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2022-04-21

【ボクシング】「男子としてリング復帰したい」──元WBC女子王者・真道ゴーが正式に表明

会見に臨んだ真道(中央)と本石会長(左)、谷川直人・弁護士 ※写真はオンラインより

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 男子としてプロボクサー復帰を目指してきた元WBC女子世界フライ級王者・真道ゴー(34歳=グリーンツダ)が21日、所属ジムで会見。同席した本石昌也会長とともに、正式表明を行った。真道は5月のプロテスト受験、男子としてのライセンス再交付、年内のリング復帰を求めている。

文_本間 暁 写真_BBM

 2016年6月に、2階級制覇を狙ってWBO女子バンタム級王者(当時)・藤岡奈穂子(竹原慎二&畑山隆則)に挑み、0-3判定で敗れた真道は、この試合を最後に、いったんはボクサー生活に別れを告げた。翌2017年7月に、性別適合手術を受け、同時に戸籍も変更して正式に男性となり、パートナーと結婚。同年10月に引退会見を行ったが、その席上でも「男子としての復帰」を語っていたものだ。

 その後、双子を含む3児の父となった真道は、和歌山市内で障がいのある子どもたちを支援する施設等の経営に励みながら家族を支えてきたが、「やはりボクシングでやり残した想いがあった」と、くすぶる胸の内を明かした。その気持ちは、性同一性障害に悩みながら、女性としてリングに立っていたときからのものでもあった。

レナタ・セベレディ(ハンガリー)を3-0フルマークで破り、世界王座を奪取した(2013年5月)
レナタ・セベレディ(ハンガリー)を3-0フルマークで破り、世界王座を奪取した(2013年5月)

「ボクシングを10年やってきて、どれだけ過酷な競技かというのは自分自身がいちばんよく分かっています」と真道。決して生半可な思いではない。それは本石会長にも充分伝わっており、西日本ボクシング協会事務局長でもある氏を動かした。

「3月下旬に、西日本協会の理事会で説明し、4月5日に理事5名に、試験的に力量をはかっていただこうとスパーリングを見ていただきました」(本石会長)

 その結果、満場一致で賛同を得、4月12日のJPBA(日本プロボクシング協会)理事会で嘆願書を提出し承認。翌13日にJPBAからJBC(日本ボクシングコミッション)に嘆願書が渡された。「現在は、その返事待ち」だという。

 元世界チャンピオンという実績を考慮し、「申請のみでのライセンス再交付」という考え方もあるだろうが、本石会長、真道本人ともに、「きちんとした手順を踏みたい」と、男子としてのプロテスト受験を希望する。7月18日に35歳(受験資格は申し込み時、満34歳まで)となる真道にとっては、隔月で行われるテストでのチャンスは当面、5月15日実施回となる(7月は未定)。3月末日をもって、「財団法人」から「清算法人」となったJBCでは、5月試験の申し込み締め切りを3月いっぱいで終え、「今後のプロテスト実施は、現況では未定」と説明を受けたという。それゆえ陣営は、“特例”での受験を要望しているかたちだ。

 ボクシング界では、アマチュア全米女子王者から、男子として2018年にプロデビューを果たしたパトリシオ・マニュエル(36歳=アメリカ)がいるが、真道のようにプロの世界チャンピオンからという例は初めてのこと。「男子になったといっても、生まれ持った骨格、体格的なものが違うということは認識しています。でも、ボクシングは“総合的”なもの。いろいろなもので補うことはできるはず」と真道。昨年9月から練習を再開し、コツコツと歩を進めてきた。
「もちろん、男子としてのライセンスを取るのが目標ではありません。リングに上がって、まず1勝すること。そしてそのときに何を感じ、どう思うか。その後のことはそれからです」

WBC女子フライ級王座は2度防衛した(写真は2013年6月)
WBC女子フライ級王座は2度防衛した(写真は2013年6月)

 真道と同じ、性同一性障害に悩む人は世界中にいる。「その人たちのためにリングに上がるわけではないが、そうではない大勢の人たちも含めて、ボクシングという枠を超えて大きな勇気を与えられるのではないか」というのが師弟の想い。プロデビュー戦(2008年5月、vs.秋田屋まさえ)で判定負けを喫した真道は、リングを降りると「最後まであきらめない姿に元気をもらった」と、たくさんの人に声をかけられた。「ボクシングだからこそ、ボクシングでしか伝えられないものがある」と、それ以来、胸に抱いてきたのだという。
 そして、「自分自身が輝いている姿、大人が鏡になる。そういう世の中」を築きたいと語った。

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