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2022-09-04

【ボクシング】井岡、田中の標的エストラーダ、苦闘勝利でゴンサレスとの3戦目へ

エストラーダ(右)がマイペースで戦えたのは序盤のみ。思わぬ苦戦を強いられた

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 3日(日本時間4日)、メキシコ・エルモシージョで行われたスーパーフライ級12回戦は、WBC同級フランチャイズ王者ファン・フランシスコ・エストラーダ(32歳=メキシコ)が、同級23位アルヒ・コルテス(27歳=メキシコ)に大苦戦。7回に左ボディブローでダウンを奪い、115対112、115対112、114対113の3-0判定勝利を収めたものの、12月に予定される“チョコラティート”ローマン・ゴンサレス(35歳=ニカラグア)との第3戦に暗雲が立ち込めた。

※フランチャイズ王者とは、WBC(世界ボクシング評議会)が実績・功績を考慮して、「レギュラー王者」より格上のチャンピオンと認めた選手に与えられる王座。現在の同級レギュラー王者はジェシー・ロドリゲス(22歳=アメリカ)

 エストラーダが普段どおりに落ち着いたボクシング、巧さを発揮したのは3ラウンドまでだった。コルテスの呼吸を読んで、タイミングをずらし、力感なくスムーズに空いたところへ的確に打ちこむスタイルを連続。世界的には無名のコルテスをそのまま突き放していくと思われたのだが、続く4ラウンドが“分かれ目”となった。

エストラーダ(左)はコルテスに、パワーだけでなく、上手さでも上回られた場面があった
エストラーダ(左)はコルテスに、パワーだけでなく、上手さでも上回られた場面があった

 エストラーダが距離を詰めると、コルテスはその距離だけスッと引いて王者を呼び込む戦いにシフト。エストラーダの入り際に、強い右、左フックを合わせにかかる。エストラーダは鼻を痛めて出血。それまでの冷静さを欠いてしまい、コルテスに呼応して強く入り、強打を放つがその都度、猛然と打ち返されてしまったのだ。

 名匠イグナシオ・“ナチョ”・ベリスタイン・トレーナーがセコンドに就くコルテスは、エストラーダを徹底的に研究していた。(コルテスから見て)左下方へ上体を落とすエストラーダの癖を誘発させ、そこへ右強打を打ち下ろす。そして、左ダブルからシンプルながら強い右ストレートで王者にロープを背負わせる。鼻をしきりに気にするエストラーダからは、すっかり余裕が消え失せ、コルテスの猛攻を必死にボディワークで回避するようになっていった。

左ボディブローがロマゴンとの第3戦へ繋いだ
左ボディブローがロマゴンとの第3戦へ繋いだ

 7回、激しい打ち合いの中、コルテスの右をかわしざまにエストラーダが左ボディブロー。わき腹を叩かれたコルテスは、思わずしゃがみこんでしまったが、その後はふたたび両者とも猛然と打ち合いへ。コルテスがエストラーダの入り際に、左ジャブをポンポンと当ててコントロールするシーンも増え、ダウンを奪って一気に抜け出したいエストラーダに、そうはさせなかった。

 左ボディブローを起点にコンビネーションを送るエストラーダと、アウトボクシングと打ち合いでパワー勝ちするコルテス。ポイントを振り分けるのが難しいラウンドが続いたが、ジャッジはエストラーダのプレスを評価したのだろう。また、地元観衆の声援も大きく彼を後押しした。

トータル4度目の防衛となるWBCに加え、リングマガジン・ベルトを掲げるエストラーダ。だが、表情は冴えなかった
保持するWBCベルトに加え、リングマガジン・ベルトを掲げるエストラーダ。だが、表情は冴えなかった

 DAZN中継内で、延期となっていたゴンサレスとの決着戦(過去1勝1敗)は「12月3日」とアナウンスされた。この試合を見ていただろうロマゴンは、手に汗を握りながら見守っていたに違いない。また、エストラーダとの対戦を目指しているWBO王者・井岡一翔(志成)、4階級制覇を狙い、エストラーダ戦を目標と掲げる田中恒成(畑中)も、標的の戦いぶりに冷や冷やし、かつ攻略法を見い出していただろう。

 エストラーダの戦績は46戦43勝(28KO)3敗。敗れたものの、大いに名を上げたコルテスは28戦23勝(10KO)3敗2分。

文_本間 暁(DAZN視聴)
写真_ゲッティイメージズ

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