10日（日本時間11日）、メキシコ・グアダラハラで行われたＷＢＡ世界ライトフライ級タイトルマッチ12回戦は、スーパーチャンピオン京口紘人（28歳＝ワタナベ）が、レギュラー王者エステバン・ベルムデス（26歳＝メキシコ）に８回24秒、レフェリーストップによるＴＫＯ勝ちを収め、王座統一とともに４度目の防衛に成功した。文＿本間 暁（ＤＡＺＮ観戦） 写真＿ゲッティイメージズ
20発、いや30発は放っただろうか。右の打ち下ろしを効かせた京口は、細かい連打を雨あられと降り注ぐ。ベルムデスはすでにグロッギー状態だったが、ロベルト・ラミレス・ジュニア・レフェリーはなかなか止めない。だが、ロープにもたれたベルムデスを見て、ようやく渋々腕を交差した。
「ベルムデスは素晴らしくタフな選手。しんどい試合に勝つことができて本当によかった」。試合直後、京口はホッとした表情で語り、会場に向かって「ビバ・メヒコ！」と絶叫。現地ファンからも祝福を受けた。
得意のアッパーカットは左も右も冴え渡った すべてで上回る完全勝利だった。中でも特筆すべきは初回の入り方だ。10cm近く長身でリーチも長いベルムデスに対し、遠い距離から右クロスをかぶせ、得意の左アッパーカットを突き上げた。自らのリズムで、ステップイン＆アウト。そうして難なく距離を支配すると、インサイドにスルリと入り込むと同時に左右アッパーを何度も打ち上げて顔面を跳ね上げ、右アッパーでみぞおちを突き刺す。
ゆったりとしたテンポのベルムデスに敢えて合わせて目を馴染ませて、右クロス、あるいは左フックのスピードを上げ下げして幻惑。返しのアッパーを決めていく。離れた距離では間断なく左ジャブを突き続け、ベルムデスの“間”を切り取っていった。
右クロスもロング、ショートともに光り、リードとしても機能。試合を決定づけもした ２回には早くも鼻血を流し始めたベルムデスは、自分主動の接近戦を敢行しようと距離を詰めてくるが、そこでも京口の左右アッパーが冴えた。右からの返しの左ボディも炸裂し、距離をとってのヘッドムーブでベルムデスのロングブローもきっちりとかわした。
３回、両者の入り際に頭がぶつかると、ベルムデスが頭部をカットし大量出血。顔面は真っ赤に染まり、ペース、ポイント劣勢に追い打ちをかけるハンディとなった。
セコンドに元名王者マルコ・アントニオ・バレラも就くベルムデス・サイドは、ペース奪回をかけて強引な接近戦に挑む。荒々しく執拗な連打、その回転が徐々に上がってき、京口もそれに飲まれかけたが、セコンドの小林尚睦トレーナーは「技術で上回ってるから落ち着いて」と声をかけ、親友のＷＢＯミニマム級王者・谷口将隆は「（ベルムデスは）あれしかないから。一緒になって振らないように。コンパクトに」と的確な指示を与えた。
距離を取って、ベルムデスの入りにジャブをヒット。接近戦では、相手が打ちづらい位置に頭を置くなど、京口はふたたび丁寧にボクシングを作り直す。６回にはヘッドバットで減点１を受けたものの、それまでの流れの良さがあったから、焦ることもなかった。続く７回、右打ち下ろしで急所（テンプル）を打ち据えてダメージを与えた京口は、さらに右を連打したが、顔を背け、頭を低くしたベルムデスの後頭部に当たってしまい、メキシカンがヒザを着く。ノックダウンでもおかしくなかったが、レフェリーはラビットパンチとしてスリップ裁定し、またも減点１を課した。
左から谷口、町田主計トレーナー、小林トレーナー、深町信治マネージャー。チームの勝利でもある しかしその７回は、それまでのボディ攻撃も効果を上げ、急激に失速していたベルムデスのダメージは深刻だった。セコンドも減点を無視して冷静にそこを判断して京口を送り出す。８回開始早々、京口は一気に試合を決めにかかった。見事な決断・判断力だった。
「熱いメキシコのファンの前で明確に勝てば、自分のチャンピオンとしての価値も高まると思った。今後は他団体の素晴らしいチャンピオンたちとも戦いたい」と語った京口。堂々の勝利を挙げて、戦績を16戦16勝（11ＫＯ）とした。
昨年５月にカルロス・カニサレス（ベネズエラ）を番狂わせで破り、レギュラー王座を獲得したベルムデスは初防衛に失敗。戦績は20戦14勝（10ＫＯ）４敗２分となった。
