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2022-05-21

【ボクシング】残念無念!名勝負も予告編まで 小國以載と栗原慶太は負傷ドロー

3年ぶり実戦の小國(左)と栗原は白熱の戦いを展開した

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 3年ぶりのリングになる元IBF世界スーパーバンタム級チャンピオンの小國以載(34歳=角海老宝石)対東洋太平洋バンタム級チャンピオン、栗原慶太(29歳=一力)のノンタイトル10回戦は、20日、東京・後楽園ホールで行われ、4回2分40秒、負傷引き分けに終わった。序盤から両者の持ち味が正面からぶつかり合う白熱戦となったが、偶然のバッティングで小國が右目の上をカットし、続行不能になったもの。

 これが久々の実戦とはとても思えない。小國の技巧が冴えわたる。対戦者の攻撃手法をあらかた読み切り、見事なタイミングで右ストレートを決める。鈍い音を立ててめり込むボディブローも強烈だ。栗原も負けてはいない。右のオーバーハンド、左フックを軸に自慢の強打で応戦した。技と強打が激しくつばぜり合いを演じる。だれもが劇的な“瞬間”を予感し始めた矢先だった。両者の頭が激突。小國の額が割れ、傷をチェックしたドクターが続行に難色を示す。レフェリーはその頭上で両手を交差して試合終了を宣言すると、場内から大きな嘆声が沸き起こった。
素晴らしい攻防は偶然のバッティングで勝負がつかないまま終わった
素晴らしい攻防は偶然のバッティングで勝負がつかないまま終わった

 予告編で終わった名勝負の冒頭部分だけだが、それだけで満足できるほどの緊迫のシーンの連続だった。初回、栗原の左フックでスリルは始まった。2回になると小國が絶妙なタイミングで操る右クロスがヒットさせて主導権を奪い取る。3回も元世界王者の放つ右パンチがどこまでも鋭い。栗原も負けじと強打でやり返し、予断を許さない攻防が続いた。そして4回、小國の栗原の右アッパーが炸裂。左フックのフォローも効いて、小國は動きが澱む。ただし、このピンチを冷静にしのぎ切ると、右のカウンターでやり返した。残念なバッティングが起こるのはその直後のことだった。

「思ったより動けたのは収穫。ただ、運も味方につけるのがボクシングと思っているから、もっと頑張れということでしょう」と語った小國は「負け以外なら現役続行と思っていました」と復活を誓った。右拳など負傷が重なり、30代での長いブランクを作ってしまったが、鋭い攻防感覚とクレバーさは健在だった。次戦以降にさらなる期待を寄せたい。

 栗原は「負傷で勝負が決まらないというのはこんな気分なんだと初めて知りました」と残念そう。「小國さんはうまかったです。ラウンドを重ねるごとにすべてを読まれている気分になりました」。相手の戦力と戦いの流れを感じ取れる感性は必ず次につなげられるはず。

 トレイラーだけでこれだけおもしろかったのだから、再戦を期待したいところ。ただし、「(次の試合は)流れにまかせたい」(小國)、「ぼくのベストはバンタム級だと思います」(栗原)というのが両者の戦後の声。再戦の望みは薄いかもしれない。

 小國は25戦21勝(8KO)2敗2分。栗原は23戦16勝(14KO)6敗1分。
高橋に右を打ちこむ木村。不敗のレコードを(9勝2分)をからくも守った
高橋に右を打ちこむ木村。不敗のレコードを(9勝2分)をからくも守った

京原の思い切りのいい右がヒット。帝尊康樹は再起戦を勝利で飾れず
京原の思い切りのいい右がヒット。帝尊康樹は再起戦を勝利で飾れず

 前座カードでは複数のカムバック戦が組まれた。2連敗から半年ぶりの試合に臨んだ日本バンタム級8位の千葉開(横浜光)はプレスをかけ続け、鶴海高士(石田)に3-0の判定勝ち。世界王座挑戦経験もある日本スーパーバンタム級10位、高橋竜平(横浜光)も善戦の敗戦から復帰したが、アウトボクシングに徹する木村天汰郎(駿河男児)を追い上げたものの、序盤の失点が響いて0-2の判定負けとなった。また、元東洋太平洋ミドル級チャンピオンの帝尊康樹(伴流)も6回戦で2年半ぶりにカムバックしたが、京原和輝(久留米櫛間)の思い切りのいい右に手こずり、最終回にダウンを喫して1-2の判定負けに退いている。

文◎宮崎正博 写真◎馬場高志

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