川崎新田ジムは18日、川崎市産業振興会館で記者会見を開き、同ジム所属のIBF世界フライ級6位・黒田雅之が11月12日に後楽園ホールで再起戦を行うと発表した。
写真上=再び立ち上がった黒田雅之(左)と新田渉世会長
昨年5月、IBF世界フライ級王者モルティ・ムザラネ(南アフリカ)に敗れて以来の試合は、アマチュア出身の廣田彩刀(角海老宝石=プロ2戦2勝1KO)とのスーパーフライ級8回戦。1年半ぶりとなるリングに「楽しみです」と黒田は笑顔を見せた。
2度目の世界挑戦も失敗に終わったムザラネ戦後、引退も頭をよぎったという黒田だが、転機となったのは環境の変化だ。川崎市が推進する「働き方改革」の取り組みで、インターンシップを通じて介護施設への勤務が決定。これまで長くコンビニでアルバイトをしてきたが、正社員として採用されたことで収入の安定に加え、勤務時間も融通してもらえるなど、今まで以上に練習に打ち込める環境が整った。
「セカンドキャリアが保証されれば、もっと強くなれると思いました。ボクシングで成功しなければ、野垂れ死ぬ覚悟でやってきましたが、ボクサーには絶対に引退する時がくる。今までは肩に力が入りすぎていましたが、今はのびのびやれています。新しい環境は、プラスになるとしか思っていません。今年で34歳になりますが、まだまだ自分に期待しています」
3月に採用されてからは週5日、朝8時半から昼の2時半まで勤務。高齢の方たちに体操を指導したり、時には介護も行う。将来的には「お年寄りから小さな子供まで、運動を通じて笑顔にできるような仕事をしたい」と考えていた黒田にとり、この仕事は親和性が高く、同時にボクシングとの両立も実現させた。人手不足に悩む施設の側も、心優しく逞しいボクサーの勤務を歓迎している。
「お年寄りの方々と接していて、うれしいことは、自分の名前を覚えてもらえることです」と話す黒田。施設の職員たちも、世界をめざすトップアスリートが同じ職場にいることが大きな励みになっているという。
川崎新田ジムでは、これからデビューを予定する白崎隼樹と大石真之も、それぞれ幼稚園と介護施設に勤務。新田渉世会長は、雇用の安定しない多くのボクサーたちのためにも、この「働き方改革事業モデル」を推進していく考えだ。
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