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2022-07-17

【相撲編集部が選ぶ名古屋場所8日目の一番】照ノ富士、トップに並ぶも、伊之助の失態で興ざめ

佐渡ケ嶽審判長(元関脇琴ノ若)の指示で、「廻し待った」前の状態に戻す

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照ノ富士(下手投げ)若元春

出羽海部屋から新型コロナ陽性者が出て、同部屋の力士全員が休場となったが、8日目も新十両の欧勝馬が取組後にPCR検査を受け、陽性となってしまった。鳴戸部屋の力士は全員休場。これ以上、広がらないといいが。
 
優勝争いの単独トップだった1敗の逸ノ城は琴ノ若に敗れて、2敗がトップグループとなった。これで照ノ富士が勝てば、トップに並ぶのだが、前代未聞の珍事が起きてしまった。
 
照ノ富士の対戦相手は初の結びとなる若元春。十両で一度対戦があり敗れているが、横綱になった照ノ富士には初挑戦となる。若元春はガチガチの左四つで、照ノ富士とはケンカ四つになる。四つ相撲相手で照ノ富士は取りやすいだろうと見られていた。
 
立ち合い、若元春は頭から当たっていくと得意の左を差し、右上手もガッチリ。照ノ富士も左下手を引きつけて寄るが、若元春は懸命に残す。照ノ富士の左下手投げに上手を離さず、頭をつける低い体勢の若元春。照ノ富士は相手の左差し手を嫌って右手で手首をつかんで膠着状態となった。
 
照ノ富士が右手を伸ばして足を狙うと、若元春は左を差し込み胸が合う体勢。照ノ富士は右上手が取れず、右から絞る。左下手は一枚廻しとなり、力が伝わりにくい状態だ。2分が経過し両者の体が起きる。照ノ富士が右手を伸ばして上手を取ろうとするが取れず、ここで若元春が最後の力を振り絞って寄り立て、横綱を土俵外へ運んだが、その前に伊之助が「廻し待った」。
 
何度もスローを見たが、若元春が動き出してから待ったをかけている。完全に伊之助の失態だ。「廻し待った」の場合、両者の動きが止まっているときに「廻し待った」と言って、2人の背中を叩かなければいけない。声も小さかったのだろう。止めようとした伊之助は若元春の背中を叩いていないので、照ノ富士しか気付いていない。照ノ富士は明らかに力を抜いていた。
 
長い協議の末、「廻し待った」の直前から取り直すことになった。若元春が土俵下に降りたとき、勝ち残りの正代が廻しを締め直している。これも廻しが緩んだ状態で組み合い、伊之助が廻しを締め直すのが正しいやり方ではなかったか。
 
照ノ富士の左下手は一枚で力が伝わらなかったのが、ガッチリとつかんでしまっていた。再開後、若元春があおりながら寄って出たが、照ノ富士は左下手を引きつけて体を入れ替え、下手から投げ捨てた。
 
敗れた若元春は、「廻し待ったは全然わからなかった。だから勝ったと思ったんですけど、横綱が不思議そうな顔をしていたので、何かあったのかなと。再開後は体力的に限界だったので、速く攻めようと思っていた。出し切りました」と清々しい表情。
 
もし、待ったがなければ、照ノ富士はさらに辛抱しただろうし、若元春は体力が尽きかけていたので、横綱が2敗を守ったのだろうが、伊之助の失態で後味の悪いものになってしまった。

文=山口亜土

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