close

2022-07-08

【連載 名力士ライバル列伝】ヨーロッパからの「挑戦者たち」――把瑠都後編

平成18年夏場所、互いに新入幕、新大関の場所を終えた直後の把瑠都と白鵬。「一緒に相撲を取ることができたのは幸せ」

全ての画像を見る
四股名にズバリ「欧州(欧洲)」と名乗り、
大関へ駆け上がったブルガリア出身の琴欧洲(現鳴戸親方)。
その“先駆者”を目標にして上を目指し、栄位にたどり着いた
エストニア出身の把瑠都。
ヨーロッパから極東の国へ、
新風を吹かせた「挑戦者」二人の言葉を送る。

モンゴル人は「手首の強さ」
 
初優勝した平成24(2012)年初場所、全勝を止められたのは、はやり横綱白鵬だった。幕内で28度対戦し、土を付けたのは、たったの3度。

「彼は大・大・大横綱。同じときに一緒に相撲を取れたことは、すごく幸せです」

では、エストニア人の把瑠都から見た、白鵬らモンゴル力士たちの強さの要因は、どこにあるのだろう。

「いろいろな見方があるけれど、私の意見としては『手首の強さ』ですね。廻しをいったん取られたら、なかなか切れないし、離さない。これはもう、子供のころからの環境でしょう。大自然の中でたくさん遊んで、手綱を握って馬に乗る。モンゴル相撲も、組んでから始めますからね。そうやって、手首が自然に鍛えられていくんだと思います」
 
とはいえ、育った国や環境は違えども、同じ釜の飯を食べて、同じ場所で寝て、皆が切磋琢磨し、輝く未来を目指していく。それが、把瑠都が肌身感じた大相撲の世界の素晴らしさだ。

「私の場合、『自分はエストニア人だ』という特別意識はなかった。すぐに日本に溶け込めましたし、相撲に出会えたから、今の自分がある。相撲界には本当に感謝ですね」

明るい性格で、角界へなじんだ把瑠都は、第二の人生にもすぐに溶け込み、タレント活動やドラマ出演など未知なる世界にも意欲的に挑戦。あの取り口と同様の“懐の深さ”で、日本人の心をわしづかみにしている。

対戦成績=把瑠都3勝―25勝白鵬、把瑠都12勝―18勝日馬富士、把瑠都21勝―6勝稀勢の里

『名力士風雲録』第28号 琴欧洲 琴光喜 把瑠都掲載

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事



RELATED関連する記事