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2022-09-28

【NFL】珍プレー「尻パント」で逃げ切った?番狂わせ続出の第3週まとめ

ドルフィンズPモルステッドが、エンドゾーン内でパント。味方のブロッカーの臀部にボールが当たって跳ね返り、セーフティー=photo by Getty Images

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アメフトの世界最高峰、米プロフットボール・NFLの第3週は、現地9月24日に、全米各地で14試合が開催された。第2週まで無類の強さを見せていたビルズがドルフィンズに敗れた。同じく2勝のチーフスは2敗のコルツに、敗退。チャージャーズもジャガーズに大敗した。14試合中8試合が4点差以内、10試合が8点差以内という接戦続きだった。
 翌日のマンデーナイトゲームの結果も含めて、第3週で、全勝はドルフィンズとイーグルスの2チーム、全敗はレイダースだけとなった。他にテキサンズが2敗1分けで勝ち星がない。戦力均衡が徹底しているNFLには、真に強いチームも弱いチームも、なかなか存在できないことを示すことになった。

(写真はすべてGetty Images)

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ビルズ●19-21○ドルフィンズ
=photo by Getty Images

 トータルで、ビルズ497ヤード、ドルフィンズ212ヤード。パスはビルズ382ヤード、ドルフィンズ171ヤード、ファーストダウン更新はビルズ31回、ドルフィンズ15回。ほとんどのスタッツでビルズが2倍以上上回った。

 しかし、爆発的なビルズのオフェンスに対し、ドルフィンズディフェンスが、後半3回のレッドゾーンをフィールドゴール(FG)1本に抑えるなど、要所で「曲がっても折れず」に逃げ切った。

 ドルフィンズは、ビルズのQBジョシュ・アレンに対して、ブリッツを多用。20回のQBプレッシャー、10回のQBヒット、4回のサックを決めた。QBへのプレッシャー率は29.9%に及んだ。開幕2週までビルズオフェンスが受けたプレッシャー率は16.4%だった。

 個人では、DEエマニュエル・オグバーが7QB プレッシャー、OLBメルビン・イングラムが5QBプレッシャー、2サックだった。
 
 4点をリードした試合残り1分37秒、ドルフィンズはPトーマス・モルステッドが、エンドゾーン内でパントをしたが、下がり過ぎていた味方のブロッカーの臀部に蹴ったボールが当たって跳ね返り、セーフティー。2点差となった。しかし、セーフティーの後はフリーキックとなるために、再び登場したモルステッドが74ヤードのキックで大きく陣地を挽回。ドルフィンズディフェンスが、ビルズをフィールドゴール(FG)レンジまで進ませず逃げ切った。

 「Butt Punt」(尻パント)と現地メディアも報じる珍プレーだった。しかし、仮に普通のパントだった場合、エンドゾーン最深部から蹴っているので、自陣40~30ヤードの攻撃となる。ビルズがタッチダウン(TD)を奪って逆転していた可能性もあった。

=photo by Getty Images

 3連勝のドルフィンズだが、QBトゥア・タゴバイロアについて、NFL選手会(NFLPA=労働組合)が、ドルフィンズの「脳震盪プロトコール」が適性に行われたのか、調査を要求した。

 2Q残り2分28秒からのプレーで、タゴバイロアはパスを決めたが、ビルズLBマットミラノに突き飛ばされて(ラフィング・ザ・パサーの反則)後頭部から地面にたたきつけられた。

 タゴバイロアはいったんは立ち上がったが、数歩歩いたところで、身体から力が抜けたように崩れ落ちた。タゴバイロアはそのままサイドラインに下がり、控えのテディ・ブリッジウォーターが替わってQBとなった。

 タゴバイロアは、後半は冒頭から試合に復帰し、チームを勝利に導いたが、脳震盪プロトコールをすべてクリアしたためという。試合後、ドルフィンズのマイク・マクダニエルヘッドコーチ(HC)は、崩れ落ちたのは腰の負傷から来たものだと説明。タゴバイロアも「一時的に背中がロックして動かなくなってしまっただけだ」と答えた。

