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2022-08-08

【ボクシング】“次代のスター候補”下町俊貴&前田稔輝。サウスポーコンビが躍動し鮮やかKO勝利

本石会長(右端)も前田(中央)、下町の出来栄えに王座挑戦へGOサイン

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 次代を担うグリーンツダジムの25歳のサウスポーコンビがそれぞれ持ち味を見せて躍動した──。7日、大阪・枚方市立総合体育館で『CRASH BOXING Vol.26 in 枚方』が開催され、メインのフェザー級8回戦は、日本スーパーバンタム級9位の下町俊貴(しもまち・としき)が元日本ランカーの水野拓哉(27歳=松田)を寄せつけず、レフェリーストップによる7回1分38秒TKO勝ち。セミの58.0kg契約8回戦では、日本拳法出身の日本フェザー級5位・前田稔輝(まえだ・じんき)が元WBOアジアパシフィック・スーパーバンタム級王者のジュンリエル・ラモナル(33歳=フィリピン)を得意の左ストレート一撃で痛烈に倒し、テンカウントを聞かせる2回35秒KO勝ち。下町は15勝(11KO)1敗2分、前田は全勝レコードを10勝(5KO)と伸ばし、そろって快勝をはたした。


文&写真_船橋真二郎
Text & Photos by Shinjiro Funahashi


「怖かった」連発も6連続KO勝利の下町

恐怖(!?)から解放され、ホッとした表情の下町

恐怖(!?)から解放され、ホッとした表情の下町

 試合後のインタビューでは、ボソボソと小声で自信なさげに話す。そのギャップがまた不思議な魅力を醸す長身サウスポーの下町が振り返る。

「途中、効いたんちゃうかな? と思ったところで行っても全然、倒れなくて。これ、行ったら、ガス欠して、逆にやられるんかな? とか思ってて。何発かパンチが当たっても(水野が)『来いや、来いや』と言ってて、怖かったんですけど……。でも、その分、効いてるから、ごまかしてるのかなと、冷静に考えることができました」

 水野が攻めているようで、ボディワークでするりとかわし、またサイドへのターンでするりといなしては左右を見舞う。水野がガードの間から左アッパーを巧打しても、後続打は決して許さない。ロープを背負うシーンも少なくはなかったが、どこまでも落ち着いていた。

 下町は3回、5回と一発効かせるや、躍りかかるように5連打、6連打を猛然とまとめ、しっかりと展開にアクセントをつけた。一昨年8月、東京・後楽園ホールで松本亮(大橋)に判定負けして以来、約2年ぶりのリングだった水野も持ち前の気持ちの強さを見せて、前に出続けたが、攻めてはかわされ、迎え撃たれ、ダメージを蓄積していった。

 フィニッシュラウンドとなった7回も同じだった。逆転を狙って、前に前に出た水野だったが、逆に下町の左、右、左のスリーパンチコンビネーションを繰り返し狙い打たれ、棒立ちになったところでレフェリーが救った。

 リング上のインタビューの出だしも(水野は)「怖かったです」「すごかったです」とボソッとやって、会場の笑いを誘った下町。それでも「ラッキーパンチじゃなくて、長いラウンドやって、最後に仕留められたのは、デカいと思います」と控えめに胸を張ったが、これで3連敗となった、かつての中部のホープを手玉に取るような巧みな試合運びは見事だった。
 
左一閃で強豪沈めた前田

トレーナーで父の忠孝さんと撮影に応じる前田

トレーナーで父の忠孝さんと撮影に応じる前田

「感触はありませんでした。倒すときはいつも無意識で、感覚なしに打てるので。それがよかったのかな、と思います」。そうフィニッシュブローを振り返った前田。ラモナルの一瞬の隙に体が反応した。2回。先に右のパンチを前田のガードの上から叩きつけたラモナルが、フェイントだったのか、それとも躊躇したのか。右を打ちかけて1回引き、また打ち出しかけたところに前田の左ストレートが一閃。ぐにゃりと沈んだラモナルのダメージは深く、規定のテンカウント以内に立ち上がれなかった。

 これがキャリア初の外国人相手。「ハードパンチャーで、フィリピン人特有のリズムがあるので、警戒しながら」。その言葉どおり、やや遠めの位置取りを意識し、ロープを背負いかけるとすかさず体を入れ替えた。一方で「それ以上にしっかり自分のボクシングに徹したら、絶対に勝てると信じていたので」。鋭く右ジャブを飛ばし、左ストレートを上下に打ち分け、ラモナルの反応もうかがった。

 インスピレーションはつかんでいた。「1ラウンドに左が相打ちのカウンターで当たったので、合わせていこうと思いました」。日本拳法で培った反応のよさには自信がある。こちらは「ここ最近、KOを見せられてなかったので。久しぶりにみなさんの前でKOを見せることができてよかったです! ありがとうございます!」と溌剌と答え、喝采を浴びた。

本石会長も王座挑戦へ確かな手応え

 対照的で、だからこそ、魅力的なサウスポー2人を「今すぐにでも日本タイトルでも、東洋でも、挑戦したら、勝つ自信があるな、というぐらいまで成長してくれた」と称えた本石昌也会長。下町に関してはタイトル挑戦希望はすでに表明。前田については「まだキャリアが浅く、クエスチョンな部分もあったが、今日の相手にあの勝ち方は僕の想定以上」。和氣慎吾(FLARE山上=元OPBF東洋太平洋チャンピオン)、久我勇作(ワタナベ=元日本チャンピオン)、いずれも王者経験者を痛烈KOで下したこともあるラモナルを圧巻の一撃KOで下し、期待を口にした。「もちろんタイトルは簡単ではないでしょうけど、(強い相手と)決まったら、さらに成長するのが前田だと今回、あらためて感じた」。次回の主催興行は12月11日に大阪府立第2競技場で予定も「(下町も、前田も)タイトルなら、東京でも、どこへでも行く」と意欲を示した。両者のタイトルへの思いは――。

「僕の階級のチャンピオンは、みんな強いんで、やりたい気持ちと怖い気持ちが半々ですけど、決まったら決まったで、そこに調整するだけ。決まれば頑張ります」(下町)。現在のスーパーバンタム級の日本、WBOアジアパシフィック王者は、バンタム級で世界王座返り咲きのときをうかがう井上拓真(26歳=大橋)。東洋太平洋王座は空位で今月26日、元Kー1世界王者の武居由樹(26歳=大橋)が後楽園ホールでペテ・アポリナル(27歳=フィリピン)と決定戦を行う。

「ずっとやりたいという気持ちはありつつ、キャリアを重ねてきたので。いつチャンスが来てもいいように日々、いいメンタルとコンディションで練習を積み重ねていくことが重要。引き続き、頑張りたい」(前田)。フェザー級は、阿部麗也(29歳=KG大和)が日本とWBOアジアパシフィック王座の2冠を占め、現在はWBOアジアパシフィック王座の指名試合を調整中。東洋太平洋王座にはロンドン五輪銅メダリストの清水聡(36歳=大橋)が君臨する。

 ともにタイトルに絡んでいくのは来年以降というのが現実的だが、ここからトップ戦線でどう存在感を示していくか注目の2人である。

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