33ヤード1:11 [10-31]
49ERSがWRサミュエルをRBで起用
第1Qで起きたことが、この試合の性格を決定した。ラムズ最初のオフェンスシリーズ、自陣42ヤードからQBスタフォードがロングパスを投じた。しかし落下点にいたのは49ERSのディープを守るFSウォード。しっかりキャッチしてインターセプトしたウォードを突き飛ばすようにタックルしたWRベッカムが、本来のレシーバーだった。
リプレーを見ると、ベッカムは左コーナーを目指して走っていたがパスが来ないのでいったん立ち止まっていた。一方スタフォードが投げたパスはポストだった。どちらかがコースを間違えたのは明らかだった。
インターセプトによって、自陣7ヤードから始まったオフェンスの2ndダウンで、49ERSは仕掛けた。エースWRのディーボ・サミュエルをRBとして起用したのだ。テイルバックの位置からQBガロポロのピッチを受けたサミュエルは左サイドを突いて7ヤードをゲインし、ファーストダウンを奪った。

183センチ97キロで人に強くスピードもあるサミュエルは、過去にもランで起用されたことがあったが、49ERSのカイル・シャナハンHCはこのドライブで、それを繰り返した。サミュエルは3回のランで24ヤードをゲイン、ファーストダウンを2回更新した。サミュエルのランと、TEジョージ・キトルへのパスで49ERSは前進を続けた。ガロポロからエンドゾーン内のキトルにパスがヒットしたのはこのドライブの18プレー目。11分3秒を費やした今季のNFL最長TDドライブとなった。
NFL.comによると、ガロポロはこの先制TDドライブについて、試合後「彼らの魂を奪ったとまでは言いたくないが、何かをしたことは間違いない」と語ったという。
直後のラムズのオフェンス、反則で下がった自陣24ヤードからの3rdダウン11ヤード。QBスタフォードが投げたパスをTEヒグビーが弾いてしまう。バウンドしたボールを捕球したのは、またしてもFSウォードだった。ウォードはエンドゾーンまで走りぬき「ピック6」インターセプトリターンTDとなった。

ラムズは、ほとんど何もできないうちに14点差を付けられたのだった。第2Q1分過ぎに、スタフォードからヒグビーにTDパスが決まってラムズが追い上げるが、49ERSが、再びロングドライブ。91ヤードを11プレー7分52秒かけて進んだ。仕上げのTDを決めたのは、またしてもRBに入ったWRサミュエルのランだった。
前半でRBとして起用されたサミュエルは、後半は本業のWRとして活躍。第3QにはアクロスからラムズのDEを振り切って快走、40ヤードのTDパスキャッチとした。
49ERSのシャナハンHCは、試合を通じて徹底的にランで挑んだ。オフェンスの全64プレーの内、44プレーがランだった。1回平均は3.7ヤードだったが、ランを続けたことによりリズムが良くなった。QBガロポロは、クイックリリースを心掛け、プレッシャーを回避。被サックは1回にとどめた。パス15/19、182ヤード2TDという好パフォーマンスを見せた。ガロポロは対ラムズ戦5戦全勝となった。

49ERSのタイム・オブ・ポゼッションは39分3秒。20分57秒のラムズに大差をつけた。
スタフォード2週連続のピック6はルーキー年以来 ラムズで仕事をしたと胸を張れるレシーバーは11キャッチ122ヤードのクーパー・カップだけかもしれない。ベッカムは3回のターゲットで2回キャッチ、18ヤードだったが、捕れなかった1回の代償が大きすぎた。TEヒグビーも、TDパスキャッチ1回では取り返せない大きなミス。他にも落球があった。

ディフェンスでは、この試合から足を痛めていたOLBミラーが出場したが、前述したように、この日のガロポロはスナップ後、平均2.3秒でパスを投げるクイックリリースだったので、見せ場を作ることはできなかった。
ラムズのスタフォードは先週のタイタンズ戦に続いて2週連続の「ピック6」。これはルーキーの2009年12~13週に記録して以来だという。

「この2週間は、我々が本来の姿で無かったことを受け入れざるを得ない」と語ったラムズのショーン・マクベイHC。ラムズは次週がバイウィークだが、ここでどう立て直すかが、今季のNFCの行方を左右するかもしれない。バイウィーク明けでラムズが対戦するのは、グリーンベイ・パッカーズだからだ。