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2022-07-15

【陸上】20歳のトップランナー・三浦龍司が語る「サンショー」(3000m障害)への思い

2020年7月の大学デビュー戦以降、日本の男子「サンショー(3000m障害)」の歴史を塗り替え続けている三浦龍司(順天堂大学3年)。その潜在能力は専門外の距離でも存分に発揮され、文字通り世界トップクラスのランナーに近づきつつある。観る者を引き付ける魅力たっぷりの三浦に、サンショーへの思い、いよいよ開幕するオレゴン世界選手権は、そしてシューズへのこだわりについて聞いた。

新たな課題を一つずつ克服

――6月の日本選手権では大会新記録(8分14秒47)で2連覇。オレゴン世界選手権代表に内定しました。世界を⾒据えたときにまだ伸び代があるかと思いますが、レースを振り返っていただけますか。

三浦 日本選手権を振り返るとまずまずだったと思いますが、5月のゴールデングランプリのときにも掲げていた課題は克服できませんでした。

――克服すべき課題というのは︖

三浦 1000m を通過して分かったのですが、筋⼒の部分で不⾜していると思いました。根本的なというか、サンショー(3000m障害の愛称)をすべて超えてもダメージ・接地衝撃に耐えられるような筋⼒、耐久性というのがまだまだなので、そこを鍛えていくようなトレーニングをしていかないと、と思いました。それが克服できればまた先が開けるというか、壁を越えられる気がするので、とりあえずそこですね。


――具体的にどういうことに取り組むのですか︖

三浦 まだ、⼿探りなところはありますが、初めてぶち当たった課題なので、長門監督(順天堂大)にも相談しながら、練習のなかにフィジカルな要素をもっと取り⼊れる必要があると思います。フィジカル面での具体的な練習内容は、これから考えていこうと思います。

――初めてぶち当たった課題というと、⼀個クリアするとまた新しい課題が出てきて、それをクリアすると記録が伸びる、という良いサイクルですか︖

三浦 そうですね。そう、感じられるのはうれしいですね。

――今シーズンは1500mや5000mでも日本トップレベルの記録を出していますが、それは主戦場の3000m障害のための取り組みの一環なのでしょうか。

三浦 そうですね、底⼒とか、最低ラインの⼒を⾼めるために5000mもやっていますし、例えば3000mを8分切れなければ、絶対に3000m障害で7 分台にはいけません。その⾃分の限界値を上げるために、1500m、5000mにも取り組んでいます。他種目でどれだけ記録が出ようと、3000m障害から転向することはないです。

サンショーの魅力

――3000m障害という種目は三浦選手の活躍もあり、昨年のオリンピックでものすごく注⽬した⼈も多いと思いますが、魅⼒はどういうところですか︖

三浦 ちょっと恐怖もあるというか……⼀筋縄でいかない部分も含まれていて、たったの3000mですけど、スタミナも必要で、内容が5000m以上に詰まっていると僕は思っているので、「⾛ることの総合種⽬」だと感じています。この競技への理解を深めれば深めるほど味が出てくるというか、考えさせられる部分が最近多いと思います。また、⾃分⾃⾝が純粋にそれを楽しめているので、見る⼈にも伝わっている部分が少なからずあると思います。そういうのが醍醐味だと思います。

――より多くの人に、どういうところを⾒てほしいですか︖

三浦 分かりやすいのは⽔濠だと思います。あと、⽇本⼈選⼿だと2通りの跳び⽅が主流なので、そこの違いを見てもらえると楽しいと思います。

――その跳び⽅の違いを説明してもらえますか。

三浦 ハードリングと(ハードルに)⾜をかける跳び⽅の2つがあります。基本的に、⽇本⼈の選⼿は⾜をかける⼈が多いのですが、安定性などを重視するとそういう跳び⽅になります。⼀⽅で、レースの勝負どころやスピードが⼀気に上がる、展開が急激に動くところでは、ハードリングに変える選⼿もいます。選⼿の⼼境やレース状況で、跳び⽅も変わってくると思います。僕の場合はラスト1000m(今までは残り1周くらい)のところで、ここで最後に引き離すとか、追い込みをかけるところでハードリングをすることでスピードを殺さずに⾛ることができ、⼤きく相⼿をリードすることができます。⼀気に離すことができれば、後続の選手にプレッシャーをかけることになるので、⼀つの武器としてハードリングを使います。ハードリングは技術的な要素が求められるところです。

――跳ぶ前の⾜や歩数の合わせ⽅はある程度決まっていたりしますか︖

三浦 僕は決めませんが、これくらいの距離になったらこの足が合う、というのは場数を踏んでいけば分かるようになります。合わせ⽅は、⾼校時代は⼩刻みに合わせる⽅法を取っていたのですが、逆に加速するという⽅法を⼤学時代に教えてもらいました。そうするとストライド(歩幅)が広がって、⾃分の合わせやすい位置が取れる、という新しいノウハウを教えてもらいました。それが最近スムーズに合うようになったきっかけでもあると思います。

――それで記録も伸びてきた。

三浦 そうですね。障害の前であえてスピードを落とさずに、⼤きいストライドでスピードに乗るみたいな感じです。でもそれも⾛りがキツくなくて、⼒に余裕がないとできないので、なかなか難しいところです。
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