14日、東京・両国国技館のダブル世界タイトルマッチの前座8回戦に、2人のホープが登場。元K-1世界王者・武居由樹(25歳=大橋)は55.0kg契約戦で今村和寛(29歳=本田フィットネス)を初回わずか59秒でTKO。松本圭佑(22歳=大橋)は58.5kg契約戦で元日本ランカーの荒木貴裕(34歳=JB SPORTS)を5回56秒TKOに下した。
写真_菊田義久
恐ろしい威力を秘めたパンチングパワーだ。ともにサウスポースタイル。今村は独特のタイミングを持つ連打と、粘り強いボクシングが身上の、アマチュアキャリアも豊富なやりづらい選手。だが、武居はまたしてもあっという間にキャンバスに沈めてしまったのだ。
「前に出てくる選手なので、それに対応しようと思った」という武居に対し、今村は右のリードをボディに送りながら、距離を詰めようとする。だが、前の手を上下に動かしながらタイミングを計り合う駆け引きから、飛びかかるようにして放った武居の右フックが今村の左顔面を捉える。そして、スッと距離が縮まったところで、右フック、右アッパーでガツンガツンと打ち抜くと、さらに左をフォロー。キャンバスに崩れ落ちた今村は、立ち上がろうとしたものの、ダメージが深く、ロープに倒れ込んだ。レフェリーはもちろんカウントを止めて試合を終えた。
「何で倒したか憶えてません」と照れた武居は、「今日は前の試合で判定勝負が多かったので、雰囲気的に倒そうと思いました」という“プロフェッショナル”思考。八重樫東トレーナーには「(練習してきた)『ワンツーを使おう』と言われてましたが右だけでしたね」と苦笑した。9月の前戦も強打者・竹田梓(高崎)を右フック一撃で沈めたが、このブローは特にタイミングをつかむのも早く、当て勘の優れ方が飛び抜けている。「(倒されたパンチは)一瞬だったけど、決して偶然ではない。すごい実力差。いろいろな格闘家の中でも、武居選手は雲の上の存在です」と今村も脱帽の強さだ。
すっかり速攻劇が板についた武居。長いラウンドも試したいが、強すぎるから…… これでプロボクシングに転向した今年は3連続初回KO勝利の武居。力任せになぎ倒すパンチャーではなく、絶妙な距離感とタイミング、ジャストミートさせる能力を備える“必然の倒し屋”。対戦相手探しに苦労しそうだ。
今村の戦績は4戦2勝(1KO)1敗1分。
松本が左フックを決めて荒木のバランスを崩させる U-15優勝など、早くから“ミライモンスター”として注目されてきた松本は、昨年8月のプロデビューから今年5月までの3戦をすべてKOで仕留めてきたが、この3試合すべてで相手の渾身の一撃を食ってひやりとさせるシーンを築いてしまった。
だからこの日は、より丁寧に、距離をキープして動く意識が強かったように思う。元日本ランカーの意地がある荒木も、松本のストレート攻撃が止むと、荒々しく左右を振って脅かそうとする。松本も時折このパンチを食ったものの、見えていて反応し、決して深くはもらわなかった。
5回、荒木の左フックからの右ショートアッパーがヒットする。だが、松本は連打をさせずにスッと体を入れ替えると、斜めにバックステップした荒木に、強い踏み込みからのワンツー。この2発目の右ストレートが荒木の顔面をものの見事に捉えると、34歳はキャンバスに大の字になった。
右ストレートをガツンと決めた松本。荒木はバッタリと大の字になった これで4戦4勝(4KO)の松本。ようやく安定したボクシングを披露し、プロ最長ラウンドを難なくクリアした。敗れた荒木は21戦12勝(4KO)11敗。
文_本間 暁