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2021-12-29

【箱根駅伝2022展望】5区区間記録保持者の東洋大学・宮下隼人が挑む最後の箱根路「区間記録を更新しなくてはいけない」

最後の箱根に向けひたむきに準備を進めてきた宮下

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「鉄紺」東洋大学が箱根駅伝に向け、チーム全体で調子を上げてきている。その原動力となってきたのが今季主将を務める宮下隼人(4年)だ。シーズン前半は出遅れ、11月の全日本大学駅伝では14年ぶりのシード権を失い、涙したが、その後は決意を固め、練習に打ち込んできた。その気迫ある姿を3年連続、そして最後の5区で。

4時から朝練習開始、箱根への気迫示す

前回3位の東洋大は、主将の宮下隼人(4年)が3度目の5区に挑む。箱根駅伝初出場だった2年時には、1時間10分25秒の区間記録を樹立。前回は10km過ぎから脚に力が入らなくなるアクシデントがあったなか、区間3位でまとめた。このレースで痛めた右脛骨の故障が長引き、今シーズン前半は大会に出場できず、練習も十分に積めなかった。秋には学生三大駅伝初戦の出雲を回避し、全日本大学駅伝から出場。7割程度の状態で3年連続の8区に臨み、区間6位でまとめたが、「最低限の走りだった」と振り返る。

何より、チームが14年ぶりにシード権を逃したことが重くのしかかった。「今まで伝統をつないできてくださった先輩方、そして来年、選考会を走ることになってしまった下級生たちに申し訳ない気持ちで、すごくショックでした」と、フィニッシュ後には悔し涙を流した。一時はチームが暗い雰囲気になりかけたというが、宮下は「もう箱根しかない。最後は後輩たちに思いをつなごう」と決意し、前を向いた。

宮下がまず行動したのは、誰よりも早く朝練習を始めること。「有終の美を飾るためには練習しかない、練習時間を捻出するには朝しかない」と、早朝4時から黙々と練習を開始する主将の姿を見て、ほかの選手たちも1人、またひとりと、全体練習開始前にグラウンドに出るようになった。酒井俊幸監督は、「全日本のときとは別チームのようになってきました」と変化を感じ取っている。主将の気迫がチーム全体を突き動かしたのだ。

区間記録更新で、10年前の再現を

2月中旬に酒井監督から主将就任を打診されたとき、宮下は即答しなかったという。1年時から学年主任を務めてきた同期の蝦夷森章太が、4年目でリーダー交代になったらどう思うか、まずは仲間の気持ちを慮った。同学年のマネジャーや後輩の前田義弘(3年)らに相談するなど、約1カ月間、考えた末に引き受けることに決めたのだが、最終的に決断した理由の1つに柏原竜二の存在があった。

東洋大OBで、2009年の第85回大会から4年連続5区の区間賞を獲得した柏原に、宮下は憧れを抱いてきた。だから主将就任後は、柏原のように背中で引っ張る“闘将”を目指してきたが、「3年生の前田や児玉(悠輔)に負担をかけてしまった」と、思うように走れずもどかしい日々が続いた。全日本大学駅伝の後も、「僕はまだ結果を出していないし、柏原さんのようなキャプテンにはなっていません」と話していたほどだ。しかし、全日本での悔し涙から這い上がり、自らの行動で、背中で範を示す今の宮下の姿は、かつての柏原と重なる。

11月以降は箱根駅伝に向けて山上りの対策を組み込み、徐々に調子が上がってきたといい、「区間記録を更新しなくてはいけないと思っています」と力強く決意を語った。主将として自身の走りで往路優勝に導くことが、チームの目標である総合3位以内につながると確信している。

主将だった柏原が5区で2年時の区間記録を塗り替え、東洋大が歴史的大勝を飾った第88回大会から10年。同年に初めて掲げた「その1秒をけずりだせ」のチームスローガンについて今季あらためて、誕生した背景や意味を酒井監督から現役部員に伝える機会を設け、先輩たちから紡いできた伝統や思いを共有した。

柏原の雄姿を見て5区を志し、導かれるように東洋大に入学した宮下が、同じように主将となって2年時の区間記録に挑む98回目の箱根駅伝。攻めの走りで見る者の心を打った10年前の再現なるか。

みやした・はやと◎1999年10月15日、山梨県生まれ。174cm・62kg、AB型。明見中→富士川口湖高(山梨)。大学入学後は2年時より頭角を現し、関東インカレハーフマラソンで日本人トップの2位、出雲駅伝(4区4位)で学生駅伝デビューを果たした。以降、全日本大学駅伝では3年連続8区で8、4、6位。箱根駅伝では過去2年連続5区を務め2年時には区間賞&区間新、前回大会は区間3位の走りを見せた。今季は主将として、チームをけん引してきた。自己ベストは5000m14分04秒20(2020年)、10000m28分37秒36(20年)、ハーフ1時間04分59秒(19年)。

文/石井安里 写真/川口洋邦

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