WBO世界スーパーフライ級チャンピオン井岡一翔(30歳=Reason大貴)は31日、東京・大田区総合体育館で同級1位の指名挑戦者ジェイビエール・シントロン(24歳=プエルトリコ)とタイトルマッチ12回戦を行い、3ー0の判定勝ちで初防衛に成功した。
写真上=シントロン(左)のボディに右を決める井岡

顔を腫らしながらも勝利を喜ぶ井岡
会見の場に現れた井岡は、両目の周辺を赤く腫らしながらも、表情は充実感に満たされていた。父となって初めて立ったリングは「皆さんが想像する以上のプレッシャーだった」。リング上で見せた涙の理由をそう語り、「過去の2敗の重みを感じながら戦った」と、この一戦に懸けた思いを強調した。
王者より身長で6センチ、リーチに至っては12センチのアドバンテージを有し、オリンピック2度出場を誇るサウスポーの技巧派シントロン。速い手と足を駆使してアウトボクシングに徹する挑戦者の攻略へ、井岡が実行したのは、被弾も辞さぬ「肉薄」だった。
立ち上がりはシントロンが矢継ぎ早に繰り出す右ジャブ、タイミングをずらして放つ左ストレートの長距離砲に接近を阻まれたが、「元気なのは序盤だけ」と読み切り、じっくりと追い詰めていった。次第に左のボディブローが効果を上げていくと、これを右腕でブロックするのに忙しくなったシントロンは、生命線のジャブが減り始める。
「最悪、4ラウンドまでは全部取られたとしても、残り8ラウンドを全部取るくらいの気持ちだった」。大胆ともいえる井岡の戦略は、ジャッジ一人の採点とも完全に符合した。シントロンの距離と被弾の数は想定を上回ったとしながらも、中盤以降はペースを支配。両グローブ、肩、ヒザを総動員してフェイントをかけつつ懐に飛び込み、シントロンの逃げ場を塞いでいった。
試合終了のゴングと同時にシントロンが見せた歓喜は、自分のボクシングを完遂した達成感の現れだったろう。下された判定に落胆しながらも、シントロンは「ジャッジの判定は尊重する。イオカのパンチの方が、より正確だったということだ」と語り、「イオカは経験豊富なチャンピオンだ」と敬意を表した。
若く才能に溢れる挑戦者に「チャンピオンの強さ、世界タイトルマッチの厳しさを教えたかった」という井岡の思いは伝わったはずだ。自身のボクシング人生は「終わりに近づいている」と自覚し「どの試合でも、やりきったと思える戦いをしたい」と願う井岡。2020年は統一戦など「濃いマッチメーク」の実現に向かう。
文◉藤木邦昭
写真◉菊田義久
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