 選手の安全面に関して発言権のある選手会は、脳震盪を疑っている。一方で、タゴバイロアはアラバマ大学時代に、選手生命を危ぶまれるほどの重傷を、腰に近い股関節に負ったことがあるのも事実だ。

 ドルフィンズの次の試合は、現地29日のサーズデーナイトのベンガルズ戦で、中3日しかない。調査の結果次第では、タゴバイロアは出場できなくなる。開幕3連勝のドルフィンズにはとても気になる状況だ。

チーフス●17-20○コルツ
=photo by Getty Images

 開幕戦で快勝、第2週はチャージャースとの激戦を制し、今季も強いチーフス。他方、コルツはまだ勝ち星がなく、第2週では、2年連続NFL最下位のジャガーズに完封負けを喫した。勝ち目がないと思われたコルツが接戦を制して今季初勝利を挙げた。

コルツはルーキーのレシーバー2人がステップアップしている。WRアレック・ピアースは3回のキャッチで61ヤード。TEジェラニー・ウッズは、2回13ヤードレシーブだが、2回ともTD。ピアースは191センチ、ウッズは201センチとスケールが大きい。今後ますます期待がかかる。

 勝ったコルツだが、QBマット・ライアンのボールセキュリティーは問題だ。ライアンはQBヒット10回、サック5回を浴び、2回のファンブル(1回はロスト)。の過去最多が2015年の12回、昨シーズンも11回だったライアンは、ここまで3試合で7ファンブルだ。

 もちろんOLの責任はあるが、ライアンがボールを持ち過ぎているのは否めない。おそらくレシーバーが遅れて姿を現すことを期待しているのだろう。理由が何であれ、それは修正されなければならない。

 チーフスは、スペシャルチームにミスが続出した。試合開始直後、コルツの3&アウト後のパントをチーフスのリターナー、スカイ・ムーアがマフ。リカバーされてコルツが再びオフェンスとなり、先制TDを許した。

1Qの終盤には、QBパトリックマホームズから、TEトラビス・ケルシーにTDパスが決まったが、Kマット・アメンドーラがエクストラポイントを失敗した。アメンドーラは4Qにも、34ヤードのFGトライを失敗。その一つ前のオフェンスシリーズでは、フェイクFGでパスを投げて失敗していた。

 3点差の敗戦だけに、どれもが大きなダメージとなった。試合後チーフスはKアメンドーラを解雇した。

 QBマホームズは決して絶不調というわけではなかったが、チーフスオフェンスは決め手を欠いた。理由の一つはランの不振だ。第1戦128ヤード、第2戦98ヤードに対して、この日は58ヤード。しかもチームトップはマホームズの26ヤードだった。
 
パッカーズ○14-12●バッカニアーズ
=photo by Getty Images

パッカーズが試合開始から2回のオフェンスで取ったTDを守って逃げ切った。QBアーロン・ロジャースは最初のパス13回中12回成功。14-3のリードを奪った。

 しかし、バッカニアーズのDTヴィタ・ベアとLBラボンテ・ダヴィッドらがこの後のパッカーズのオフェンスを止めた。パッカーズは3回目のドライブで、RBアーロン・ジョーンズのゴールラインでファンブル。

この後は、8回のオフェンスは、ファーストダウン3回。37ヤードが最長で、7回が18ヤード以下という苦しい展開だった。

 ただ、バッカニアーズが、というよりはGOAT、QBトム・ブレイディが、もっと苦戦した。マイク・エヴァンス、クリス・ゴドウィン、フリオ・ジョーンズという優れたWRが全員いない状態。それでもパス31/42、271ヤード1TDはブレイディの力量だ。

 試合残り18秒で、ブレイディはWRラッセル・ゲイジにTDパスをヒットし2点差に。だが、2ポイントコンバージョンは失敗して望みを断たれた。TDと同じくゲイジを狙ったが、パッカーズに読まれていた。

