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2022-09-25

【ボクシング】3階級ジャンプアップのテリ・ハーパーが2階級制覇

ハーパーの綺麗な右ストレートがヒット

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 24日(日本時間25日)、イギリス・ノッティンガムのモーターポイント・アリーナで行われたWBA女子世界スーパーウェルター級タイトルマッチ10回戦は、元WBC女子世界スーパーフェザー級王者で1位のテリ・ハーパー(32歳=イギリス)が、チャンピオンのハナー・ランキン(32歳=イギリス)を98対92、98対92、97対93の3-0判定で下し、3階級上げての2階級制覇を達成した。

写真_ゲッティイメージズ
Photos by GettyImages

 昨年11月、3度目の防衛戦でアリシア・バムガードナー(アメリカ)のカウンターを浴び、立ったまま失神するという痛烈な陥落劇を迎えたハーパー。今年3月に復帰して、ライト級戦に勝利しているものの、一気に階級を上げての王座返り咲きは、ともすれば無謀とも思われた。だが、打ち合いを避ける、距離を支配してランキンをコントロールする。それらが徹底されており、終わってみれば完勝。危ういシーンをひとつも作らずに、この快挙を成し遂げてしまった。

 スコットランド・グラスゴー出身のランキンに比べれば、ヨークシャーから来たハーパーにとっては地元のリング。大声援を受けてのテンションは最高潮で、集中力も初っ端から快調だったよう。持ち前の技術レベルの高さが、初回から存分に発揮された。基本的には遠い距離をキープして、ランキンにパンチを出させない。王者が打つタイミングを計り、思案する姿を見て取れば速いステップインから左をヒット。自分の体がいっそう温まってくると、さらに右ストレート、アッパー気味の左も追加して、クリーンヒットを奪った。初回には左目の下が早くも腫れたランキンは、2回にはハーパーの右を受けて左目上をカット。出血は止まらず、早々とこれもプレッシャーとなってしまった。
 リズム&ペースを出だしから完全に握ったハーパーは、王者が反撃しようとすれば、サッと間合いを外し、ふたたび自分の距離に戻る。持ち前のバランスの良さがあればこそで、特に左足の出し入れと、キック&バックの調整が絶妙だった。

速いジャブ、タイミングをずらしたジャブと、多彩にヒットしたハーパー
速いジャブ、タイミングをずらしたジャブと、多彩にヒットしたハーパー

 追えばフットワークでかわされ、カウンターを浴びる。待てば、タイミングのわかりづらいブローが飛んでくる。ランキンは、手を出すことすら叶わなくなる。クリンチ際に小突こうとしても、ハーパーは頭の位置も考えてこれを打たせず、逆に右アッパーを突き上げる巧みさを見せた。

 回を重ね、ランキンがハーパーの入り際に右ショート、あるいは左フックを合わせたラウンドもあったが、それはあくまでも合わせただけ。気を張っているハーパーは、以前見せた脆さもまったく感じさせず、強気に左フックの相打ちを挑み、これに優ってもみせた。ランキンの動きをすっかり掌握していたからこそ為せた技だ。

 7ラウンド、ロープ際を自在に動いていたハーパーを追ったランキンが右を繰り出すと、これをかわしたハーパーは強烈な右カウンターをヒット。その後もウィービングしながらの左右へのサイドステップなど、テクニシャンぶりを披露し続け、最終回残り30秒からはサウスポーにスイッチ。左トリプルを見せてクリーンヒットを奪い、勝利を決定づけた。

初めて手にするWBAベルト(右)を喜ぶ新王者
初めて手にするWBAベルト(右)を喜ぶ新王者

 ハーパーの戦績は15戦13勝(6KO)1敗1分。マイナーのIBO王座とともに2度目の防衛に失敗したランキンは18戦12勝(3KO)6敗となった。

ヒューズの右がガラハドの顔面を捉える。世界一線級に比べれば、あらゆる点で両者は後塵を拝す
ヒューズの右がガラハドの顔面を捉える。世界一線級に比べれば、あらゆる点で両者は後塵を拝す

 メインイベントして行われたIBOライト級戦12回戦は、王者マキシ・ヒューズ(32歳=イギリス)が、元IBF世界フェザー級王者キッド・ガラハド(32歳=イギリス)を114対114、116対111、114対113の2-0で下し、2度目の防衛に成功した。
 サウスポーのヒューズが下がりながらのアウトボクシング、頻繁に左右にスイッチするガラハドが距離を詰めるという展開だったが、中盤までは左を上下に多く突いたヒューズが制し、後半はボディブローでガラハドが徐々に追い上げた。しかし、ともにクリーンヒットはいまひとつ。ガラハドは序盤から、右構えの際に前足でヒューズの足を踏んだり、ローブローを注意されたり、果ては10回にクリンチ際の頭突きで減点を受けるなど、“制約”も多く、動きに迫力を欠いた。
 ヒューズの戦績は33戦26勝(5KO)5敗2分。昨年11月、キコ・マルチネス(スペイン)に衝撃的KO負けを食らってフェザー級王座を喪失。それ以来の復帰戦に敗れたガラハドは31戦28勝(17KO)3敗。

文_本間 暁(DAZN視聴)

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