無観客のチャンピオン・カーニバル、日本スーパーフライ級タイトルマッチ10回戦は22日、東京・後楽園ホールで行われ、チャンピオンの中川健太(34歳=三迫)が、ランキング1位の挑戦者、ユータ松尾(30歳=ワールドスポーツ)を9回1分55秒、3-0の負傷判定で破った。中川は初防衛に成功した。
上写真=中川はコツコツとパンチを当てて、ポイントを積み上げた
小見出しに使用したこの文言。「観客に見せられる試合じゃなかった。今日は0点です」とも付け加えた。2016年に初めて日本王者になったとき、かなわなかったタイトル初防衛だが、今度は指名挑戦者を相手に守り切った。それでも、中川の自己評価はtごことん厳しかった。それも仕方ない。中川自身が感じたとおりの試合だったのは事実である。
無観客だったことがそんな印象をより強くした面もあるが、戦いが白熱したり、スリルに湧き立つ瞬間は一度としてなかった。まずは松尾の戦いの意図がよく見えない。フィジカルの強さをベースに戦うのが持ち味で、この日も自分から距離を詰めていく。だが、肝心のパンチはなかなか出てこない。中川の左構えが、よほどやりにくかったのか。これまでサウスポー相手には6勝(4KO2敗1分)と決して不得意ではないはずだが、すべての攻めが中途半端のまま途切れていく。
中川も積極的というわけではなく、攻撃頻度は乏しい。接近戦を嫌って相手にしがみつくのも見栄えが良くなかった。
ただ、確かだったのは、中川がほぼ一方的に戦いを推し進めていったことだ。挑戦者の出方をいぶかしんでか、間欠的ながらも左ストレート、右フックとコツコツ当てていく。松尾の反撃はほとんどなく、ひたすら淡泊な展開が続くのだが、どの局面を切り取っても中川の“色”に染まっていたように思う。
5回終了後の公開採点では一人のジャッジが49対46だったものの、残る二人は48対47で中川のリードと意外に競っていたが、これをきっかけに中川はようやくペースを上げていく。左ストレートをボディ、顔面に散らし、右フックも効果的にヒットする。松尾はやはり何らの対応もできなかった。ポイント差はぐんぐんと開いていった。
迎えた9回。中川の切れいい左がヒットしてほどなく、両者の頭がぶつかる。中川が左目じりの上、松尾が額からとともに流血を見た。レフェリーの中村勝彦は両者の傷をドクターに見せる。一度は再開を許したが、すぐにドクターチェックを再要請し、そのまま両者続行不能として、試合終了をコール、勝負をそこまでの採点に委ねた。その採点は88対83、88対84、88対84と、3ジャッジともはっきりと差をつけていた。
現在、三迫ジムには史上最多記録となる6人もの日本チャンピオンがいる。
「それがプレッシャーになるし、幸せでもあります。勝因は三迫ジムに入れたことです」。「でも、その6人のチャンピオンの中で、自分は最低ですが」。
オンラインでの会見でも、中川は自分への厳しいコメントを並べた。だが、勝てば次が必ずある。そんな安堵ものぞかせていた。
60㎏契約の6回戦では、東洋大学ボクシング部主将だった木村蓮太朗(23歳=駿河男児)がプロデビュー戦のリングに立ち、9戦のキャリアを持つ東祐也(北海道畠山)を2回1分23秒TKOで下した。
全日本選手権、国体などで3度の日本一になっているサウスポー、木村の立ち上がりはがちがち。力みかえって荒っぽい打ち合い挑んだ。だが、2回、ようやく落ち着きを見せた木村は、痛快に戦いを終わらせる。左ストレートで半ば意識が飛んだ東に右アッパーカットをフォロー。ゴロンと仰向けに倒れこんだ東を見て、レフェリーはノーカウントで試合を止めた。
「(プロは)どんな感じなのかと確かめながらスタートしたが、ちょっとムキになってしまいました」と木村。「でも、左ストレートから、すんなりと出た右アッパーで倒せたのはよかったです」。そして、「今回は無観客試合で応援してくれる人もこれなかったが、有観客になったとき、待たせたぶん、最高の試合を見せます」と決意を語った。
文◎宮崎正博 写真◎小川原友信
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