 米メディアは、ブレイディについて「我々は、先週のゲーム後は、彼が叩きつけて壊したタブレット『マイクロソフト サーフェス』にばかり注目していたが、今にして思えば、(レシーバーという)ウェポンがないことや、タンパベイのオフェンスに広がっている不満についてもっと議論すべきだった」と、皮肉っぽく論評している。

イーグルス○24-8●コマンダース
=photo by Getty Images

 イーグルスが、かってチームリーダーだったコマンダーズQBカーソン・ウェンツに地獄を見せた。
 
 イーグルスのディフェンスは、1Qにウェンツを4回サックして流れを作った。
 
 イーグルスはウェンツに対し、ドロップバックの36.5%でプレッシャーをかけ、17.3%でサック。7選手が3回以上のQBプレッシャーをかけた。ベテランDEブランドン・グラハムの2.5サックを筆頭に、OLBハーソン・レディック1.5回、DEジョシュ・スウェット1.5回、DTフレッチャー・コックス1.5回と、QBサック祭り。トータルで9サックを記録した。

 イーグルスは、「アラバマ・ホットライン」が開通。QBジェイレンハーツからWRデボンタスミスへのパスは、8回169ヤード1TDを記録した。

A.J.ブラウン(5キャッチ、85ヤード、1TD)とダラス・ゴダート(3キャッチ、26ヤード、TD)も仕事をした。QBジェイレン・ハーツはパス340ヤード(22/35)、3TD、ゼロインターセプト(INT)と文句なしだった。
=photo by Getty Images
 2020年、イーグルスがハーツを2巡で指名した時、メディアや評論家は指名を疑問視した。エースQBウェンツは負傷がちだったが、素材や力量は、ハーツは比較にならないと見られていた。QBとしてのハーツの評価は低く、WRに転向すべきだと主張する評論家さえいた。

 あれから2年半。何もかもが変わった。ハーツは、かってのエースと対戦して完勝し、留飲を下げた

 3連勝スタートのイーグルスオフェンスにも課題はある。この試合の24点はすべて2Q。3試合を通じて、イーグルスの今季84得点のうち65得点が2Qで、後半は2試合続けて無得点だ。長丁場を戦っていくためにはコンスタントなオフェンスが求められる。

ジャガーズ○38-10●チャージャーズ
=photo by Getty Images

 シーズン前は、スーパーボウル出場候補の一角に上げられていたチャージャーズと、今季も負け越しと予想されていたジャガーズ。だが、思いもかけない点差でジャガーズが大勝した。

 チャージャーズの敗因の一つは、もちろんエースQBジャスティン・ハーバートの負傷だ。肋軟骨を骨折しながらプレーし、パス25/45で297ヤードを獲得したが、オフェンスは、なかなかそれをTDに結び付けられなかった。

しかし、ディフェンスの責任はもっと大きい。ジャガーズにトータル413ヤードを許し、11ドライブ中7ドライブで得点を許した。

 ジャガーズQBトレバー・ローレンスは、パス262ヤードで、昨年のプロデビュー戦以来の1試合3TDパス。しかし、前回は3INTだったのに対し、今回は0INTと、成長を見せた。

 ローレンスは、直近の50年で、デビュー以来、先発したアウェーゲームで9敗し、10回目で勝利した2人目のQBとなった。過去に同じだったQBはペイトン・マニング。彼も2シーズン目の第3週、対チャージャーズ戦でロード10戦目の先発勝利を挙げていた。

 ジャガーズはルーキーLBのデビン・ロイドが活躍した。1INTの他、タックル、3パスディフェンス。ロイドは先週のコルツ戦でも1INTを記録。ジャガーズの選手としてキャリア最初の3試合で2INTを記録した初めての選手となった。

 チャージャーズは、負傷者が続出している。ハーバートのブランドサイドを守るOLラショーン・スレイターは、上腕二頭筋の腱を断裂し、シーズンアウトに。Cコーリー・リンズリー、DEジョーイ・ボーサ、CBのJ.C.ジャクソンも欠場している。

