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2021-12-16

【ボクシング】力石政法が元OPBF王者ガスカを4回終了ストップ/元WBA王者・宮崎が5年ぶり復帰

本人は不満の勝利だったが、力石は細かいテクニックを随所に披露した

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16日、メルパルク大阪で行われた63.0kg契約8回戦は、日本スーパーフェザー級6位・力石政法(りきいし・まさのり、27歳=緑)が、元OPBF東洋太平洋スーパーバンタム級王者ロリ・ガスカ(32歳=陽光アダチ)を4回終了棄権によるTKO。またセミファイナルでは、元WBA世界ミニマム級王者・宮崎亮(33歳=3150ファイトクラブ)が5年ぶりにリング復帰。51.5kg契約6回戦で寺次孝有希(てらじ・たかゆき、30歳=ミサイル工藤)を3回2分11秒TKOに下した。

写真_早浪章弘

 力石の相手は当初、フィリピン・ライト級王者で、かつて現IBF世界スーパーフェザー級王者・尾川堅一(帝拳)とも対戦した(10回判定負け)サウスポーのロルダン・アルデア(フィリピン)と予定されていた。が、新型コロナウイルスのオミクロン株対策により、日本政府が外国人の入国を禁止。6日前の10日に、対戦相手はガスカに変更されたもの。
 サウスポーからオーソドックスの選手に代わったものの、相手によって左右のスタイルを変える“スイッチボクサー”の力石は、まったく問題がなかった。

 初回こそ、ほとんど手を出さずにタイミング等を計ったサウスポー構えの力石は、2回に入ると、右スイングとともに飛び込んでくるガスカに左ボディアッパーをカウンタ―。ガスカの右ダブルには左を合わせるなど計測は順調。ラウンド終了間際には、一転して右フック、右、左という速いコンビネーションを繰り出した。
 3回、迫力ある前進から左右フックを振るうガスカに、左右ショートのボディアッパーを刺した力石は、タイミングを変えながら右から左ストレート、さらに右フックを放ってダウンを奪い、続く4回には勝負をかけてきたガスカをいなしながら、右ショートフック、左と決めていった。
 終了後のインターバルで、ガスカのコーナーから棄権の申し出があり試合終了。

兄・矢吹(右)とともに入場する力石。兄弟同時チャンピオンを目指している
兄・矢吹(右)とともに入場する力石。兄弟同時チャンピオンを目指している

「ガスカはくねくねして当てづらく、勝負は微妙。倒し切れなかったのは実力不足。2、30点」と浮かない表情で厳しい自己評価を下した力石だが、ガスカのパワーパンチをしっかりと腕で防ぎ、一見すると地味だが効果抜群のショートカウンターを突き刺しまくったことで、ガスカの攻め手をすべて封じた。
 同じスイッチヒッターで、パウンドフォーパウンド上位につけるWBO世界ウェルター級王者テレンス・クロフォード(アメリカ)を敬愛する力石だが、そのクロフォードも倒しっぷりは派手だが、隠れたテクニックをたくさん備えている。その影響は伝わってきた。

 兄・矢吹正道がWBC世界ライトフライ級王者となり、力石も大いに刺激を受けている。タイトルへの渇望も強い。「日本ランキングが僕より上で、僕より強い選手はいないと思う。僕と戦う気のある選手はジムまで連絡ください!」と呼びかけた。11戦10勝(6KO)1敗。
 敗れたガスカは36戦26勝(9KO)9敗1分。

宮崎のフィニッシュブロー。じっくりとシャープに攻めていたが、ピッチを一気に上げて決めた
宮崎のフィニッシュブロー。じっくりとシャープに攻めていたが、ピッチを一気に上げて決めた

 2016年8月、2階級制覇を狙ってWBAライトフライ級王者・田口良一(ワタナベ)に挑んだものの判定負け。この試合を最後にリングから離れ、不祥事も起こしてライセンス停止となっていた宮崎は、リングに帰ってきた喜びを表すように躍動した。
 懐かしい小刻みなバックステップ。ドキッとするようなタイミングで放つ左フック。長期ブランク明けということでJBC(日本ボクシングコミッション)の許可が下りず、6回戦からの再スタートとなり、実力差明白の寺次との戦いとなったから、そこを差し引かねばならないのだろうが、“錆び”は微塵も感じられなかった。
 2回に入ると、ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)のような大胆なサイド移動を連発し、フロイド・メイウェザー(アメリカ)ばりのL字ガードとスウェーバックで寺次の攻撃を完封。感触を確かめるように、軽いコンビネーションを空いたところへと突き刺していく。
 そして3回。“ウォーミングアップは終了”とばかりに、強いステップインから左フック、右ストレート。ドッと倒れ込んだ寺次に、レフェリーは試合終了を宣告した。

長男・慶次くんを抱っこしながら喜びを表す宮崎
長男・慶次くんを抱っこしながら喜びを表す宮崎。もうすぐ3人目のお子さんが誕生するのだという

「デビュー戦のような気持ちで、いろいろ試しながら楽しめました。来年は何らかのタイトルに絡みたい」と清々しい表情で語った宮崎。ライトフライ級、フライ級でのチャンスを探っていくという。30戦25勝 (16KO)2敗3分。敗れた寺次は9勝(4KO)20敗1分。

懐かしい動きを披露した西島さん(左)
懐かしい動きを披露した西島さん(左)。かつては“地下足袋”でも話題を呼んだが、この日はしっかりとシューズを履いていた

 メインイベント終了後、元OPBF東洋太平洋クルーザー級王者の西島洋介さん(リングネーム:西島洋介山=ようすけざん、48歳)と、3150ファイトクラブから世界ヘビー級を目指す但馬ミツロ(27歳)によるエキシビションマッチ3分4ラウンドが行われた。

 両者12オンスグローブを着けてのノーヘッドギア。シャツを着て臨んだアマチュア5冠の但馬は、ボディを完全にさらして西島さんに打たせてもケロリ。ボクシングは17年ぶりという西島さんだったが、ボディからアッパーを返すなど往年の動きもちらりと見せた。
 2ラウンド、西島さんをロープに詰めた但馬は、左右の連打から右を決めてカウントを聞かせると、今度は自分がロープを背負い、西島さんを呼び込んでから左ボディブローを2発。レフェリーを務めた戎岡彰さんがナイスタイミングで戦いを止めた。もちろん、かなり手を抜いての但馬のパフォーマンスだったが、ショートカウンターのタイミングをあっという間につかんで披露するあたり、やはりただならぬ才能を持っていると感じた。

テンカウントゴングで見送られた
テンカウントゴングで見送られた

 海外での未公認試合出場により、ライセンスを剥奪されて、他の格闘技にも出場していた西島さんは、「最後はボクシングで終えたかった。これで悔いなく終えられます。但馬くんのパワーをものすごく感じて、これが限界と思った」とすっきりした表情で、重量級の後輩にエールを贈った。

文_本間 暁(ABEMA視聴)

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