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2020-08-24

【ボクシング】“ミライモンスター”中垣&松本がKOデビュー

大橋ジムから、注目のホープ、松本圭佑(21歳)と中垣龍汰朗(20歳)がプロデビュー。24日、東京・後楽園ホールで松本は20戦(9勝1KO9敗2分)のキャリアを持つ三宅寛典(31歳=ビッグアーム)と56.0kg契約6回戦。中垣は10戦(3勝2KO5敗2分)の堀井翔平(29歳=トコナメ)とスーパーフライ級6回戦。松本は4回34秒、中垣は2回2分2秒でいずれもTKO勝利を飾った。

上写真=“ミライモンスター”として期待される松本(左写真左)と中垣(右写真右)

格闘経験豊富な中垣は、見事な駆け引きを披露

左ストレートでダウンを奪った中垣。堀井の体は吹っ飛んだ

 とてもデビュー戦とは思えない落ち着きぶりだった。決して派手に動くボディワークなどはない。軽快なフットワークを使うでもない。が、中垣はスルスルッとすり足で絶妙な間合いをキープすると、右を上下動させる“遊び”を入れながら、プロ10戦のキャリアを持つ堀井を幻惑し、シャープで深い左ストレートをボディに突き刺していった。

 この中垣の左ストレートに、堀井は右を合わせる狙い。だが、中垣は左を打ち終わると、スッと元の位置にバランスを戻し、堀井の右リターンも織り込み済み。これを難なくかわすと右フックをカウンター。あるいは堀井の右をかわしざま、左ボディアッパーをカウンターで突き刺した。

「ゆったりしたリズムとテンポの速いリズム」。これの融合をテーマに掲げ、戸惑う時期もあった。が、左右のアッパーカットを対角にゆったりと打ちながら“エサ”を撒き、一転して速い左ストレートを突き刺すなど、堂々たる駆け引きも披露する。まだまだ線の細さは感じさせるが、駆け引きを使いこなすあたり、長いラウンドを戦わねばならぬ意味でも“プロ向き”なのかもしれない。

 2ラウンド、ニュートラルコーナーに堀井を詰めながら、スッと間合いを取るあたりは、3歳から空手を習い始めた格闘経験の嗅覚か。リング中央に戦いの場を引き戻すと、左ストレートを決めてダウンを奪い、立ち上がった堀井に左ボディアッパー。さらに左ストレートを顔面に見舞ってヒザを揺らさせ、レフェリーストップに持ち込んだ。
「距離感については徹底していたので。ホッとしました」と傷ひとつない笑顔の中垣に、大橋秀行会長も「無駄なパンチをもらわず、自分のボクシングをできた」と合格点を与えた。【本間 暁】

いきなりのダウンを挽回。松本圭佑もTKO勝ち

徐々に右ストレートをハードヒットしていった松本圭佑。いきなりびっくりの幕開けだったが、落ち着きを取り戻すあたりはさすが

「リングの上で効いたことも、倒れたこともない」。そんな松本圭佑の56kg契約の初陣。いきなりプロの洗礼を浴びせかけられた。開始から30秒が過ぎたころだ。三宅のワイルドライトを浴びて、ダウンを喫してしまう。「効いた? そうでしょうね。気がついたら体が傾いていました」。
 ただし、そこから本領を発揮し始める。175cmの長身から、長いレフトを突き刺していく。ジャブ、そしてフックも交えて。タイミングが実にいい。三宅の頭が何度も跳ね上がる。最初はやや置きにいくような感じだった右のパンチも、自分の距離を管理することで、次第に鋭く打ち抜けるようになっていった。

 3ラウンド、強烈な左ボディを決めて、いよいよ一方的な展開に。そして4ラウンド、ここまでストップ負けのない三宅もボディが効いて立ち往生。松本が打ち下ろしの右クロスを決めた後で、レフェリーがストップをかけた。

 立ち上がりに気負いや緊張感が見えたのも仕方ない。トレーナーで父の好二さんは世界王座3度挑戦の大ボクサー。小学校時代から大橋ジムに通い始めると、当然のように注目を浴びた。指導者としての父の信用もかかっている。それにジムには井上尚弥もいる。なおかつ、前の試合では東京農業大学の同級で同じく大橋ジムからデビューした中垣が、会心の勝ちっぷりだ。さらに、いきなり経験した生まれて初めてのノックダウン。そこから平気の平左で立ち直った松本は頼もしい。
「自分が倒されたんで、倒し返して勝ちたかったですね」
 さらりと見せる負けん気も、きっとこの21歳の可能性を押し広げていくだろう。
「強くなって『世界チャンピオンになる』と言えるようなボクサーになりたいですね」
 息つく間もない強気のコメントに、期待感はどんどん膨らんでいく。【宮崎正博】

厳しいペース争い。松本亮が何とか抜け出す

松本亮の右ストレートが水野の顔面を捉えるが、ダメージングブローには至らず

 2018年の世界挑戦で完敗を喫して以来、厳しいキャリアが続く、日本スーパーバンタム級3位、松本亮(26歳=大橋)は、この日も苦しい立ち上がり。持ち味の懐の奥行きを使い切れず、水野拓哉(25歳=松田)の右をヒットされる。ようやく、流れが決定的に変わるのは5ラウンド。長身パンチャー、松本の右がようやく当たり始める。水野も左ボディショットから切り返すが、ラウンド終了直前、左フックを当ててダウンを奪った。その後は松本の角度のある右が光る。7ラウンドから再びピッチを上げてきた水野に打ち勝って、小差の判定(77対74、77対75、77対75)を勝ち取った。

 この日も盤石とは言いがたい松本だったが、ひとつひとつ勝ち星を確実に拾っていけば、かつて見せた微妙に間合いを違える術もきっと思い出すはず。まだ、26歳。今どきのボクシングでは、中堅にまでも届いていない。
 松本の戦績は27戦24勝(21KO)3敗。水野の戦績は21戦17勝(14KO)3敗1分。
                                  【宮崎正博】

写真_馬場高志

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