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2022-07-20

新日本初の60分フルタイム…アントニオ猪木vsビル・ロビンソンは“プロレス者”へ投げかけた“底が丸見えの底なし沼”新日本プロレス歴史街道50年(47)【週刊プロレス】

アントニオ猪木vsビル・ロビンソン

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昭和の時代、一流レスラーの条件の一つとして60分フルタイムを経験しているかがあった。時代が平成に移ってからは試合展開もスピードアップし、制限時間60分の闘いはタイトルマッチやスペシャルマッチなどごく一部に限られるため、その条件も自然消滅してしまった感が強いが、1時間闘えるだけのスタミナを備えていてこそ真のトップレスラーであるとの考えが強かった。しかし、実際はそれだけでなく、決着がつかずとも観客を満足させる技量も求められる。ここでは新日本プロレス50年の歴史における60分フルタイムマッチを振り返る。

新日本プロレスで初めて60分フルタイムが記録されたのは1975年12月11日、蔵前国技館でおこなわれたアントニオ猪木vsビル・ロビンソンだった。

日本プロレス時代、猪木はドリー・ファンク・ジュニアと2度の60分フルタイムを闘っている。当時のドリーは“世界最高峰”をうたっていたNWA世界ヘビー級王者。1969年12月2日、大阪府立体育会館でも初対決はノーフォールでの時間切れ。この一戦の猪木生涯のベストバウトに挙げるファンも多い。

当時のロビンソンは“欧州最強”の看板を引っ提げ、国際プロレスのエースを経て、アメリカに主戦場を移していた。一方の猪木は、実力で日本一を手に入れようとしていた時期。すでに国際プロレスの元エースだったストロング小林を2度にわたって破り、日本プロレス時代の先輩である大木金太郎も撃破した。残るターゲットはは全日本プロレスの御大、ジャイアント馬場となったが、こちらはそう簡単に実現にはこぎつけられない。

だが、動いたのは馬場だった。猪木vsロビンソンが決定したと聞いて、「俺と闘いたければ、ここに出てこい」と全日本プロレスがオープン選手権を開催。しかも猪木vsロビンソンと同日に「力道山十三回忌追善特別大試合」を企画したのだ。結果的に猪木は、すでに決まっているからとの理由でBI対決をあきらめ、「内容で勝負する」とロビンソン戦に出撃した。

1本目をロビンソンが一瞬の逆さ押さえ込みで先制。その時点ですでに試合は40分を経過していた。そのまま時間切れに持ち込めばロビンソンの勝利。NWFルールでベルトは移動する。

全体的に互いに相手の仕掛けていた技をカットするといった展開の中、2本目は猪木が積極的に攻撃を仕掛け、50分を過ぎたあたりから大技で追い込んでいく。しかしカウント3は奪えない。次第に焦りからラフな展開に。残り1分余るで卍固めが決まる。そのまま時間切れまで耐えるかと思われたロビンソンだが、残り48秒でギブアップ。

そのまま引き分けになるかと思われたが、3本目のゴングが鳴るや猪木がドロップキックの連発でラッシュ。しかしエルボーの打ち合いになったところでタイムアップのゴングが鳴らされた。

若手時代の猪木はテクニシャンを目指していた。そう考えるとロビンソンは、猪木が理想とする闘いができた相手だった。決着戦が期待されたが、翌1976年夏、ロビンソンは全日本に“移籍”。さらなる名勝負を紡ぐことなく封印されてしまった。

この一戦を猪木生涯の名勝負に推すファンも多いが、面白い見方をしていたのは“I編集長”こと「週刊ファイト」の井上義啓氏。「猪木がロビンソンの力を100%ではなく120%引き出して闘っている」と見たうえで、すでにAWA入りしていたロビンソンをアメリカンスタイルに染まった男と評し、そのロビンソンを猪木が否応なしにストロングスタイルの世界に引き込んだ闘いと論じている。そして、「そう言われて“ああ、そうか”と気づくようでは“プロレス者”とは言えないですよ」。

多少、ラフな展開はあったものの、互いに持てる力をぶつけ合い、タイムアップ寸前に必殺技でドローに持ち込んだ名勝負。それだけで納得してしまっては、この一戦の本質は見えてこない。猪木vsロビンソンこそ、“底が丸見えの底なし沼”の闘いである。

橋爪哲也

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週刊プロレスNo.2193 (2022年8月3日号/7月20日発売) | 週刊プロレス powered by BASE

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