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2022-05-29

【ボクシング】“才能のデパート”ジャーボンテ・デービスが一撃KOで不敗対決制す

突っ込んでくるロメロに左パンチを起動させるデービス。この直後にダウンシーンが訪れる

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 不敗の強打者同士が対決するWBA世界ライト級タイトルマッチ12回戦は、28日(日本時間29日)にアメリカ・ニューヨーク州ブルックリンのバークレイセンターに1万8570人の大観衆を集めて行われ、圧倒的な才能を謳われるチャンピン、ジャーボンテ・デービス(27歳=アメリカ)が挑戦者ローランド・ロメロ(26歳=アメリカ)を6回2分39秒、左の一撃でTKOに追い込んだ。スーパーフェザー級からスーパーライト級まで3階級同時制覇も達成しているデービスは、これで世界戦レコードを11戦全勝10KOとした。

もやもや感はあっという間に晴れわたった

 本来ならこの両者は昨年11月に対戦するはずだった。ところが、元暫定王者のロメロに性的暴行疑惑が浮かび上がり、代役としてイサック・クルス(メキシコ)が出場。デービスはタフなメキシカンパンチャーの前に世界戦では初めてKOをミスしている。
デービスの一撃で倒れ込んだロメロは、立ち上がったものの続行は許されなかった
デービスの一撃で倒れ込んだロメロは、立ち上がったものの続行は許されなかった

 ロメロの疑惑は晴れ、半年後、当初のカードは実現の運びになったのだが、興味の大半がデービスの勝ちっぷりにあったのは間違いない。14戦全勝12KOのロメロのパワーパンチは魅力的でもまだまだ粗削りだ。だが、この日のデービスにはいつもの滑らかな攻防が見えない。また、集中力も乏しい。初回終了時にはコーナーに向かう挑戦者の背中に、なにやら言葉を浴びせる。対戦中に観客席に声をかけたり、場内のモニターに母親の姿が大写しになると、コーナーから「ママ」と呼びかけたりもした。

 むろん、当たれば怖いロメロのパンチへの警戒もあったのかもしれない。互いに連続的な攻撃が乏しい。パンチが交錯すれば迫力満点でも、もどかしくもある展開が続く。挑戦者の右ストレート、あるいは左フックを、デービスがよけそこねるシーンもあった。展開が微妙だった証拠は、5回までの3ジャッジのスコアが割れていたことにもある(デービスが2-1でリード)。
右パンチを打ち込むロメロ。どこか集中力を欠いたKOスターに対して善戦した
右パンチを打ち込むロメロ。どこか集中力を欠いたKOスターに対して善戦した

 サウスポーのデービスは5回から、ようやくギアを上げていった。鋭い左ストレートをボディへと飛ばし、ロメロの動きはやや緩慢になる。そして続く6回、勝負は一瞬のうちに終わる。ロープを背負ったデービスを追って、ロメロが右を振って距離を詰めたところだ。チャンピオンの横殴りの左パンチが炸裂する。ロメロはロープに体ごと突っ込む形で倒れて仰向けに。それでもカウント8で立ち上がったが、足もとが硬直して定まらないのを見てレフェリーがストップをかけた。

「オレはそんな強く打ったわけじゃない。たまたま(ロメロが)そこにいただけなんだ」

 と自らのフィニッシュブローに驚きを見せたデービスは27戦27勝(25KO)。6月5日にはオーストラリアで4団体のタイトルをかけてジョージ・カンボソス・ジュニア(オーストラリア)とデビン・ヘイニー(アメリカ)が対決する。実力ナンバーワンとも言われるワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)が自国の戦争でいないなか、デービスがオーストラリア決戦の勝者と対戦すれば、おもしろいことになる。ロメロは粗さが研磨されれば、そのパワーはもっと生きてくるはずだ。
痛烈な左ストレートでダウンを奪ったララ
痛烈な左ストレートでダウンを奪ったララ

ララはベテラン相手に力の差を見せる

 アンダーカードとして行われたWBA世界ミドル級タイトルマッチ12回戦は、チャンピオンのエリスランディ・ララ(39歳=キューバ/アメリカ)が挑戦者ゲリー・オサリバン(37歳=アイルランド)を8回23秒TKOで破り、同タイトルの初防衛に成功した。

 もはや40歳も目前に迫り、1年以上も試合間隔が空いているララだが、まだまだフレッシュだった。一方、この試合前までの4敗(31勝21KO)のうち3度はKO負け。さらにここ3年、出場が激減しているオサリバンはスピードも乏しく、パンチの威力もなかった。当然、ララの思い描いたとおりのシーンが折り重なっていく。オサリバンが守りを固めても、そのガードの間を割ってカリブ人の左ストレートがよく決まる。4回にはその左を直撃され、オサリバンはたたらを踏んだ後でキャンバスに転がった。

 ララは5回には右フックを多用し、またしてもチャレンジャーをふらつかせ、7回の終了間際には左ストレートの直撃で腰砕けにさせる。8回開始後もダメージが残るオサリバンにまたも左を浴びせ、ふらふらと後退をするところに追撃の体勢を作ったところで、レフェリーが両者の間に入って試合を終了させた。

 ララは35戦29勝(17KO)3敗3分。
ラモスのパワフルな左パンチがサンタマリアを捉える
ラモスのパワフルな左パンチがサンタマリアを捉える

 また、スーパーウェルター級10回戦に出場した不敗のハードヒッター、ヘスス・アレハンドロ・ラモス(21歳=アメリカ)はルーク・サンタマリア(24歳=アメリカ)相手に判定勝ちにとどまった。

 体格でひと回り大きいラモスだが、よく動き、反撃のパンチも懸命に繰り出すサンタマリアを捕まえきれなかった。判定では攻勢点を評価された形でポイント差はついたが、期待の大きいラモスとしては不足を感じさせる戦いだった。

 ラモスは19戦19勝(15KO)。サンタマリアは17戦13勝(7KO)3敗1分。

文◎宮崎正博(WOWOWオンデマンド観戦)写真◎Getty Images

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