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2022-08-21

【ボクシング】国内選手も注目のナバレッテがボディ一撃で3度目の防衛

得意のアッパーカットを決めるナバレッテ

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 WBO世界フェザー級チャンピオンのエマヌエル・ナバレッテ(27歳=メキシコ)が20日(日本時間21日)、アメリカ・カリフォルニア州サンディエゴのペチャンガ・アリーナで3度目の防衛戦を行い、同級7位の挑戦者エドゥアルド・バエス(27歳=メキシコ)を左ボディブローで悶絶させ、6回1分5秒KO勝ちを収めた。

文_宮田有理子
Text by Yuriko Miyata
写真_マイキー・ウィリアムス(トップランク)
Photos by Mikey Williams(Top Rank)

ボディブロー一撃でバエズを跪かせた
ボディブロー一撃でバエズを跪かせた

 挑戦者バエスの奮闘に、ジャッジ3者のうち2者のスコアが流れるなかで迎えた6回だった。王者ナバレッテがチーフセコンドでいとこのペドロに「相手にポイントがいっているままではよくない。展開を変えろ」とハッパをかけられてコーナーを出ると、あっという間に決着をつけてみせた。ギアを上げたチャンピオンが右アッパーからコンパクトな左アッパーをボディへ。ひと息おいてフロアにひざまずいたバエスは、片膝を立ててカウントを聞いていたが、痛みに耐え切れなかったのだろう。苦悶の表情で体を丸め、キャンバスに転がり、しばらく立ち上がることができなかった。

「思ったよりも複雑な試合になったのは、バエスがパンチを当てにくい選手であることと、自分の10ヵ月のブランクも影響したと思う」。大柄な体格、長い腕を生かした攻撃力で最後は鮮やかな結末を演出しても、ナバレッテのコメントは控えめだった。

 2018年末のアメリカ進出初戦でアイザック・ドグボエ(ガーナ)のWBO世界スーパーバンタム級王座を奪い取ってから、ちょうど10度目の世界戦。コロナ禍中もコンスタントに戦い、世界2階級制覇、防衛を果たしてきたナバレッテは、昨年10月のジョエ・ゴンサレス(アメリカ)への判定勝利・防衛以来10ヵ月の空白をつくった。プロモートチームを新たにし、トップランクとの複数試合契約を更新。「長く休むと不安が生じるものだが、キャンプインしたらポジティブな気持ちがすぐに戻った。キャリア最高の準備ができた」と、試合前には自信を語っていたチャンピオンだが、リング上では、スイッチが入るまで時間を要した。

打ち合うナバレッテとバエズ
打ち合うナバレッテとバエズ

 そこはバエスの大健闘を、称えるべきであるのだろう。ここまでKO負けがないタフファイターは、先月、WBC同級王座を失ったマーク・マグサヨ(フィリピン)のスパーリングパートナーを長く務めてきた。昨年11月、スーパーバンタム級世界ランカー対決でライース・アリーム(アメリカ)に惜敗した後、今年3月の再起戦でエンリケ・ビバス(メキシコ)に勝って今回、世界初挑戦のチャンスを手に入れている。そんなチャレンジャーは、王者がとる長い間合いに、速い仕掛けで斬り込んだ。ナバレッテのうなるような強打に怯まず、パンチを合わせにいった。が、ナバレッテが「これがメキシカンのパンチ。私の血がなせるもの」と胸を張ったボディブローには、ひれ伏すしかなかった。

10ヵ月ぶりに勝利を味わうナバレッテ
10ヵ月ぶりに勝利を味わうナバレッテ

 リミット体重57.1㎏のフェザー級の世界主要4王座は現在、メキシコとイギリスが占める。ナバレッテは今後、オリンピック2大会優勝の至宝ロベイシー・ラミレス(キューバ)ほかこの日の前座に出場したルイス・アルベルト・ロペス(メキシコ)ら同じトップランク傘下の挑戦者たちを迎えるのか。もしくは3階級制覇を期してスーパーフェザー級へ上げ、フェザー級王座を返上するのか。OPBF王座を持つ元五輪メダリストの清水聡(大橋)、日本およびWBOアジアパシフィックの二冠を有する阿部麗也(KG大和)をはじめとする日本の世界ランカーたちも注目しているはずだ。
 ナバレッテは37戦36勝(30KO)1敗。バエスは26戦21勝(7KO)3敗2分。

偉大な祖父モハメド因縁の会場で孫ニコが鮮烈KO/メキシカン無敗対決をデルガドが制す

今度は倒し切ったニコ・アリ
今度は倒し切ったニコ・アリ

着実に一歩一歩成長を遂げるニコ・アリ
着実に一歩一歩成長を遂げるニコ・アリ

 アンダーカードのミドル級4回戦でも、ニコ・アリ・ウォルシュ(22歳=アメリカ)が左ボディ一撃で鮮烈KO勝ちを飾った。“ザ・グレーテスト”、モハメド・アリの孫としてプロデビューしてから1年。目下ただ一度KOを逃した時の相手、レイジェス・サンチェス(30歳=アメリカ)との再戦で、よく動きながら上下を巧く打ち分け、コンビネーションでスキをつくり、脇腹にみごとな左を差し込んだ。時間は2回2分45秒。“アリ”の名を背負い、話題が先行した22歳は、はっきりと技術面の成長をみせている。「再戦という特別な戦いで、今までと違う自分を見せたいと思っていた。あのボディブローは自分が目指していたもの。一生懸命な努力が結果に結びついた」。この勝利にはもう一つ、“特別”な意味が。会場のペチャンガ・アリーナは1966年にサンディエゴ・スポーツ・アリーナとしてオープンし、1973年3月に、モハメド・アリがケン・ノートン(アメリカ)に敗れた場所。祖父がプロ61戦中わずか5つの黒星のひとつを味わったリングでの“雪辱”だった。戦績は6戦全勝5KO。

デルガドの右アッパーが炸裂
デルガドの右アッパーが炸裂

 ESPN放映前にも、マニア垂涎の好カード、メキシコ人同士のスーパーライト級8回戦が組まれた。2016年リオ五輪代表の27歳、リンドルフォ・デルガドと、大柄な23歳オマール・アギラル。ともに昨年9月にアリゾナで行われたWBO世界フライ級王者・中谷潤人(M.T)の防衛戦の前座に出場し、無敗レコードを伸ばしていた二人だが、若々しく精力的に攻撃をしかけるアギラルに対し、迎え撃つデルガドの巧さが光った。若手ホープの強振を見切るとコンパクトなカウンターで1ラウンドから鼻血を出させる。4回には鋭い右アッパーを機に山場も作り、後半は左右ステップに乗せたボクシングでアギラルの闘志を翻弄した。採点は77対75、79対75が二者の3-0。デルガドは16戦全勝13KO。アギラルは25戦24勝(23KO)1敗。

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