49ers●10-11○ブロンコス
フットボールでは珍しい最終スコアは、両チームの貧しいオフェンスの結果だった。両チームともに、最もボールを動かしたのがパント。ブロンコスは10回462ヤード、49ersは7回362ヤードだった。オフェンスのトータルヤードは、ブロンコスが261、49ersが267だった。
 勝ったブロンコスは、2勝1敗だが3試合で43得点。QBラッセル・ウィルソンを、多大な交換条件で獲得した効果はまだ出ていない。

レイブンズ○37-26●ペイトリオッツ
=photo by Getty Images

開幕から大活躍のレイブンズQBラマー・ジャクソンは、この試合でもパス213ヤード4TD、ラン119ヤード1TD。チームの全TDを1人で叩きだした。パサーズレーティングとパスTDはNFL1位。ランでもNFL5位となっている。
ペイトリオッツは試合終盤で、QBマック・ジョーンズが負傷退場。痛めた個所は足首で、数週間欠場という情報もある。

レイダース●22-24○タイタンズ
=photo by Getty Images

レイダースは唯一の3連敗。タイタンズは前半に24点を取って優位に立ったが、後半はオフェンスが進まず。さらにQBライアン・タネヒルがINT。レイダースに追い上げられた。試合の最終盤、レイダースはQBデレク・カーが残り1分14秒でTDパスを決めたが、同点を賭けた2ポイントコンバージョンは失敗。その後のオンサイドキックもタイタンズに抑えられ、2点差で涙を飲んだ。

ラムズ○20-12●カーディナルス
=photo by Getty Images
 スーパーボウル王者のラムズは連勝したが、オフェンスが苦戦した。QBマシュー・スタフォードは移籍後、初めてTDパスが無かったし、WRクーパー・カップは、パスキャッチ4回44ヤードにとどまった。しかし、ディフェンスが耐えて、逃げ切った。
 ラムズDTアーロン・ドナルドが、通算100QBサックを達成したが、DTとしてはNFLでは2人目の偉業。過去に達成したのはバイキングスなどで活躍したジョン・ランドール。サックが公式記録となったのは1982年以降なので、それより前の達成者はカウントされていない。

ファルコンズ○27-23●シーホークス
ファルコンズは、3点差を追う3Qに、QBマーカス・マリオタがルーキーWRドレークロンドンにTDパスを決めて、逆転し、逃げ切った。RBコーダレル・パターソンがラン17回141ヤードと活躍した。シーホークスのQBジーノ・スミスは、パス325ヤード2TDと奮闘したが、チームを勝利に導けなかった。


セインツ●14-22○パンサーズ
パンサーズ、そして移籍のQBメイフィールドも今季初白星。RBクリスチャン・マキャフリーが先週に続いてランで100ヤード超え。これは2019年以来3年ぶりで、このシーズン、マキャフリーはキャリアハイの1387ヤードを走っている

テキサンズ●20-23○ベアーズ
ベアーズQBジャスティン・フィールズはパスで0TD2INTと絶不調。それでもチームは勝利した。フィールズは、「悪い言葉を言いたくないが、ゴミくずのようなプレーだった」 と反省した。「今夜フィルムを見直す。本当に酷いプレーをしてしまったから」と即日の原因追及を誓っていた。

ライオンズ●24-28○バイキングス。
地区内対決で、バイキングスが競り勝った。バイキングスQBカーク・カズンズは、No.1ターゲットのジャスティン・ジェファーソンにわずか14ヤードしかパスを投げられなかったが、INTも許さなかった。

ベンガルズ○27-12●ジェッツ
昨シーズンスーパーボウル出場のベンガルズが、今季初勝利。2試合で13サックされていたQBジョー・バロウはこの日は2サック。1Qで自己最高となるパス163ヤード2TDを記録して、チームのリズムを作り出した。ディフェンスでもトレイ・ヘンドリクソンは2.5サック、2ファンブルフォース、4タックル、4QBヒットと奮迅の働きを見せた。

【小座野容斉】

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