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2022-04-27

日本全国でショック死が続出! 社会問題化した60年前の6人タッグ「プロレスのテレビ中継は中止すべし」【週刊プロレスあの日、あの時】

フレッド・ブラッシー

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 日本のプロレス史のみならず、一般の事件としてもテレビ、新聞で大きく取り上げられ社会問題に発展したのが「プロレスショック死事件」だった。

 いまから60年前の1962年4月27日に起きた事件だが、テレビ(生中継)でグレート東郷の流血シーンを見ていた日本各地の老人5人が次々と心臓麻痺で急死し、翌日の朝日新聞は「プロレスのテレビ中継は中止すべし」という激烈な論調をかざした。日本テレビ以外の民放総連もこれに同調したため、一時は日本テレビ(当時は日本プロレスしか存在しなかったので、プロレス中継は日テレの独占)からドル箱のプロレス中継がなくなることが確実視されたほどだった。

 結局、力道山がコミッショナーの大野伴睦(自民党副総裁)に相談して「政治的な圧力」をかけることに成功。放映中止は免れたものの、これ以降当分は流血シーンのクローズアップが完全に御法度となった。問題の6人タッグを詳しく報道した東京スポーツの一面の記事中に「神戸発=桜井記者」とある。

 26歳の入社2年目、櫻井康雄氏が右手にペンを持ちながらリング上を凝視していたことが手に取るようにわかる名文で、ハッキリと「おそらく、日本のマットでこれだけの血が流れたことはあるまい」と書いている。まだカラーテレビが世に出る4年前、白黒テレビしか存在していなかった時代だから良かったものの、カラーテレビで放送されていた場合の死者の数は想像もつかない。

 私は後年、櫻井氏本人からこの試合の経過を直接、聞いたことがある。1本目が17分17秒、フレッド・ブラッシーが東郷を急所パンチでフォール。2本目は14分54秒、ルー・テーズが豊登をバックドロップでフォールして外国人チームがストレート勝ちしているが、ショック死が発生したとすれば、どのあたりだったのか?

「確かに6人タッグにしては長い試合でしたよ。1本目の15分過ぎくらいまでは流血はなかったですね。コーナーに東郷を追い詰めたブラッシーは、そこで初めて噛みつき攻撃を見せたんです。まさに“ガブリ”という感じでね。東郷の額から血が飛び散るように噴き出して、顔面といわず腹部といわず真っ赤で、レフェリーをやっていた沖(識名)さんのシャツも真っ赤だったのを強烈に覚えています。ここからでしょうね、次々とショック死が出ていったのは。

 2本目に東郷は白いハチマキをして出ましたが、そのハチマキが真っ赤に染まって、かえって凄惨な印象を与えるわけですよ。2本目も東郷が7割くらい出ていたんじゃなかったかなあ? とにかく東郷ワンマンショー。あの夜は力道山、豊登は存在感がまったくなかったですね」

 2本目に東郷が試合を棄権して、力道山と豊登が頑張っていれば惨事を防げたようだが、櫻井氏によると「東郷さんは血を出してナンボ。あれだけの流血は本人としても滅多になかったと思ったんでしょうね。テレビ生中継だし、棄権なんてとんでもないですよ。さすがの力道山でも止められない雰囲気でしたね」と述懐する。

 この日、メインの前のセミファイナルは吉村道明が45分3本勝負でラリー・ヘニングと引き分け。その前は19歳の猪木寛至が、ワールドリーグ公式戦でキラー・オースチンに9分12秒で敗れている。

流智美

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週刊プロレスNo.2179(2022年5月11日号/4月27日発売) | 週刊プロレス powered by BASE

今週号の表紙はタイチを下して新KOPW保持者となった鷹木信悟です。新日本はKOPW戦がおこなわれた広島大会だけでなく、オカダvs内藤の前哨戦など福岡ドームへ向けた動きが加速した後楽園&大阪大会もリポート。またモクスリーvsオスプレイの注目の一戦がおこなわれたシカゴ大会も掲載。スターダムはゴールデンウイークのビッグマッチでそれぞれ赤と白のベルト取りへ挑む、ドンナ・デル・モンドの“舞ひめ”舞華とひめかをそれぞれインタビュー。試合リポートは6人タッグ王座戦などがおこなわれた神戸&京都の2大会を追跡。全日本は「チャンピオン・カーニバル」もいよいよ佳境。Aブロック最終リーグ戦がおこわれた後楽園大会中心にリポート。昨年度覇者のジェイク・リーがひと足早く優勝戦進出決定。連覇に王手をかけている。プロレス界ゴールデンウイークのビッグマッチラッシュを控えて、今週号では展望企画も多く掲載。NOAHは両国国技館2連戦を控え小川良成、サイモン・ゴッチにインタビュー。5・1~3まで3日連続横浜武道館で大会をおこなうFREEDOMS、アイスリボン、大日本もそれぞれ注目選手をクローズアップ。そのほかドラゲー後楽園&神戸、DDT新宿&神戸、GLEAT新宿、2AW千葉、アイスリボン利府町、プロミネンス旗揚げ・新木場、東女・両国、wave新木場など掲載。【注意】発送後の返品・返金は原則不可とさせていただきます。送料は無料ですが、第三種郵便での発送となります。通常2~4日でのお届けとなります。また、事前に購入されても発売日にお届けすることは、お約束できません。ご了承ください。

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