close

2022-06-14

【ボクシング】削って削って最後に仕留める。宇津木秀が富岡樹に8回TKOでV1

ストップの瞬間。宇津木はホッとした表情で会場にアピールした

全ての画像を見る
 14日、東京・後楽園ホールで行われた日本ライト級タイトルマッチ10回戦は、チャンピオンの宇津木秀(うつき・しゅう、28歳=ワタナベ)が挑戦者8位・富岡樹(とみおか・いづき、25歳=角海老宝石)を8回1分8秒TKOに下し、初防衛に成功した。

文_本間 暁 写真_橋田ダワー

「6分の力で!」──。メキシコから帰国したばかりの京口紘人(WBA世界ライトフライ級スーパーチャンピオン)も含めたセコンドから、宇津木に対して常に声が飛ぶ。キャンバスを滑るように、ススっとすり足で富岡ににじり寄り、コンパクトに、力感を敢えて抜いた小気味よい連打が富岡の顔面、ボディを襲う。

6分の力を意識したブローは的確性に優り、かつスタミナロスも抑えられる
6分の力を意識したブローは的確性に優り、かつスタミナロスも抑えられる

「富岡くんは距離が遠く、左も上手くてやりづらかった」と振り返った宇津木。たしかに入り際にコツコツともらったシーンもあった。接近戦では連打しようとすると腕を再三絡め取られた。「序盤はポイントを取られていると思った」という宇津木が、焦りを募らせてもおかしくない状況があった。が、その都度、立ち返ったのは、コンパクトに、テンポを変え、強弱を意識した攻撃だった。

「それが僕のボクシング、強みだと思うから」。序盤こそ、リラックスしたスムーズな動きを見せていた富岡だったが、宇津木のじりじりと攻め上げるリズムに、徐々に心を乱され始めた。宇津木のボディブローにも体力を消耗させられた。5ラウンドを終えての公開採点でジャッジ3者とも48対47で挑戦者リードだったが、気持ちも体力もしっかりとしていたのはチャンピオン。4ラウンドあたりから、打ち終わりにバランスを崩すシーンも見せ始めた富岡は、心のゆとりを失い始め、その様子をじっと観察していた宇津木に、そこを突かれた。

「ボディも効いていると思ったから」という宇津木は、連打からの右の強度を上げていく。それを跳ね返そうと、富岡も気力を振り絞って打ち返すのだが、体も心もバランスを保っていたのは宇津木。富岡の振りの大きさを見切り、中から強打を滑り込ませ、8ラウンドは初っ端から勝負をかける。ボディブローもまじえた連打が決まると、レフェリーは富岡を抱え込んだ。

メキシコから帰国したばかりの京口(左)、小林尚睦トレーナーと。京口に同行した小林トレーナーが毎日、宇津木の練習動画をチェックして調整を続けた
メキシコから帰国したばかりの京口(左)、小林尚睦トレーナーと。京口に同行した小林トレーナーが毎日、宇津木の練習動画をチェックして調整を続けた

「兄貴には、まだまだ遠く及びませんが、少しずつでも近づいていければ」。敵地メキシコで快勝を遂げた京口の戦いが大いに刺激になった。京口も、谷口将隆(WBO世界ミニマム級チャンピオン)も、そして宇津木も……。“コンパクト、強弱、テンポ、リズム”。ワタナベジムは、先輩から後輩へ、ボクシングの妙味がしっかりと受け継がれ、浸透していると感じる。宇津木の戦績は11戦11勝(9KO)。
 3度目のタイトルマッチ(東洋太平洋1度、日本2度)にも敗れ、4連敗となってしまった富岡。もっともっと嫌らしいボクシングをできる選手だけに、ポイントリードから失速してしまう中盤以降の戦い方が、今回もまた惜しまれる。14戦7勝(2KO)6敗1分。

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事



RELATED関連する記事