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2021-12-27

【箱根駅伝の一番星】「往路ならどこでも」早稲田大学・中谷雄飛が強い責任感を持って総合優勝へ挑む

出雲2回、全日本4回、箱根3回と経験豊富な中谷。主軸としてチームを優勝へ導く走りを見せる(写真/田中慎一郎)

陸マガの箱根駅伝2022カウントダウン企画「箱根駅伝の一番星」は出場20校の注目選手を紹介。46年連続91回目の出場となる早稲田大の主軸の一人が、中谷雄飛(4年)だ。今季は三冠を掲げた出雲駅伝、全日本大学駅伝で共に6位。大学駅伝ラストランを総合優勝で飾るべく、エースの一角としての責任感を持って、箱根路に挑む。

チームとしても、個人としても、良い形で終わりたい

 “高速化”が進めども、10000m27分台という記録は、学生ランナーにとってやはり特別な記録だ。日本人学生の27分台ランナーは歴代でも20人しかいないのだから、学生トップランナーの証と言っていい。

 中谷雄飛(4年)もその一人。
 前回の箱根駅伝の約1カ月前、日本選手権で27分台ランナーの仲間入りを果たし、箱根路ではその実力を示すつもりだった。

「27分台を出したのもあって、もうちょっといけるだろうと思いましたけど、ちょっと中途半端になっちゃいました。日本選手権を走ってから調子もそこまで上がらなくて、物足りない感じになりました」

 3区区間6位。並の選手であれば、上々の出来ともいえる。
 だが、中谷は27分台ランナーなのだ。また、全日本大学駅伝では、3区でライバル校のエース格を破って区間賞を獲得しており、周囲から求められるものも高い。2つ順位を上げたものの、中谷自身にとっても当然「不完全燃焼」の走りだった。
 そんな悔しさが今季の出発点だ。

 中谷に今度の箱根駅伝の希望区間を聞くと、「往路ならどこでも」と言う。そこには、特殊区間の5区や、エース区間の2区も含まれている。

「2区で勝負するのも面白いんじゃないかなっていう気持ちになっています」

 中谷がここまではっきりと2区に対して前向きな言葉を口にするのは、この4年間で今季が初めてのことだ。

「やっぱりチームに対する責任感があるのでしょう。出雲では千明が欠場。全日本では太田も不在で、4年生として責任を取らないといけないっていう気持ちがあったようです。夏合宿ぐらいから『出雲はアンカーが重要だ』とずっと言っていたんですが、中谷はすぐ名乗りを上げてくれましたし、全日本もチーム事情から3区になりましたが、『(距離の長い)7区、8区を行きます』と中谷のほうから言ってきてくれました」
 相楽豊駅伝監督も、中谷の責任感の強さを感じ取っている。

 また、山上りがチームの課題であることを重々承知しているからこそ、中谷は、2区だけでなく、5区をも辞さない覚悟だ。
「チームが勝てるならば、山(5区)と言われたら、山に行くつもりでいます。やれることを全力でやるべきかなと思っています。それは、どの区間でも同じことですけど」
 最上級生としての責任、そして、臙脂のエースとしての自覚が中谷を突き動かす。
 最後の箱根は、満を持してエース区間で勝負する中谷が見てみたいが、山を駆け上がる中谷も捨てがたい。

 いずれにせよ、タフなコース。それでも「僕はもともと高校時代からクロカンが好きだったので、上りはそんなに気になりません」と頼もしいことを口にする。
 同級生には、千明龍之佑、太田直希、半澤黎斗といった力のある選手がそろい、入学時から最終学年での“大学駅伝三冠”を目標に掲げてきた。
 出雲、全日本ともに6位に終わり、残念ながらその目標は果たせなかったが、最後の箱根駅伝は勝ちに行くつもりだ。

「箱根では、これまであまり良い思いをしていませんが、チームとしても、個人としても、良い形で終わりたいですね」


全日本では4年連続3区を担った中谷。今年は区間4位。昨年は自身初の区間賞も獲得している。(写真/中野英聡)

なかや・ゆうひ◎1999年6月11日、長野県生まれ。下諏訪中→佐久長聖高(共に長野)。169㎝・55㎏、O型。2017年に全国高校駅伝で1区を務め優勝。大学進学後は、1年時からチームが出場を果たした駅伝にはすべて出走しており、区間6位以内と高い安定感を持つ。昨年は全日本で自身初の区間賞を獲得し、12月の日本選手権長距離では10000mに出場し27分台をマークした。自己ベストは、5000m13分39秒21、10000m27分54秒06(共に2020年)、ハーフ1時間03分31秒(21年)。

文/和田悟志 写真/田中慎一郎、中野英聡

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