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2022-08-10

【ボクシング】ダウン2度ずつの壮烈ファイト! 藤田炎村が湯場海樹に大逆転TKO勝利

大逆転KOの瞬間。藤田の執念が湯場を凌駕した

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 9日、東京・後楽園ホールで行われたダブルタイトルマッチの前座戦は、それら以上の白熱ファイトに──。スーパーライト級8回戦、日本同級5位の藤田炎村(ふじた・ほむら、27歳=三迫)は、初回に2度ダウンを奪われる大ピンチのスタートながら、日本ライト級15位(日本ユース同級王者)の湯場海樹(23歳=ワタナベ)から4回に2度ダウンを奪い返し、58秒TKO勝ちを果たした。

文_杉園昌之(藤田対湯場)、本間 暁(宝珠山対川崎、磯谷対田中)
写真_山口裕朗

 日本ランクの上位をうかがう注目の1戦は、初回から予想を超える派手な展開となる。本名の裕崇(やすたか)から、リングネーム使用初戦となった藤田は、開始のゴングとともに勢いよく飛び出し、様子見などお構いなしとばかりにぐいぐい前に出る。2人の距離がぐっと近くなったそのときだ。アマチュア経験豊富な湯場の左ストレートをまともにもらい、そのままキャンバスにヒザをついた。すぐに立ち上がったものの、明らかに動きは鈍くなっていた。ダメージの回復に努める間もなく、次は右フックを顔面に受けて、2度目のダウン。まさに万事休す。スイッチして左構えで奇襲を仕掛けたものの、あっさりと返り討ちにあったのだ。
 それでも、勝負をあきらめていなかった。ラウンド終盤はなりふり構わず、反則ぎりぎりの抱きつくようなクリンチで必死に時間を稼ぎ、何とかやりすごした。

 藤田はインターバルでしっかり休むと、2回から息を吹き返して反撃。低い体勢で圧力をかけながら相手の懐に潜り込むと、インサイドから強烈なボディを次から次に叩き込む。あっという間に風向きは変わった。湯場の嫌がる顔を確認しつつ、執拗に近距離からパンチを浴びせていく。後頭部への打撃で減点こそされたが、一気にペースを奪い返した。

父・忠志(元日本5階級制覇王者)譲りの必殺の左で痛烈に倒した湯場
父・忠志(元日本5階級制覇王者)譲りの必殺の左で痛烈に倒した湯場

 続く3回も徹底して距離を詰めて、サウスポーの左ストレートを封殺。ロープに追い詰めると、体がくの字に曲がるまでボディを攻めた。3回には、すっかり立場は入れ替わっていた。闘志がにじむ表情でパンチを打ち込む藤田と余裕のない顔で耐える湯場。勝負の行方は見えたと言っても過言ではなかった。

 そして、迎えた4回。ボディを意識させたところで、待ってましたとばかりの右フックを顔面へ。湯場が思わずキャンバスに尻もちをつき、ロープを持って起き上がってくるところを藤田は鋭い目でじっと見ていた。弱り果てた獲物を逃すことはなかった。すぐさま畳み掛けて、再び右フックで完全に相手を沈めた。驚くような逆転TKO勝ちに後楽園ホールは熱気と興奮に包まれた。

 4連勝とした藤田の戦績は10戦9勝(6KO)1敗。試合後のリングでは「次は銀色(日本)のベルトがほしいです」とあふれる野心を口にした。敗れた湯場は12戦8勝(5KO)2敗2分。1年前の佐々木尽(八王子中屋)戦と同じような逆転KO負けだった。

宝珠山が8連勝/“レジェンドの孫”磯谷が3連続KO勝利

宝珠山は、左を意識させておいて右フックで川崎を倒した

宝珠山は、左を意識させておいて右フックで川崎を倒した

 フライ級8回戦は、日本同級14位の宝珠山晃(ほうしゅやま・あきら、26歳=三迫)が川崎智輝(23歳=SUN-RISE)を77対74、79対72、79対72の3ー0判定で退けた。
 初回、左ストレートを上下に鋭く刺していた宝珠山が、左ストレートを放ち、右サイドの死角から右フックを返すと、川崎はグローブをキャンバスに着くダウン。
 その後も、右へ右へとじりじりとポジションをずらしていった宝珠山は、左ストレートと右フックを多用した。が、正面から入る際に、川崎は右ショート、あるいは右ボディアッパーをヒット。宝珠山がプレスをかけてロープに押し込むものの、川崎はその都度ショートブローで反撃してみせた。
 前WBC世界ライトフライ級王者・矢吹正道(緑)が「似ている」と認め、“仮想・寺地拳四朗”としてパートナーに抜擢してきた川崎は、上下に小刻みにポンプする独特のリズムの取り方がたしかに似ている。そうして築く間合いに、宝珠山もやや戸惑いを見せる。しかし、惜しむらくは、宝珠山のタイミングを狂わせて放つ右ストレートが、ヒットこそすれど相応の効果を上げないことだ。上体が浮き、軸足(右足)が前方へ流れる癖があるため力が乗らないからだ。再三決めた右ボディアッパーは、重心が落ちて体重も乗るから効果的。それを警戒した宝珠山は回を追う毎に反応し、距離で外していった。
 宝珠山も、顔面への攻撃から左ストレート、右フックとボディ攻撃に切り替えたのが奏功した。川崎もその都度気力を振り絞って反撃してみせたのだが、逆転するまでには至らなかった。
 宝珠山の戦績は8戦8勝(4KO)。川崎の戦績は5戦2勝3敗となった。

ボディを攻め立てる磯谷
ボディを攻め立てる磯谷

 あの「輪島功一の孫」として注目される磯谷大心(いそたに・たいしん、21歳=輪島功一スポーツ)は東日本新人王ウェルター級予選4回戦で、田中慧士(たなか・けいし、22歳=花形)に3回1分50秒TKO勝ち。左を上下に送り、右強打でリードしていた磯谷は、右ボディブローでダメージを与え、連打でレフェリーストップに持ち込んだ。左の打ち終わりに“癖”があり、田中もそこを狙ったが、それを察知した磯谷は修正する対応力も披露した。次は準決勝戦。9月26日に佐藤賢治(30歳=REBOOT.IBA)と対戦する。

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