close

2020-02-24

ジリジリと本領発揮。超多忙王者ナバレッテが9ヵ月でV5

WBC世界ヘビー級戦の前座、WBO世界スーパーバンタム級戦では王者エマヌエル・ナバレッテ(メキシコ)が、ジェー・サンティシマ(フィリピン)を11回2分20秒TKOで破り、5度目の防衛に成功している。

上写真=長いアッパーカットを打ち込むナバレッテ

 今、世界で一番忙しい世界チャンピオン、ナバレッテはこの9ヵ月で5人目の挑戦者を迎える。前チャンピオン、アイザック・ドグボエ(ガーナ)とのリターンマッチを含め、ここまでの4人には圧倒的な勝ちっぷりで防衛を重ねてきた。この日は序盤こそもたついたが、しっかりとペースを上げ、最後は強さを見せつけた。

 左のロングジャブを上下に散らし、じっくり偵察している様子のチャンピオンに対し、先にギアを上げたサンティシマ。3回に右クロス、左ボディを叩きつける。ナバレッテはこれでやっとスイッチが入る。ロングアッパーとボディ攻めであっという間に挑戦者を下がらせた。ただ、その迫力満点のビッグパンチは、防御の穴にもなる。勇敢なサンティシマはそのスキを突いて、4回には左フックをヒット。チャンピオンをロープに追いやった。5回の猛攻を耐え切られたチャンピオンは、6回にもフィリピン人の左フックを被弾する。

 しかし、忙しい攻防の中でチャンピオンは距離を立て直し、スイッチを交えて攪乱しながら、重いパンチでチャレンジャーの体力を削っていった。10回終盤に連打で追い込み、迎えた11回。サンティシマを誘い込んで連打をたたみかけ、挑戦者陣営にタオル投入を決意させた。

 意外な長丁場となったものの、5度目の防衛もKO(TKO)で飾ったナバレッテは「試合前から言っているとおり、今回もKO勝ちを目指してきた。何度かパンチを効かせたけど、彼はコーナーが止めるまで、ダウンしなかった。本物のフィリピン人戦士だ」と話した。

 他団体のチャンピオンたちとの統一戦を常々、熱望してきたが、実現しないまま防衛を重ねてきた。この1月にWBAスーパー・IBF王座がダニエル・ローマン(アメリカ)からムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)にわたり、WBC王座を守るレイ・バルガス(メキシコ)とも対戦計画はない。「それなら統一戦を待つよりも階級を上げて戦う方がずっと現実的だ」とも語っている。だが、挑戦者と同じリミットいっぱいの122ポンドで秤を降りた体はまだ腹回りに余裕が見える。体格、パワーがよりアドバンテージになるのは、まだこのスーパーバンタム級と言えそうだ。

文◎宮田有理子 写真◎ゲッティ イメージズ

おすすめ記事

ボクシング・マガジン 2020年3月号

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事