8日、東京・後楽園ホールで開催されたフライ級8回戦は、日本フライ級12位の桑原拓(26歳=大橋)が久野喬(29歳=スターロード)を1回32秒TKOで下し、再起戦を見事な勝利で飾った。文_杉園昌之 写真_小河原友信
昨年7月、日本フライ級王者ユーリ阿久井政悟(倉敷子安)に挑んで敗れた桑原は、8ヵ月ぶりのリングで復活を大きくアピールした。開始のゴングから軽快な動きで相手を翻弄し、狙っていた鋭い左フックをテンプルへ。久野の目が飛んだことを確認し、ロープに詰めて、すかさずラッシュ。ダメージが色濃く見える相手を容赦なく攻め立てて、あっという間に試合を終わらせた。
細かい連打でフィニッシュ 秒殺KO劇に後楽園ホールがざわつくなか、リング上では笑顔でマイクを握った。「こんなに早く終わらせるつもりはなかったです。想定外でした」。本人も驚く早期決着だった。
リングに上がるまでは、前回TKO負けしたシーンが頭からなかなか消えず、心の奥底に恐怖心があったという。東農大出身のホープとして期待され、8戦全勝で臨んだ日本タイトルマッチ。初黒星のショックは、想像に難くない。
あれから8ヵ月。自らのボクシングを見つめ直し、再出発したばかりだ。練習を積み重ねて、成長した部分もある。ただ、本番の試合で確認したいことは、時間が短すぎてほとんどチェックできなかった。まずは肩慣らしと言ったところか。大橋秀行会長は「パワーがついた」と褒めながらも、地に足をつけてキャリアを重ねていくことを促していた。「持ち味を忘れてはいけない」。得意のスピードを生かしながら、パワーアップしたパンチをいかに繰り出していくのか。次は日本フライ級のトップ戦線で見てみたい。
再起戦で完勝した桑原の戦績は10戦9勝(5KO)1敗。敗れた久野の戦績は13戦6勝(3KO)6敗1分。
見事な戦いぶりを見せた津川(右) 前座で行われた日本ユース・スーパーバンタム級タイトルマッチ8回戦は、2019年度全日本新人王で日本同級17位の津川龍也(21歳=ミツキ)が、ユース王者で日本同級23位の石川春樹(22歳=RK蒲田)を7回2分44秒TKOで下し、ベルトを獲得した。
姿勢もバランスも良いフォームの津川は、ストレート系ブローがよく伸びる。左ジャブ、右ストレートで崩された石川が、強引に距離を縮めようとすると右ショートカウンターを合わせるなど、リードを広げた。悠然と石川の動きを見据える津川に対し、石川の心の余裕は目減りしていき、ダメージも蓄積された。7回、津川の右が決まると、石川のセコンドがタオルを投入し、試合が終わった。
津川の戦績は10戦9勝(5KO)1敗。石川の戦績は13戦9勝(7KO)4敗。この日リングサイドで観戦していた井上尚弥が、津川の戦いぶりを讃え、「スパーリングパートナーで呼んでください」と大橋秀行会長に懇願してきたという。
文_本間 暁 写真_小河原友信