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2022-07-14

あなたも変形性ひざ関節症の予備軍かも! 後編

いつまでも自分のひざで歩きたい! photo by GettyImages /PonyWang

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中高年のひざの痛みの原因は、ほとんどが変形性ひざ関節症です。変形性ひざ関節症の進行と治療について、このほど発売された『図解・即解!基礎からわかる健康シリーズ 変形性ひざ関節症』(ベースボール・マガジン社刊)の著者である、整形外科専門医の田代俊之医師にお話を伺いました。(以下、田代医師のコメント)

症状は5~10年ほどかけてゆっくり進行する

 変形性ひざ関節は、年々少しずつ進行していく病気です。
 最初は、ひざの内側を押すとひざが強く痛みます。変形性ひざ関節症のほとんどはひざの内側が悪くなって0脚になるタイプです。ひざの内側を押してみて痛いようなら、変形性ひざ関節症が始っています。しかし、この段階で病院行く方はほとんどいません。

 しばらくすると立ち上がりや歩き始めなど、動き始めが痛くなります。痛いのは動き始めだけで、動き出すと痛くないので、この段階でも病院に行かずに様子をみる人がほとんどです。もう少し進むと、階段を下るときにひざが痛み、階段を1段ずつ下りるようになります。この段階になってようやく病院を受診するようになります。

 さらに進むと、平らなところ歩いているときにもひざが痛くなり、痛みで長く続けて歩けなくなります。そのころからひざの曲げ伸ばしが硬くなり、正座ができない、長座でひざが伸ばせない状態になります。そのうちに歩きすぎたあとにひざに水がたまるようになり、病院で水を抜いてもらう機会が増えてきます。

 このような症状が5~15年かけて少しずつ進み、気づいたときは脚がO脚に変形しています。そして、さらに重症化すると歩く距離が減り、全身的な老化が進むだけでなく、外出する機会が少なくなり、認知機能低下やうつ病症状が進むことがあります。
 
進行は一方通行。現状を知り、ひざの軟骨をもたせる

 変形性ひざ関節症の進行は一方通行で、軟骨がすり減ってしまうと元に戻ることはありません。そのため、いまどの段階にあるのかを知ることが大切です。その上で、最期まで自分の足で歩くことができるように、いまあるひざの軟骨をいかにもたせるかが、治療における基本戦略になります。

 治療におけるもっとも重要な基本戦略は「運動療法」です。ひざが痛くても、適切な運動療法を行えば、ひざの炎症が治まり、筋力がついてひざにかかる負担が減り、痛みが改善します。運動することで体重が減っていけば、ひざへの負担がさらに軽くなります。ひざへの負担が軽くなれば、それだけひざの軟骨をもたせることになります。
 
 運動療法の1つとして、「寝て足上げ」を紹介しましょう。これは、仰向けで片足を伸ばしたまま、床から10センチほど上げて5秒保つ体操です。太ももの前側の筋肉が鍛えられ、ひざ関節が安定し、ひざにかかる衝撃が軽減します。こうした筋力トレーニングやストレッチなどの運動療法を続けることで、ひざの痛みが解消したという方は多数います。

 勤務する病院で毎月開催している「中高齢者のひざ痛教室」では、ここで紹介できなかった治療や手術、ひざ痛を改善する体操、ひざの仕組みなどを紹介しています。参加者からの質問にもお答えしていますので、ぜひお気軽にお越しください。(後編終わり)

前編はこちら


田代俊之
JCHO東京山手メディカルセンター整形外科部長。
ひざ関節の疾患を専門とし、靭帯損傷、半月損傷、変形性関節症などについて、長年にわたって幅広く対応している。2004年より中高齢者に向けたひざ痛教室を毎月開催している。日ごろよりスポーツに親しみ、バレーボールは趣味として、ランニングは健康のために続けている。日本整形外科学会専門医。日本スポーツ協会公認スポーツドクター。陸上競技実業団チーム(長距離)のドクターも務める。著書は『図解・即解!基礎からわかる健康シリーズ 変形性ひざ関節症』(ベースボール・マガジン社)など。

中高齢者のひざ痛教室
田代医師が開催する「中高齢者のひざ痛教室」では、ひざに痛みを生じる病気、特に変形性ひざ関節症について、ひざの仕組みから、病気の基礎知識、治療法、手術などについて紹介しています。
日時:毎月第3火曜日15~16時(今後の予定:2022年9/20、10/18、11/15、12/20)
場所:JCHO東京山手メディカルセンター 2階研修センター
申込:不要(直接会場へ)
※ 病院の「中高齢者のひざ痛教室」のWebページより開催日をご確認の上、ご参加ください

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