4団体統一世界ライト級タイトルマッチ、チャンピオン(WBCは名誉王座のフランチャイズ)のジョージ・カンボソス・ジュニア(28歳=オーストラリア)対WBCチャンピオン、デビン・ヘイニー(23歳=アメリカ)の12回戦は、5日、オーストラリア・ビクトリア州メルボルンで行われ、アウトボクシングに徹したヘイニーが3-0のスコアで判定勝ちを収めた。 オージー・フットボール(オーストラリア式ラグビー)専用のマーベルスタジアムに集まった4万1129人大観衆の興味はただ一点。最強のライト級と呼ばれたテオフィモ・ロペス(アメリカ)を破り、この日、地元リングに凱旋するカンボソスの勝利を見届けるためだ。だが、淡々とした試合展開の中、時間を追うごとに、希望の光はすすけていった。若手ではピカ一とも言われる技巧派ヘイニーの前に、ヒーローはまず何もできないままだったのだ。
初回からヘイニーの左ジャブが繰り出される。それほど強くはないが、スピードに乗り、断続的にヒットしていく。WBCチャンピオンはそれ以上のアプローチはほとんどしない。ジャブで管理し、ときおりワンツーを追加するくらい。あとは十分に距離をとって、安全圏から抜け出ることは皆無。本来、カウンターパンチから攻撃を組み立てるカンボソスは、肝心の最初の一打を打てないのだから、どうにもならなかった。2回に右カウンターがタイミングよく当たったように見えたが、効果は不十分。さらに後続の左フックは派手に空ぶってしまう。
4回、カンボソスはやや攻勢を強め、ボディにもパンチを散らしたもののいずれも浅い。5回にはヘイニーがジャブから左アッパーと切り返し、ペースはもとどおりに立ち返った。中盤戦は判で押したように、同じような立ち回りが続いていった。カンボソスのパンチがかすめるたびに場内は沸いていたが、それもだんだんと音量は小さくなっていく。
終盤戦もヘイニーの堅実さの前に、カンボソスは勝負に出ることすらできない。もし、確実にポイントを取ったとしたら、ヘイニーがはっきりとエスケープに走った最終回くらいか。そのまま試合は終了ゴングを聞くことになる。
ジャッジのスコアは116対112が2者、残る1人は118対110で、いずれもヘイニーの勝ちとしていた。
4団体のタイトルを一気獲りしたヘイニー。次の相手は誰だ?「ゲームプランどおりに戦った。スマートな戦いを徹底できたと思う。チャンスをくれたカンボソスに感謝したい」
と語ったのはヘイニー。かみ合わず、無色の試合を作れるからこの男は今、統一チャンピオンの座に立つことができた。戦いのヤマを作らなかったのも計算どおりだった。ただ、スター街道を歩みたいのなら、攻防のバランスにかなり手をつけなければならないのだろう。28戦28勝(15KO)。
カンボソスは「接戦だったとは思うが、ヘイニーが勝ったのは間違いない。彼がファイトしてこなかったとしても、それもボクシングなのだから認めるしかない」。達観のコメントも、ファンの心に突き刺さることはなかったはずだ。21戦20勝(10KO)1敗
文◎宮崎正博(WOWOW観戦)写真◎Getty Images