東洋太平洋、日本ライトフライ級タイトルマッチおよびWBOアジアパシフィック同級王座決定戦と、アジアの3大タイトルがかかった12回戦は、2日に東京・後楽園ホールで行われ、日本チャンピオンの岩田翔吉(26歳=帝拳)が東洋太平洋チャンピオンの堀川謙一(42歳=三迫)に3-0のスコアで判定勝ちし、一気に3つのベルトを獲得した。「世界タイトル挑戦の準備はできています」と試合後は、大きな目標も口にした。弾ける攻撃力が老練の巧みを弾き飛ばす「大学(早稲田)時代、たくさんスパーリングをやった堀川さんとここ(プロのリング)で再会するとは思いませんでした」
ここまで8戦全勝(6KO)の岩田が「人生をかけている」という世界チャンピオンに挑むためには、どうして乗り越えておかねばならない壁だった。だが、これが2年ぶりのリングになる堀川の手練の技と巧みはだてではない。23年のキャリアの中で編み込んださまざまな術がこの日もあちこちで光った。ただ、一戦ごとに切れ味を増してきている岩田の攻撃を完全に遮断するには、それも十分ではなかった。
慎重に立ち上がったベテランを日本チャンピオンがさっそく支配する。スピードに乗り、また、反応も鋭く、右ストレート、アッパーカット、左フックと打ち込んでいった。これで岩田は波に乗った。4回、堀川が絶妙なタイミングで繰り出す左フックに惑わされても、5回には攻防のテンポを上げてすぐにペースを奪い返した。
堀川も7回に距離を縮めてアッパーカットを連発、8回にもこつこつと巧打を集めたが、岩田の右ストレート2発が決まって攻守は逆転する。わずかに足がよろけた堀川を追って、岩田が連打をまとめてビッグラウンドを作り、流れを再び呼び寄せる。
東洋太平洋王者はあきらめない。10回、11回と逆転を狙ったビッグパンチを織り込む連打で追い上げてくる。ただし、12回は岩田が印象的な右ストレートを決めて打ち勝ち、熱戦を締めくくった。
3つのベルトを手に入れた岩田は、元世界王者の粟生隆寛トレーナーと喜ぶ 採点は116対112、117対111、118対110だった。
「(堀川の)ゲームプランは想像の範囲内でした。そのほかの課題は映像で確認して、それから反省したいと思います」と語った勝者が、ポイントの貯金に頼るわけでなく、最後に打ち勝って勝利にたどり着いたことはきわめて大きい。次戦以降、さらなるスケールアップに期待したい。
堀川は59戦41勝(14KO)17敗1分。
KOは逸したものの藤田健児(右)は厚みのある攻防で完勝した藤田はしぶといフィリピン人に判定勝ち アマチュア10冠からプロに転向してきたフェザー級の藤田健児(28歳=帝拳)はジェスティン・テソロ(22歳=フィリピン)との6回戦に3-0の判定勝ちでプロ2勝(1KO)目を手にした。
デビュー戦から1年4ヵ月ぶりの実戦となったサウスポーは決して楽な戦いではなかった。大柄なテソロがしぶとく右ストレートで切り返してくる。それでも鋭いステップでさまざまな角度を作って左ストレート、右フックを打ち込み、内容的には圧勝だった。
齋藤麗王がサマートを倒したほか、計3人のトップアマが初回KOでデビューした この日は帝拳ジムに所属するアマチュアエリート3人が一気にデビューし、いずれもタイ選手に初回でKO勝ちしている。アマチュアで6つのタイトルを獲得した齋藤麗王(24歳=スーパーフェザー級)がサマート・スプラッカン(18歳)を2度倒して67秒、立教大学出身の増田陸(24歳=スーパーフライ級)はウィーラポン・ヨーティカ(18歳)に左ストレート一撃で110秒、アマ43勝4敗の高見亨介(20歳=ライトフライ級)はウッティチャイ・モントゥリ(20歳)に右ストレートを決めて72秒とすべて対戦者にテンカウントを聞かせている。
打撃戦の中で亀山が薮崎に最終回ストップ勝ちを飾る セミファイナルでは日本フライ級11位の薮崎賢人(24歳=セレス)と亀山大樹(25歳=ワタナベ)の2人のサウスポーが一進一退の打撃戦を展開し、最終回、左ストレートからの右フックで作ったチャンスに連打をまとめた亀山がTKO勝ちを収めた。タイムは2分17秒だった。
文◎宮崎正博 写真◎橋田ダワー