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2021-12-21

【箱根駅伝の一番星】専大・髙瀨桂が箱根予選会の走りを自信に「自分が納得できる走りをしたい」

箱根予選会で2時間2分台をマークし、10位に入った髙瀨(写真/桜井ひとし)

陸マガの箱根駅伝2022カウントダウン企画「箱根駅伝の一番星」は出場20校の注目選手を紹介。2年連続70回目の出場となる専修大。箱根予選会では日本人3番手の10位に入った髙瀨桂(3年)を中心に9位で本戦に駒を進めた。今季は、主力の成長はもちろん、専大初の留学生ランナー、ダンカン・キサイサ(1年)も迎え、勢いに乗る。髙瀨は前回大会の反省を生かし、区間一ケタを狙う。

生かされた3つの“立川の反省”

  予選会日本人3位、総合でも10位という好成績に、髙瀨桂(専大3年)自身「ビックリしています。目標は総合30位以内でしたから」と驚きを隠さない。前年の予選会は61位。本戦の1区は直前に左足甲を痛めた影響もあったが、区間19位だった選手である。

 今回は、3つの “立川の反省” が生かされた。

 1つは前年予選会のオーバーペースだ。練習の走りが良かったこともあり、三浦龍司(順大1年、現・2年)らと同じ集団で走ったが、10km付近から後退した。
「力に合わない集団で走ったせいで、中盤からずるずる下がってしまいました。その反省を生かして、今年は余裕を持てる集団につきました」
 今年は10kmで鈴木聖人(明大4年、10000m28分09秒24)や吉居大和(中大2年、5000m13分25秒87)の集団の15秒後方を走っていたが、その集団は15kmまでを15分07~08秒にペースダウン。髙瀨、栗原啓吾(中央学大4年、10000m28分03秒39)、加藤大誠(明大3年)らは14分54秒とイーブンペースで走り続け、15kmまでに鈴木たちの集団に追いついた。20km通過は59分31秒の栗原が日本人トップに立っていたが、59分40秒の髙瀨まで20人弱の大混戦となっていた。髙瀨は最後、栗原を3秒差まで追い上げてフィニッシュした。

 2つめの反省はレース中の位置取りである。髙瀨は予選会と同じ立川のコースで行われた3月の日本学生ハーフマラソン選手権に出場したが、1時間05分30秒(44位)とタイムを大きく落とした。
「中盤から1人で走ることになってしまい、向かい風をもろに受けてしまいました。集団の外に自然に出て走るタイプですが、予選会では集団の中にしっかり入って風を受けないように走りました」

 3つめの反省はシューズの選択だった。
「昨年の予選会で履いたシューズはカーボンにエアポッドが追加されたタイプで、前に進む力は大きいのですが、制御する力を使うので後半まで脚が持ちませんでした。今年は予選会の少し前にエアポッドがないタイプで走る決断をしました。ソールの硬さに対して自分の感覚が良くなって、後半まで脚が持ちました」

 3つの反省を生かした髙瀨は、最後の1.0975kmを優勝したワンジル・チャールズカマウ(武蔵野学院大2年)と同じ3分09秒、参加選手中最速タイムで走りきった。カマウは11月に10000mの学生新記録(27分18秒89)を出す選手である。

故障中の取り組みが変わり、練習量も増加

  しかし今シーズンの髙瀨は、すべてが順調だったわけではない。4月後半に左の股関節を痛め、約2カ月、チームとは別の練習を強いられた。
 だが今季の専大は前年までと違い、故障者の練習も故障者任せにするのでなく、状態をチームスタッフが共有した。

 長谷川淳監督は「トレーナーからのアドバイスや、フィジカルのエクササイズの反応などをスタッフ全員が共有し、以前にも増して故障者の現状を把握しました。故障からどういう立ち上げ方、トレーニングをしていくか、シューズの選択も含めて話し合い、解決に導きやすい環境をつくったんです。そこから髙瀨自身がヒントを感じて、その後の成績や故障予防につながっていると思います」と話す。

 髙瀨は8月中盤にチームの練習に合流すると、「普段のジョグの距離を踏むことを意識した」という。「朝練の前に少し走ったり、今までやっていたジョグも伸ばしました。時間にすれば1日20分程度ですが、1カ月で150kmは増やせました」

 髙瀨が3つの反省を生かせたのは、トレーニングやコンディショニング面での裏付けもできていたからだった。

どの区間でも区間一ケタ順位を目標に

 髙瀨のトラック種目の自己記録は5000mが14分17秒84、10000mが29分45秒82とかなり低い。専大チーム全体が記録会に積極的に出場していないことが一番の理由だが、髙瀨にスピードがないかといえば、そうとも言い切れない。

 それを示す例が3月にあった。1500mで3分46秒92と、箱根駅伝出場選手としては上位に位置するタイムで走ったのだ。その1500mは日本学生ハーフの9日後で、「1500mに対しての練習はしていなかった」という。ハーフで力を出し切れなかったのかもしれないが、「1500mとハーフを近いフォーム」で走ることができたと髙瀨は感じている。これは20kmの距離を走るとき、大きな武器となる部分ではないだろうか。

 長谷川監督は「Aチームの練習でも、髙瀨はいっぱいの状態にはなりません。練習でスピードを出すわけではありませんが、かなりの余裕を残して練習を消化することが、試合でスピードを発揮できる要因の1つでしょう」と分析する。
 実際に予選会の髙瀨は、トラックのタイムで大差のある前述のメンバーと、勝負どころで競り合うことができた。

 本戦では3区を希望しているが、前回に続いて1区の可能性もある。いずれにしても、スピードが求められる区間に起用されるのは間違いない。
「予選会の走りで自信を持つことができました。どの区間でも区間一ケタ順位を目標に、自分が納得できる走りをしたいです」(髙瀨)

 前回は甲の痛みの影響で「箱根駅伝前の一番大事な練習を2つ外してしまった」ことが1区区間19位という結果になった。今年の専大は直前の調整期間の練習も、チーム全体で前回の反省を生かそうとしている。

 今年の専大と髙瀨ならば、前回のような失敗をすることはない。区間一ケタ順位ではなく、区間上位も期待できそうだ。

髙瀨は2回目の箱根駅伝で区間一ケタを狙う(写真/長岡洋幸)

たかせ・けい◎2001年3月10日、福岡県生まれ。170cm・55kg、A型。学業院中・福岡→鳥栖工高・佐賀。前回大会で大学駅伝デビュー。1区19位でタスキをつないだ。今季は、箱根予選会でチームトップの10位、2時間02分49秒の日本人3番手で予選通過に貢献した。自己ベストは、5000m14分17秒84(2020年)、10000m29分45秒82(19年)、ハーフ1時間02分49秒(21年)。

文/寺田辰朗 写真/桜井ひとし、長岡洋幸

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