15日発売のボクシング・マガジンでは、『日本の世界チャンピオン』を特集しているが、付随する企画として、その黎明期から世界に飛び出るその前夜までの読み物を掲載、そして日本のボクシングの根幹をなすジムの系譜も追っている。
上写真=昭和初期、ジムでスパーリングをする選手たち
今や世界でも有数の世界チャンピオン量産国になった日本だが、もちろん一朝一夕にしてそうなったわけではない。ひとたび、グローブを握ったなら、心の奥に秘めるのは、だれしも同じ。もちろん、昔も今も世界チャンピオンである。だが、黎明期の日本にとって、世界一の位置はどこまでも遠い。その道のりの険しさに、思わず立ち止まったこともある。
幕末から明治初期にかけて、欧米の艦船の船乗りたちが『戦いの技法』を紹介したとあるが、多くは伝承の類として割愛させてもらった。物語は異国の新たな人生の足がかりを求めて、アメリカに移り住んだ日系人のロマンを枕に、明治29年、横浜にできたメリケン練習所から始まる。大正期に初めて本格的なボクシングジムができ、有力選手の多くが、海を渡って戦った。だが、巨大な壁を破ることはできず、やむなく日本に帰ってくる。それほどに世界との差は大きかった。
太平洋戦争終結後、白井義男が日本人として初めて世界チャンピオンになったとき、敗戦国・日本の大衆の感動はもちろんながら、草創の時代に夢を馳せた古老たちの思いは、なお、ひとしおだったに違いない。
その日本で定着したのが、ジム制度である。海外のようにプロモーターが試合を作り、マネージャーが選手を管理するシステムではなく、日本独自のシステムだ。武道の道場にならい、会長とその高弟が、興行の組み立て、指導をともに担う。大正11年の日本拳闘倶楽部(日倶)から本格的に始まるジム制度は、形をほんのり変えながらも、その後100年近くも日本のボクシングを支えてきた。そして、現代に存在するジムもその多くは、系譜をたどれば、その日倶、そして神戸を出発点に東京に進出してきた大日本拳闘会(大日拳)のどちらかにたどり着く。今のボクシングをもっと楽しむためにも、その歴史を学べば、奥行きが感じられるかもしれない。
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